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発達障害の子の感情をテンポやメロディに変化し音楽で伝える技術

time 2018/04/04

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発達障害の子の感情をテンポやメロディに変化し音楽で伝える技術

カナダのトロントにあるホーランド・ブルアビュー・キッズ・リハビリテーション病院の研究室には、やさしい音楽が流れています。
これは、子どもの指や胸からの脈拍、呼吸、体温、汗をウェアラブルセンサから取得して、音楽にしたものです。
音楽のテンポやメロディの変化で、子どもの感情をわかろうとするものです。
感情に関わる生理学的な信号を捉えて音楽にするため感情を伝えるインタフェースになります。
バイオミュージックとこれを呼んでいます。
これはホーランド・ブルアビューのバイオメディカルエンジニアのステファニー・モレスとエリーヌ・ビッディスたちによって考案されたものです。
自閉症スペクトラム障害の子どもたちや重度の知的障害などがある人は、自分の感情をうまく伝えることが出来ないことがあります。
2016年に”Frontiers in Neuroscience”に掲載された研究では、ビッディスたちは自閉症スペクトラム障害の子ども、そうでない子ども、どちらも10歳くらいの子ども15人にバイオミュージックを利用して、不安状態にあるのかそうでないのか、確認できることを示しました。
ビッディスの研究室に所属している、この筆頭研究者であるステファニー・チュンはこう言います。
「これまでの通常の方法では、感情を伝えることが難しい子どもたちがいます。
介護する人にとっても、難しい問題となります。
バイオミュージックは、介護する人が相手の感情がどのように変化しているのか知る方法となります。」
この研究では、ムード・ミュージックを利用していましたが、特定のジャンルにしぼる必要はありません。
「私たちは、共鳴デザインと呼ぶ哲学で取り組んでいます。
特定の状態の人に対応したもの作るのではありません。
どんな人かに関係なく、その求めに対応できるものを作ろうと考えています。
例えば、患者さんの求めを介護する人に伝える、他の部屋で寝ている赤ちゃんをお母さんに伝える、自分の感情を伝えられない人が人に伝える、高齢のために自分をつたえられなくなった人がまわりに伝える。そういうものです。」

心配しているときのバイオミュージック

リラックスしているときのバイオミュージック

該当研究論文から)

 
当初の技術では、心拍数、皮膚表面の体温、汗について測る指先につけるセンサを用いて、それぞれに対応するリズム、キー、メロディーで音楽を作りました。
その後、胸につけたセンサで呼吸の変化を測定し、音楽に一種のノイズをつけるようにしました。
これらの生理学的な信号は、人が心配をすると変化をします。
人は心配をすると心拍数、呼吸、汗が増加し、血管が収縮し皮膚の温度が下がります。
今後克服するべき技術的な課題があります。
もっと目立たなくすることです。
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指の血液量から呼吸の推定をできるようにし、胸につけるセンサをなくします。
他のセンサは、Appleウォッチのようなものにしたいと考えています。
そのためには、現在のものよりも小型で高性能のセンサが必要です。
「ふだんの活動において起こる体の変化と、感情や精神によって引き起こされる体の変化には、大きな違いがあります。」
そうモレスは言います。
「目立たなくするためには、それらの変化をキャッチできる、敏感でより小型、高速に計測ができるセンサが必要です。」
より研究するべき課題も残っています。
リラックスした状態から、不安になったことを検出することはできます。
しかし、興奮している状態から、不安になったことを検出するのは簡単ではありません。
例えば、自閉症スペクトラム障害の子どもの場合には、ふだんの状態の生理学的信号も一定ではなく、不安状態でなくても、心拍数が高く、皮膚の温度も異なることがあるのです。
倫理的な問題もあります。
バイオミュージックでは、自分の感情的な状態、それはとても深いところの個人情報であるといえるものを、誰にでもわかるようにしてしまいます。
バイオミュージックを利用しようとする人たちは、それを利用することへの同意を示す能力をもっていません。
また、バイオミュージックから判断した感情の正確性が検証できなければ、間違って感情を捉えてしまうことになります。
ビディスはこう言います。
「多くの倫理に関わるような問題もありますが、愛する人たちとのコミュニケーション方法をそれで否定してしまうことも、また間違っていると考えます。」
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バイオミュージックの開発は今も進んでいます。
現在、研究開発段階にあるものは、感情をよりわかりやすく伝え、話すことができない人を注意深く見る必要もなくそうとするものです。
認知症や発達障害の人と、介護をする人たちが協力参加しています。
そして、参加している親や介護者も、バイオミュージックは人間性のある強力なコミュニケーションツールだと支持しています。
(出典:米Smithonian.com)(画像:Pixabay
うちの子は話すことができないので、どんなふうに思っているのか、何を考えているのか、わからないことばかりです。
こうした音楽で気分などわかったら、ふだんの生活でも穏やかにわかることができて便利そうです。
きっと本人もこんな音楽だったら聞いていて楽しいと思います。
親が療育を学び発達障害の子の言葉が増えた

(チャーリー)


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