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自閉症の子が幼児期に言葉を失っても、話せなくなるとは限らない

time 2022/03/02

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自閉症の子が幼児期に言葉を失っても、話せなくなるとは限らない

幼児期に言語能力が低下する「言語退行」を示す自閉症の子どもは、その後必ずしもコミュニケーションに問題をかかえるとは限らないことが、新しい研究で明らかになりました。

実際、言葉を話すことと理解することの両方において、これらの子どもたちは、言語退行がなかった自閉症の子どもと全体的には同じような発達の軌跡をたどり、どちらも10歳頃までに同様のコミュニケーション能力を示すことがわかりました。

この研究の研究者である英国キングス・カレッジ・ロンドンの生物統計学および心理学のアンドリュー・ピクルズ教授はこう言います。

「言語退行は、その時点では顕著な懸念材料となり、自閉症スペクトラム障害の指標となりますが、長期の言語成果にはほとんど直接影響を及ぼさないようです」

自閉症にともなう技能の後退については、その原因や関連する結果など、まだ不明な点が多くあります。
退行がどの程度一般的なのか、それをどのように定義するのかさえ、次第に疑問視されるようになってきました。

技能低下のある自閉症の子どもとない自閉症の子どもを調べた2014年の研究では、9歳ごろの自閉症特性、認知機能、日常生活技能では、有意に差があることがわかりました。
しかし、子どもたちをより高年齢まで追跡調査した今回の研究では

「少なくとも言語能力については、言語退行が時間とともに影響を減らしている可能性がある」

そう、今回の研究には関わっていない、2014年の研究を行った2014年の研究を主導した米ベイラー医科大学小児科ロビン・コッヘル准教授は言います。

「今回の研究結果は、過去10年間に行われた少なくとも6件の研究の結果を反映したものであり、退行パターンがより悪い結果と関連するという、今までの考えにとどめをさすものです。
自分の子どもの発達に退行期があったとしても、それが予後不良と関連するわけではないことを聞けば、親は安心するはずです」

そう、今回の研究に関与していない、米カリフォルニア大学デービス校の精神医学・行動科学のサリー・オゾノフ教授も言います。

言語退行後に何が起こるのかを明らかにするために、ピクルズ教授らの研究チームは、カナダで行われた長期研究、Pathways in ASDに登録された408人の自閉症の子どものデータを調査しました。

子どもたちの親は、子どもが自閉症と診断された2歳から5歳の頃と、子どもが平均して6.6歳と10.7歳になった頃に、ADI-Rという標準的な質問票に記入しました。
また、子どもの心身の能力に関する他の側面についても保護者に聞き取り調査も行いました。

ADI-Rの回答では、22パーセントにあたる90人の子どもたちが、研究チームが「以前に習得した単語が少なくとも5つ失われること」と定義した、言語退行を経験したことが示されました。
この結果は、自閉症の子どもの22〜41パーセントに言語退行が見られるとする他の報告とも一致します。

そして、言語退行のある子どもたちは、健康状態や性別、発作の報告、入園年齢、養育者の学歴、家庭の収入などの人口統計学的要因において、言語退行のない子どもたちと差がないことが明らかになりました。
また、言語発達のしかたは言語退行のある子ども、ない子どもとの間で大きな差がありました。

言語退行のある子どもたちは、ない子どもたちに比べて、約1カ月早く歩き始め、約1年早く最初の言葉を発しました。
また、言語退行のある子どもは、早い時期から認知能力や手先の運動能力も優れていました。

そして、言語退行のある子どもも、ない子どもも、フレーズで話し始めた年齢は同等でした。

言語退行のある子どもたちは、話すなどの表現的コミュニケーションと、理解し反応できる言葉である受容的コミュニケーションの両方で、平均して3ヶ月の遅れを示しました。
これらの遅れは、11歳になるまでのコミュニケーションの問題と関連していましたが、子どもたちのコミュニケーション能力は平均して向上しているため、実用的な意味はほとんどないだろうといいます。


しかしそれでも、言語の後退は無視できないとピクルズ教授は言います。

「言葉の後退は自閉症スペクトラムと強く関連しており、定型発達の子どもたちにはほとんど見られません」

この研究結果は”Journal of Child Psychology and Psychiatry”に掲載されています。

この研究に関わっていない米ラトガース大学のバネッサ・バルは、今回の研究チームが言語退行の評価に用いたADI-Rの質問は、喃語の喪失など言語の微妙な喪失に対する感度が高くないことに注意するよう指摘しています。

ADI-Rを開発した米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の精神医学・教育学のキャサリン・ロード教授も、ADI-Rの設問は言語退行の評価には有効でないというバルの意見に同意しています。

オゾノフ教授は、自らが開発した早期発達質問票は、時間の経過とともに発達を追跡するために用いることができるもので、退行はそれが起これば子どもが示す社会性やコミュニケーションスキルの数が時間とともに低下すると言います。

「しかし、この質問票も、子どもを乳児期から3歳まで追跡調査し、自閉症スペクトラム障害が発症して退行が起こる期間中に、親が参加する研究でのみ役に立つものです」

さらにオゾノフ教授はこう言います。

「社会的関係への興味の喪失、模倣や社会的遊びの喪失、アイコンタクトや身振りの喪失など、他の種類の退行が、言語の喪失よりもさらに一般的であることが研究で示唆されています。
ですから、この研究は、退行の氷山の一角を記述しているに過ぎないと思われます。

より広い範囲の退行経験を研究することは重要です。
そのため、今後の研究では、言語喪失よりも親が正確に記憶することが難しいアイコンタクトや社会的関心の喪失を有効に定量化する方法を見つけて欲しい」

近年、退行に焦点を当てた報告が少ないのは、退行の定義や測定が難しいことが主な原因であるとコッヘル教授は指摘します。

「退行は理解すべき重要な現象であることは間違いないと思います。
しかし、科学者が何をもって技能の喪失とし、それをどのように正確に測定するかについて合意できなければ、研究は困難です」

(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay

うちの子は2歳の頃に言葉がなくなって、それっきりです。残念ながら。

最初で最後となった、一度だけ言ってくれた「おかえり」は忘れられません。

言葉をなくした自閉症の子どもは成長に遅れはなかった。研究

(チャーリー)


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