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自閉症の人にあった、脳内の結びつきが強い、弱いところ。研究

time 2025/07/09

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自閉症の人にあった、脳内の結びつきが強い、弱いところ。研究

この記事が含む Q&A

自閉症スペクトラム症の人の脳のつながりにはどのような特徴がありますか?
後頭葉や楔前部でつながりが強くなり、前頭葉や側頭葉でつながりが弱くなる傾向があります。
脳のつながりの偏りは、自閉症スペクトラム症の人の行動や困難にどう関係していますか?
特定のつながりの過剰または不足が、視覚情報の処理やバランスの取れた社会的理解の妨げとなることがあります。
この研究は、自閉症スペクトラム症の支援にどのように役立つと期待されますか?
脳のつながりの特徴を理解し、それに基づいた個別支援や治療法の開発につながる可能性があります。

自閉症スペクトラム症の人は、脳の中で情報をやりとりする仕組みに違いがあることが知られています。

しかし、どの部分で脳のつながりが強くなり、どの部分で弱くなるのかは、これまでの研究で結果が分かれていて、はっきりしていませんでした。
ある研究では脳のつながりが強くなりすぎると言われ、別の研究では弱くなっていると言われることもありました。

このような中で、イタリアのサピエンツァ大学、CENTAIインスティテュート、IMTスクール・ルッカ、イギリスのノーザンブリア大学・ロンドンの研究チームは、自閉症スペクトラム症の人の脳のどこがつながりやすく、どこがつながりにくいのかを同時に調べる研究を行いました。

この研究では、自閉症スペクトラム症の子どもや青年と、同じ年ごろの発達が定型的な子どもや青年の脳のつながり方の違いを調べられました。

使ったのは、安静時機能的MRIという方法です。
これは、横になってリラックスしているときの脳の血の流れを測ることで、脳のどの部分が同時に活動しているのかを調べることができます。
脳の同じ部分が同じタイミングで動くことが多いと、それらの部分は「つながりが強い」と考えることができます。

自閉症スペクトラム症の男子57人(15人の子ども、42人の青年)と、発達が定型的な男子80人(17人の子ども、63人の青年)が研究に参加しました。
年齢や知能の差で結果が変わらないように、できるだけ近い条件の人同士で比べるようにしました。

まず、リラックスしているときにMRIで脳の動きを記録し、脳を116の部分に分けて、それぞれの部分同士がどのくらい一緒に動いているかを調べました。
一緒に動くことが多い部分は「つながりが強い」と考えられます。

次に、弱いつながりを取り除き、意味のあるつながりだけを残しました。このときはSCOLAという方法を使いました。

そのあと、自閉症スペクトラム症のグループと発達が定型的なグループでつながりを比べ、どこの部分のつながりが強くなっているか、どこの部分のつながりが弱くなっているかを見つけました。
このときに使ったコントラストサブグラフという方法では、脳全体から違いの大きい部分をまとめて見つけることができます。

また、人数の違いで結果が偏らないように、人数をそろえて分析をくり返す方法を使い、結果が安定するようにしました。
さらに、脳の部分同士のつながりを前頭葉、後頭葉、側頭葉、頭頂葉、小脳などの大きな部分ごとにまとめて見やすくし、脳のつながり方と知能や社会での困りごととの関係も調べました。

その結果、自閉症スペクトラム症の子どもでは、後頭葉や楔前部、上頭頂回で発達が定型的な子どもよりもつながりが強くなっていることがわかりました。
一方で、前頭葉の上前頭回や側頭葉ではつながりが弱くなっていました。

青年の自閉症スペクトラム症の人では、後頭葉と小脳の間でつながりが強くなり、小脳の第四小葉と右の紡錘状回の間でもつながりが強くなっていました。
また、小脳のいくつかの部分同士でもつながりが強くなっていましたが、小脳と他の部分、前頭葉、側頭葉、頭頂葉との間ではつながりが弱くなっているところも見つかりました。

この研究で大事なポイントは、自閉症スペクトラム症の人の脳には「つながりすぎている部分」と「つながりが弱くなっている部分」の両方があるということです。
そして、それが年齢によって変わることもわかりました。
発達が定型的な人では、成長するにつれて脳のつながりが強くなる部分が多くありますが、自閉症スペクトラム症の人では、その変化が少ない部分があるのです。

さらに、脳のつながり方と知能や社会生活での困りごととの関係も調べたところ、後頭葉と小脳のつながりが強くなりすぎると知能の得点が低くなることがあり、後頭葉と側頭葉のつながりが強くなりすぎると社会の中で困りごとを感じやすくなることがわかりました。

こうした結果から、自閉症スペクトラム症の人は後頭葉で視覚情報を細かく見すぎてしまい、全体の状況をつかむことがむずかしくなる可能性があります。
また、小脳のつながりが強くなりすぎることで目の動きのコントロールがしにくくなる可能性もあります。

この研究は、自閉症スペクトラム症の人の脳の特徴を理解するうえで大切な一歩です。
脳のどの部分がつながりすぎているのか、どの部分がつながりにくくなっているのかを知ることは、その人に合った支援方法を考えるヒントになります。
また、社会で困りごとを減らすために脳のつながり方を整える方法を探すことにもつながる可能性があります。

ただし、この研究は男性のデータだけを使っているため、女性の自閉症スペクトラム症の人については今後調べていく必要があります。
それでも、この研究は自閉症スペクトラム症の人が安心して自分らしく過ごしていくために、脳の中で何が起きているのかを知る助けになります。

(出典:Nature)(画像:たーとるうぃず)

特定の機能を担当する脳の部位において、つながりが強い、弱い、ということが自閉症の人に確認できたという結果です。

「後頭葉で視覚情報を細かく見すぎてしまい、全体の状況をつかむことがむずかしくなる可能性」
「小脳のつながりが強くなりすぎることで目の動きのコントロールがしにくくなる」

話すことができない自閉症の方でも、こうしてかかえている困難がわかれば、適切な支援につながるはずです。

ますます、そうした支援につながる解明を期待しています。

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(チャーリー)


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