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自閉症の人向けの新薬開発で起きた自閉症の人たちの意見対立

time 2020/01/19

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自閉症の人向けの新薬開発で起きた自閉症の人たちの意見対立

カナダのトロントで発達障害の自閉症スペクトラム障害(ASD)の人向けの新しい薬の開発に向けて画期的な研究が現在進行中です。
ですが、それに対し自閉症スペクトラム障害に関わる人たちの中で意見が割れています。
日常生活においての社会的、コミュニケーションに関わる課題に対して助けとなる可能性のある薬、バロバプタンの国際研究が行われています。
「社会的な世界を認識する、社会的手がかりを理解する、他の人との関係を築く、それらに関わる脳のホルモンを調節する薬です。
日常生活において、社会的な面で苦労している人がそれを改善したいと考えた場合の選択肢になれるものかもしれません」
カナダのオランダ・ブルーム・子どもリハリビリテーション病院の主任研究員、エブドギア・アナグノスト博士はそう言います。
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オランダ・ブルームの自閉症研究センターで40週間にわたり、この薬の有効性を確かめるための臨床試験が行われることになっており、18歳以上の参加者の登録が始まりました。
半数にはその薬が投与され、比較対象としてもう半数には薬効のない偽薬が投与されます。
臨床医でもあるアナグノスト博士は、この臨床試験に参加を申し込む場合には自分がその薬を飲むべきかをよく検討してもらう必要があるといいます。
医師に、自分のこれまでの経験を話し、変えたいことの優先順位をつけ、変えることでもたらせられるメリットを理解できた上で、この臨床試験に参加することを決めなければなりません。
臨床試験に参加すると毎日、薬を飲んで定期的にスタッフによりチェックが行われます。
「安全性についてはこれまでの研究でよくわかっていますが、この臨床試験を経て決定できることです。
そのため、十分なチェックを行います。
参加者は数週間おきに、私たちのところに来て血液検査を行い、医師や心理学者と話をします」
この薬に対して、障害者の権利を主張するあるグループが、倫理的に懸念があると表明しました。
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それによって、この薬に対して自閉症にかかわる人たちの意見が割れています。
自閉症の成人による当事者団体のA4Aの理事会メンバーであるアン・ボーデンはこう言います。
「この薬は誰の利益になるものですか?
この類の研究は、自閉症に対する古い考え方によるものです。
自閉症の人たちを受け入れようとするのではなく、解決すべき問題をかかえた、正常でない人たちとみなしているのです。」
ボーデンは、こうした薬を作ろうとすることは、自閉症の人たちの尊厳や他の人たちにどう扱われるのか、認識されるのか、そうしたことに悪影響を与える可能性があること、
また薬が生み出す「利益」から自閉症の人たちが危険にさらされる可能性から、倫理的に問題があると言います。
「あなたの人生やあなたが誰であるのかを、人々が『直そう』とすれば、深い心理的な悪影響を与えます。
この薬は、あなたにあなたの行動をさせないようにする薬です。
人間のコミュニケーションは、双方向であることを無視しています。
インクルーシブ、アクセシビリティ、コミュニケーション、対話、そうした研究こそが求められます」
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この薬の研究を行っているアナグノスト博士はこうした批判を認識しています。
しかし、自閉症の人たちのニーズを理解し、公平に過ごせる環境を作り出すために、さまざまな研究が行われていて、自閉症の人たちに自閉症のために起きている症状を、そうでない人と同じようになくせる選択肢を提供することも重要であるといいます。
こうした薬の開発を認めないことこそ、倫理的に問題があると主張します。
「私が行うべき倫理的なことは、人々の健康と機能を改善する方法についての選択肢を人々に提供することです。
また、自閉症の人たちみんなが、自閉症について同じ意見をもっているわけでもありません。
実際にこうした薬を求めている自閉症の人たちはたくさんいます。
私たちの立場は選択肢を開発することです。
そして自閉症の人が自分自身の考え、家族などの考えなどを参考に自分で適切な判断もできるようにするまでが私たちの責任だと考えています」
アナグノスト博士は、この研究は家族やその他の擁護団体から大きく支持されているといいます。
「自閉症スペクトラム障害は、社会的な機能と社会的な世界の理解におけるいくつかの困難から定義されます。
自閉症スペクトラム障害の全員が苦痛を経験しているわけではありませんが、多くが苦痛を経験しています。
私は、社会的な世界をナビゲートしてくれるツールセットを持っていないがために、苦痛を経験している人たちを助けたい、もっと簡単に過ごせるようにしたいのです」
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この研究に賛同している支援団体の一つ、親たちが中心となっているオーティズム・オンタリオは、この臨床試験はこの分野の研究を前進させるのに有益であり、さまざまな神経発達状態の影響を受けている人にとってこうした薬は明らかに役に立つことを理解するべきだといいます。
一方で、この臨床試験を批判するボーデンは、自閉症の人の主な保護者となる親たちの判断でこの薬が使われてしまう可能性に懸念を表明しています。
「あなたが今まで本当に願ってきたように、子どもとつながれたように思うことを助けてくれるかもしれません。
しかし、それは本当につなげてくれる、子どもを変えてくれる魔法の薬ではありません。
親たちはそれについて考えなければなりません」
長年にわたって、自閉症の成人への支援、環境の不足について懸念が提起されてきました。
アナグノストウ博士は、この研究は成人への支援を検討する機会になるもので、成人にとって利用しやすい支援方法を開発する機会にもなるといいます。
「大人は大きな子どもなのではありません。
体と脳は時間とともに変化し、優先順位と希望も時間とともに変化します。
自閉症の大人が何を望み、人生をどのように見ているのかをかを考え、大人への支援につなげることが重要です。
自閉症の大人たちが、自ら選択した支援方法で、より有意義な生活を送れる。
自閉症スペクトラム障害、または社会的な困難に対しての助けとなる薬はこれまでにありませんでした。
そして、まだ成功していません。
この薬の臨床試験、研究は、社会的なスキルの困難に支援を必要とする成人たちに、助けとなる選択肢を提供する、もっと大きな研究の一部です」
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今回の臨床試験を経て、薬が市場に出るようになるまでにはまだ何年もかかることを認識しなければなりません。
また、そもそも今回の臨床試験の結果などによって、薬として認められない可能性もあります。
アナグノストウ博士はこう言います。
「私の願いは自閉症スペクトラム障害の人たちの生活を改善する、薬による方法を作ることです。
薬であれば誰にでも使いやすく、必要なときにいつでも利用できるからです」
(出典・画像:カナダCity News
人それぞれ違います。それは自閉症、発達障害の人の間でももちろんそうです。
選択肢が増えることで悩むことが多くはなりますが、人それぞれが選べる選択肢が増えることは悪いことだとは思いません。
発達障害当事者の私が思う「ニューロダイバーシティ」の問題点

(チャーリー)

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