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脳を模倣した人工知能でわかった自閉症の人の違い。米MIT

time 2022/06/19

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脳を模倣した人工知能でわかった自閉症の人の違い。米MIT

私たちは、他人の表情に表れる感情を簡単に見分けることができます。
笑顔は幸福を意味し、しかめっ面は怒りを示しているかもしれません。

しかし理由は不明ですが、多くの自閉症の人はこれが苦手です。

脳の内部構造に光を当てた『The Journal of Neuroscience』誌に掲載された新しい研究は、その答えを示唆するものです。
この研究は、私たちの頭の中で行われている計算をモデル化するために、人工知能を使って行われました。

研究チームは、自閉症の人とそうでない人で、おもに2つの脳領域で違いがある可能性を示唆しています。

顔の認識に寄与している、霊長類(人間を含む)の脳の側面にある下側頭葉(IT)皮質と呼ばれる領域。
そして、IT皮質などからの入力を受け、感情の処理に寄与する扁桃体です。

米MITのジェームズ・ディカルロ教授の研究室に所属するコヒティ・カールはまず、米ワシントン大学セントルイス校のシュオ・ワンと米カリフォルニア工科大学のラルフ・アドルフスから提供されたデータに注目しました。

そのデータの実験では、自閉症の人とそうでない人に、恐怖から幸福までさまざまな感情を持つようにコンピュータが作成した人の顔の画像を見せました。
参加者はその顔が幸福を表しているかどうかを素早く答えました。

自閉症でない人に比べ、自閉症の人は、幸せだと報告するのに、より高いレベルの幸せが顔に含まれている必要がありました。

脳・心・機械研究センターのメンバーでもあるカールは、脳の構造にヒントを得た複雑な数学機能をもつ人工知能の人工ニューラルネットワークを作り、同じことを行いました。

この人工ニューラルネットワークには、視覚情報を処理する生体ニューロンにほぼ類似したユニットの層が含まれています。
これらの層が、入力画像から、その顔が幸せである確率を示す最終判断に至るまで、情報を処理します。

作った結果、この人工ニューラルネットワークの動作は、自閉症の成人よりも自閉症でない成人により近いことがわかりました。

さらに、この人工ニューラルネットワークは2つの興味深い機能があります。
まず第一の機能として、この人工ニューラルネットワークは分解することができます。

そのため、カールは人工ニューラルネットワークの一部の層を取り除き、その性能を再テストし、自閉症でない人と一致した場合と自閉症の人と一致した場合の差を測定しました。

この差は、出力が人工ニューラルネットワークの最後の層に基づいているときに最も大きくなりました。
これまでの研究で、このネットワーク層は、霊長類の脳の腹側視覚処理パイプラインの末端付近に位置するIT皮質をある意味で模倣していることが明らかになっています。

つまり、この結果は、IT皮質が自閉症でない人と自閉症の人との違いに関与していることを示唆しました。

第二の機能は、この人工ニューラルネットワークを使えば、自閉症の診断に効率的と思われる画像を見つけることができます。

もし、ある画像セットと別の画像セットとを比較したときに、人工ニューラルネットワークが自閉症でない人と自閉症の人との差を大きくしめせば、その画像セットを人に見せることで、自閉症の行動特性を検出できる可能性があります。

この人工ニューラルネットワークを使って、カールはIT皮質に続いて、自閉症の人とそうでない人とで異なると考えられる、扁桃体の役割を評価しました。

てんかんの手術を受けている人の扁桃体のニューロンの活動を、電極を使って記録し、顔課題を実行させた、ワン博士らのデータを使いました。

IT皮質様ネットワーク層が本当に幸せな顔かどうかを予測する能力を制御した上で、このデータを人工ニューラル人工ネットワークに与えました。
すると、扁桃体はほとんど情報を提供しませんでした。

つまり、顔の感情を判断する扁桃体の原動力も、IT皮質であると結論づけることができました。

最後に、カール教授はこの人工ニューラルネットワークを訓練し、自閉症でない人と自閉症の人の判断に一致するようにしました。
そして、最終ネットワーク層と判断ノードの間の接続の強さ、つまり「重み」を調べました。

その結果、自閉症の人の神経回路網の重みは、正の「興奮性」の重みも負の「抑制性」の重みも、自閉症でない人よりも弱いことがわかりました。

これは、自閉症の人の感覚神経結合はノイズが多いか、非効率的である可能性を示唆しています。

さらに、この分野でよく知られているノイズ仮説を検証するため、カールは自閉症の人をモデル化した人工ニューラルネットワークの最終層の活動にさまざまなレベルの揺らぎを加えました。

ある範囲内でノイズを加えると、その自閉症の人をモデル化した人工ニューラルネットワークと自閉症の人との類似性が大きく高まりました。

自閉症でない人をモデルにしたネットワークにノイズを加えても、自閉症でない人との類似性の向上はあまり見られませんでした。
このことから、自閉症の人たちの感覚知覚は、いわゆる「ノイズの多い」脳の結果である可能性が示唆されました。

今後、人工知能による今回のような視覚処理の計算モデルには、他にもいくつかの用途があるとカールは考えています。
視覚処理計算モデルは、研究者が動物モデルで検証できるような仮説を提供し、さらに追究することができます。

「顔からの感情認識は、氷山の一角に過ぎないと思います」

また、診断用コンテンツの選定や生成にも利用できます。

人工知能を使えば、自閉症の子どもや大人に最適な映画や教材などのコンテンツを作成することができるのです。
さらに、拡張現実ゴーグルに映し出される自閉症の人たちが見る人の顔やその他の関連する画像に手を加えて、サポートすることもできるかもしれません。

最終的には、この研究は計算モデル、特に画像処理ニューラルネットワークの有用性を検証するのに役立つとカールは言います。

「たとえ、これらのモデルが実際の人間の脳から大きく外れていたとしても、作り話ではないので、反証し正すことができるのです。
それは、科学をより確かなものにします」

(出典・画像:米MIT)(画像:Pixabay

脳の処理ネットワークに似せた、人工知能を作り、それを使うことによって自閉症の人とそうでない人との脳の処理の違いを見ることができた。

下側頭葉(IT)皮質が大きく影響、感覚知覚においてノイズが多い。

自閉症の人を模倣できる人工知能を使うことで、自閉症の人の支援をより良いものにできる。

そんな、MITの研究です。

保険適用に向け進められている米スタンフォード大の自閉症グラス

(チャーリー)

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