この記事が含む Q&A
- 自閉症の子どもは自己肯定感が低い傾向にあるのですか?
- はい、定型発達の子どもに比べ自閉症の子どもは自己肯定感が有意に低い傾向があります。
- 自閉症特性が強いほど自己肯定感は低くなるのですか?
- はい、自閉症特性の強さと自己肯定感の低下には関連が見られ、年齢や診断の有無を調整しても残ります。
- 親の養育態度は自己肯定感にどのように影響しますか?
- 否定的な養育傾向は自己肯定感の低さと関連し、温かさや子どもの意思を尊重する態度は自己肯定感の高さと関連します。
「うちの子は、どうしてこんなに自分に自信がないのだろう」
そう感じたことのある親は、少なくないかもしれません。
学校ではがんばっている。特別に大きな問題があるわけでもない。
それでも、「どうせ自分なんて」とつぶやく姿を見ると、胸が締めつけられます。
今回の研究は、その背景にあるものを、データから丁寧に探ろうとしたものです。
対象となったのは、9歳から15歳までの子ども76人。
そのうち40人が自閉症と診断され、36人は定型発達の子どもでした。
自閉症の診断はDSM-5の基準に基づき、さらにADOS-2という観察評価で確認されています。
知的発達の大きな影響を避けるため、一定水準以上の認知能力をもつ子どもが参加しました。

まず明らかになったのは、自閉症の子どもは、定型発達の子どもに比べて自己肯定感が有意に低いということです。
自己肯定感は、「自分には価値がある」「自分を前向きにとらえられている」といった全体的な自己評価を示すものです。
ここまでは、これまでの研究でも指摘されてきた内容と一致しています。
しかし、この研究が一歩踏み込んだのは、「なぜ低くなるのか」という点でした。
研究では、自閉症特性の強さも測定しました。診断の有無とは別に、「友達づきあいが難しい」「会話の意図を読み取るのが苦手」「一つのことに強く集中する」といった特性の強さを数値化しています。
その結果、自閉症特性が強いほど、自己肯定感が低いという関連がはっきりと示されました。
しかもこの関連は、年齢や診断の有無を調整したあとでも残っていました。
ここで重要なのは、臨床家が観察によって評価した「症状の重さ」は、自己肯定感と有意な関連を示さなかったという点です。
外から見た症状の程度よりも、日常の中で表れる特性のあり方のほうが、自己評価とより強く結びついていたのです。

では、親のかかわりはどうでしょうか。
親の養育態度も詳しく調べられました。「温かさ」「関与」「子どもの意思を尊重する姿勢」といった肯定的な側面と、「厳しさ」「一貫性のなさ」「過保護」といった否定的な側面が測定されています。
全体として、自閉症の子どもを育てている家庭と定型発達の家庭のあいだで、養育態度に大きな違いは見られませんでした。
これは、多くの親にとって少し安心できる結果かもしれません。
しかし、関連を見ると違った景色が見えてきます。
自閉症特性が強い子どもほど、否定的な養育傾向と関連する傾向がみられました。
そして、否定的な養育傾向は、自己肯定感の低さと結びついていました。
一方で、温かさや尊重といった肯定的な養育態度は、自己肯定感の高さと関連していました。
とくに自閉症の子どもたちの中では、こうした関連がよりはっきりと現れていました。
この研究は、奈良県立医科大学精神医学講座を中心とする研究グループによって行われました。
研究者たちは、自己肯定感の問題は、単に「症状が重いから」生じるものではない可能性を示しています。
もちろん、この研究は一時点での調査であり、因果関係を断定することはできません。
特性が強いことで親の対応が難しくなるのか、親の対応が子どもの自己評価に影響するのか、その関係は双方向である可能性があります。

それでも、この結果は大切なメッセージを含んでいます。
子どもの自己肯定感は、診断名や症状のスコアだけで決まるものではありません。
日々のやりとり、声のかけ方、子どもの意思をどれだけ尊重できているかといった、関係の中で揺れ動くものです。
もし「うちの子は自信がない」と感じているなら、それは能力が足りないからでも、親の努力が足りないからでもないかもしれません。
特性の強さと環境との相互作用の中で、自己評価は形づくられていきます。
症状の重さだけを見るのではなく、関係性という文脈を見ること。
それが、自閉症の子どもの心の健康を考えるうえで、ひとつの手がかりになることを、この研究は示しています。
(出典:Frontiers in Psychiatry DOI: 10.3389/fpsyt.2026.1747061)(画像:たーとるうぃず)
自閉症特性が強い子どもほど、否定的な養育傾向と関連する傾向がみられました。
そして、否定的な養育傾向は、自己肯定感の低さと結びついていました。
一方で、温かさや尊重といった肯定的な養育態度は、自己肯定感の高さと関連していました。
知っておいてください。
(チャーリー)




























