この記事が含む Q&A
- 自閉症やADHDの男性が孤独を感じる理由は何ですか?
- 孤独は実際の関係と望む関係のズレや、社会的つながりの質・支援・所属感など複数の要素の組み合わせで決まると説明されています。
- 孤独と社会的つながりの違いはどのような点ですか?
- 孤独は人と多く会っているかどうかより、関係の質や意味のあるつながり、所属感など社会的つながりの質的要素が重要とされます。
- 今回の研究の課題は何ですか?
- 時点データが多く長期追跡や併存する神経発達特性・文化差・ジェンダーの違いを考慮した研究が不足しており、今後の課題とされています。
自閉症やADHDの人たちは、しばしば「孤独を感じやすい」と言われます。
しかし、実際にはどのような孤独なのでしょうか。
単に「友達が少ない」という話なのか。
それとも、もっと複雑な社会的経験が関係しているのでしょうか。
今回、自閉症やADHDの男性における孤独と社会的つながりについて、これまでの研究を広く整理したレビュー研究が発表されました。
この研究では、過去の研究82本を集めて分析し、孤独と社会的関係の特徴を体系的にまとめています。
研究を行ったのは、オーストラリアのアデレード大学心理学部やフリンダース大学などの研究チームです。
この研究が示したのは、「孤独」という言葉だけでは説明できない、神経発達特性をもつ人たちの社会経験の複雑さでした。
孤独は単なる「一人ぼっち」ではない
孤独という言葉は、とても単純なものに聞こえるかもしれません。
しかし心理学では、孤独は
「実際の人間関係と、本人が望んでいる人間関係の間のズレ」
として定義されます。

つまり、
・人と多く会っていても孤独を感じることがある
・逆に、一人でいることが好きでも孤独ではないことがある
ということです。
さらに研究者たちは、孤独は「社会的つながり」の一部分にすぎないと説明しています。
社会的つながりには、少なくとも次のような複数の要素があります。
・社会的ネットワーク(どれくらい人と関係があるか)
・社会的支援(助けてくれる人がいるか)
・関係の質(関係がどれだけ良いか)
・社会への参加や受け入れ
つまり、人の社会経験は
「人数」
「支援」
「関係の質」
「所属感」
などが組み合わさってできているのです。
このため、「孤独」という一つの言葉だけでは、神経発達特性のある人たちの社会経験を十分に説明できない可能性があります。
今回の研究では、6つの学術データベースを使って関連研究を探し、最終的に82の研究を対象にしました。
研究の対象となったのは、自閉症またはADHDの男性です。
対象となった参加者は合計4599人でした。
そのうち約57%は子どもや思春期の若者でした。
残りは成人でした。
研究の多くはアメリカ、イギリス、オーストラリア、オランダなどで行われていました。

分析の結果、自閉症やADHDの男性は、一般の男性と比べて社会的つながりが低い、または同程度であることが多く、一般の男性より高いという結果はほとんど見られませんでした。
具体的には、
・孤独感が高い
・社会的支援が少ない
・人間関係の質が低い
といった傾向が報告されることが多くありました。
また社会的つながりが弱い場合には、
・メンタルヘルスの問題
・行動上の困難
・学業上の困難
などとも関連していました。
これは一般の人の研究でも見られる傾向ですが、自閉症やADHDの男性ではその影響がより強く出る可能性があります。
興味深い点として、この研究では「人間関係の数よりも質が重要かもしれない」という示唆がありました。
自閉症やADHDの男性では
・友達の数
・知り合いの数
といった社会ネットワークの構造を調べた研究は意外に少なく、
むしろ多くの研究が
・友情の質
・家族関係
・恋人関係
などを重視していました。
つまり研究者たちは、
「人とたくさん関係を持つこと」より「意味のある関係を持つこと」
が重要なのではないかと考えています。
これは、一般社会でよく言われる
「友達を増やそう」
という考え方とは少し違います。

質的研究では、自閉症やADHDの男性の体験も詳しく報告されています。
多くの参加者は
・孤独
・社会的排除
・仲間に入れない感覚
を経験していました。
しかし同時に、もう一つの特徴がありました。
それは「一人の時間も必要としている」ということです。
つまり
・人とつながりたい
・でも一人でいる時間も必要
という、少し複雑な状態です。
このため、外から見ると「人付き合いを避けている」ように見えることもありますが、実際には
・社会的疲労
・刺激の多さ
・コミュニケーションの負担
などが影響している可能性があります。
研究では、孤独の原因が個人だけにあるわけではないことも強調されています。
多くの研究で、自閉症やADHDの男性が社会的関係を作りにくい理由として、
・コミュニケーションの違い
・人間関係のルールの理解の難しさ
・社会的スティグマ(偏見)
・受け入れの不足
などが指摘されています。
つまり、社会の側が神経発達特性のある人たちの社会的スタイルを理解していないことが、孤独を強めている可能性があります。
もし社会が
・違いを理解する
・交流の形を広げる
・環境を調整する
ようになれば、孤独の経験も変わるかもしれません。
今回のレビュー研究では、研究方法にもいくつかの問題があることが指摘されています。
たとえば、多くの研究では「孤独」を測る質問票が使われています。
しかしその多くは、もともと一般人向けに作られたものです。
そのため、
・自閉症の人の孤独の感じ方
・社会的つながりの意味
を正確に測れていない可能性があります。
研究者たちは、今後は神経発達特性のある人たち自身と協力して、より適切な測定方法を作る必要があると述べています。
今回のレビューから、いくつかの重要な課題も見えてきました。まず、多くの研究は一時点のデータでした。
つまり「時間の中で孤独がどう変わるのか」はまだ十分にわかっていません。
また、
・自閉症とADHDの併存
・支援ニーズの高い人
・文化の違い
なども十分には研究されていません。
研究者たちは、今後は
・人生の長い期間を追う研究
・男女やジェンダーの違い
・複数の神経発達特性の組み合わせ
などを考慮した研究が必要だと述べています。

今回の研究が示しているのは、孤独は単純な問題ではないということです。
自閉症やADHDの男性にとって、社会的経験は
・孤独
・所属感
・社会的支援
・関係の質
といった多くの要素が重なって作られています。
そしてその経験は、個人の特性だけでなく、
・社会の理解
・環境の受け入れ
・関係の形
によって大きく変わる可能性があります。
孤独を単に「友達が少ないから」と考えるのではなく、「どのような関係がその人にとって意味があるのか」という視点で考えることが重要なのかもしれません。
そして、その視点こそが、これからの研究と社会の両方に求められているのです。
(出典:Review Journal of Autism and Developmental Disorders DOI: 10.1007/s40489-026-00542-4)(画像:たーとるうぃず)
つまり研究者たちは、
「人とたくさん関係を持つこと」より「意味のある関係を持つこと」
が重要なのではないかと考えています。
その通りです。
(チャーリー)




























