私たちは共感を使って他の人々の感情を理解します。
相手の行動を予測して、相手に影響を与えることができるようにするためです。
しかし、共感する能力は人によって異なるものです。
多くの人は相手を容易に理解することができますが、発達障害の自閉症の人の多くは困難を経験しています。
そのため、特に自閉症の人の共感について、多くの心理学的研究がなされています。
しかしそれでも自閉症スペクトラムの人々が共感的な困難を経験しているかどうかについて、まだ議論があります。
そうなっているのは、今までのところ、主に共感性を測定するために使用されるテストや研究への参加者数が十分でないからです。
自閉症における共感を研究することは、多くの自閉症の人々が失感情症（「感情的失明」として知られる状態）も持っているという事実によってさらに複雑になります。
失感情症の人は自分の感情を理解するのが困難なので、他の人がどのように感じているのか理解するのに苦労します。
自閉症の人の共感について研究を行う場合には、失感情症を考慮することが重要となります。
今までの研究では、これが考慮されていたとはいえません。
今回の英バース大学のピュニット・シャーらによる新しい研究では、６００人以上の成人が参加したものとなっています。
自閉症、失感情症、それらと共感のテストのスコアとの関連を調べました。
その結果、自閉症の特徴を多く持っていることは失感情症があることを考慮しても、共感が低いことと関連していることがわかりました。
これまでの研究でも、自閉症であることが共感性の低さに確実に関連しているということの証拠が見つかっています。
今回の研究結果が、失感情症の影響についての議論を終わらせ、自閉症の人たちのさらなる理解に役立つことが期待されます。
そして、自閉症の人の共感性の低さが必ずしも悪いこととは限らないことも考える必要があります。
共感は社会的な状況においてはメリットがあるものですが、それは精神的にとても疲れさせるものです。
ある人の感情は無視して、他の人の感情は理解する。
こうした「選択的な」共感は、一部の人たちを社会から排除することにつながるような不道徳な行動と考えられています。
しかし、例えば人は家族や友だちの気持ちを優先し、見知らぬ人について無視することは当たり前にあることです。
共感できることは、良いことと考えられていますが、まだ理解されていない良くない側面もあるのです。
そのため、自閉症の人たちの低い共感性にもメリットがあるものの、それが理解できていなだけなのかもしれません。
また自閉症の人たちは、社会に役立つ心理的な特徴も持っています。
例えば、自閉症の人たちは高いレベルの論理的思考や合理的な意思決定が得意です。
それは、自閉症ではない人が感情的に判断してしまうようなことも、自閉症の人たちはより公正に判断ができるということです。
そしてこれは、共感性が低いためにできるのかもしれません。
また、人との関係性に関わらないところで、自閉症の人たちがもっている能力があります。
例えば、優れた視覚的な検索能力です。
つまり、自閉症の人は雑多な中から特定の物や特徴を発見することが得意です。
自閉症の人たちの能力の多くがまだ十分に評価されているとはいえません。
自閉症の人たちの考え方や見方はとても価値があるものです。
新しい視点から問題を捉えることを可能にし、社会の進歩を促進させます。
自閉症の人たちの低い共感性やその他の心理的な特徴は、人間全体の生活を向上させる可能性を秘めているのかもしれません。
（出典：英THE CONVERSATION）（画像：Pixabay）
何でも、見方や捉え方で良くも悪くもなります。
であれば、良いように捉えたほうが、そう思った方も思われた方も、幸せになると思います。
みんなが冷たくなっているときには、熱い人が必要です。
みんなが熱くなっているときには、冷たい人が必要です。
発達障害の人は人を助けない。そんなことはない。
（チャーリー）
