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自閉症の子どもは骨が弱い?大規模研究が示す運動不足との関係

time 2025/09/22

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自閉症の子どもは骨が弱い?大規模研究が示す運動不足との関係

この記事が含む Q&A

自閉症の子どもの骨の健康は非自閉症の子どもと比べてどのような差がありましたか?
アンクルの海綿骨密度が約5%低く、骨強度の指標ボーンストレングスインデックスが約11%低く、すねの極限応力ひずみ指数が約9%低い結果でした。
身体活動量は骨の健康にどう影響しますか?
自閉症の子は1日中強度以上の運動を約49分しかとらず、非自閉症は約62分で、運動量の差を調整すると骨の差が縮まる可能性が示されています。
今後どのような課題や対策が挙げられていますか?
食事や薬の影響を含む詳細な調査が必要で、楽しみながら継続できる運動プログラムの提供や介入が今後の重点課題とされています。

自閉症の子どもたちは、骨の健康において非自閉症の子どもたちよりも不利な状況にあることが、オーストラリアの大規模研究で明らかになりました。
研究を行ったのは、クイーンズランド大学を中心とする研究チームで、ヘルス・アンド・ウェルビーイング・センター・フォー・リサーチ・イノベーション、ロイヤルチルドレンズホスピタル・メルボルン、サスカチュワン大学などが協力しています。

調査では、オーストラリアで行われている大規模縦断調査「Longitudinal Study of Australian Children」のデータが用いられました。
その中の「Child Health CheckPoint」というサブスタディに参加した、11歳から12歳の子ども1,274人(自閉症の子ども66人を含む)とその保護者が対象となりました。

骨の健康を測るためには、従来よりも詳細に骨の構造や強度を把握できる末梢定量的コンピュータ断層撮影法(pQCT)が使用されました。
測定は、子どもと同伴した保護者の両方に対して行われ、すねや足首の骨の断面データが収集されました。

その結果、自閉症の子どもたちは非自閉症の子どもたちに比べて、足首の海綿骨の骨密度が約5%低く、また骨強度を示す指標であるボーンストレングスインデックスが約11%低いことがわかりました。
さらに、すねの骨においても骨の強度を示す指標である極限応力ひずみ指数が約9%低くなっていました。

つまり、自閉症の子どもは骨が弱く、骨折しやすいリスクが高い可能性があることが示されたのです。

この研究の重要な点は、同伴した保護者の骨の健康も同時に測定されていることです。
もし骨の弱さが遺伝や家庭環境などの要因によるものであれば、保護者の骨にも同じ傾向が見られるはずです。
しかし結果として、保護者の骨には自閉症の子どもの有無による違いは見られませんでした。
これは、自閉症の子どもに特有の生活習慣や行動の違いが骨の発達に影響していることを示唆しています。

その生活習慣の中で特に注目されたのが身体活動量です。
調査の一部の子どもには加速度計を装着して運動量が測定されました。

その結果、自閉症の子どもは1日に中強度以上の身体活動をする時間が平均49分で、非自閉症の子どもの62分に比べて13分以上少ないことが明らかになりました。

これは、非自閉症の子どもたちはオーストラリア政府が定める「1日60分以上の中強度から高強度の身体活動」という基準を満たしているのに対し、自閉症の子どもたちは基準を満たしていないことを意味します。
さらに、この運動量の違いを統計的に調整すると、自閉症と非自閉症の子どもたちの骨の差は2割から4割ほど縮まることがわかりました。

つまり、運動不足が骨の弱さに大きく影響している可能性があるのです。

研究チームは、自閉症の子どもたちが骨の健康で不利になってしまう要因として、身体活動の不足だけでなく、偏食によるカルシウムやビタミンDの不足、外遊びの少なさによる日光浴不足、消化器症状による栄養吸収の問題、さらには一部の精神作用薬の影響なども考えられると指摘しています。
しかし今回の研究では、食事内容や薬の使用についての詳細なデータは得られていないため、これらの影響を直接検証することはできませんでした。
今後の研究課題として、食事や薬の影響も含めた詳細な調査が必要とされています。

今回の研究は、従来の研究の限界を克服している点でも大きな意味があります。
これまで自閉症の子どもの骨の健康に関する研究は、主に小規模な臨床研究に限られており、対象者の多くは男子でした。
さらに従来使われてきたDXA(デュアルエネルギーX線吸収法)は、成長期の子どもにおいては骨の大きさの違いによって誤差が生じやすいという課題がありました。
これに対し、今回の研究は人口を代表する大規模な調査であり、女子を含む自閉症の子どもたちが対象となっています。
また、より精密に骨の構造や強度を測定できるpQCTが用いられたことで、信頼性の高い結果が得られました。

研究では、自閉症の子どもたちの骨の健康が弱いことは、遺伝的な要因というよりも、生活習慣や行動に関連している可能性が高いと結論づけられています。

とくに運動量の不足が骨の発達に大きな影響を与えていることが示されたことから、運動を増やす支援が骨の健康を改善する重要な手がかりになると考えられます。
成長期における身体活動は、将来の骨折リスクを下げるために非常に重要であり、その効果は長期的に続くことが知られています。

一方で、この研究にはいくつかの限界もあります。
自閉症の診断は保護者の報告に基づいており、医学的に確認された診断ではない点、食事や薬の使用状況についての情報が欠けている点、そして人種や民族による骨の違いについては十分に考慮されていない点などです。
それでもなお、この研究は自閉症の子どもたちにおける骨の健康問題を理解するための重要な手がかりを提供しています。

研究チームは、今後は自閉症の子どもたちに対して、運動量を増やすことを目的とした介入や、食事の改善を目指す取り組みを進めていく必要があると述べています。
とくに、楽しみながら無理なく取り組める運動プログラムを用意することが、骨の健康を守るために効果的である可能性があります。
また、医療やリハビリテーションの現場においても、自閉症の子どもたちに対して学習や行動の支援と並行して、骨の発達に関する視点を取り入れることが求められます。

自閉症の子どもたちは、社会的な理解や行動の支援を必要とするだけでなく、体の発達の面でも特別な配慮が必要であることが改めて示されました。

骨の健康は日常生活で大きな影響を持つ要素であり、骨折のリスクを減らし、将来にわたって健康的に暮らしていくための基盤になります。
今回の研究は、自閉症の子どもたちにとってその基盤が十分に築かれていない可能性を明らかにし、今後の支援のあり方を考えるうえで重要な示唆を与えています。

この知見は、家庭、学校、医療の現場が協力して、運動や食事の工夫を取り入れるきっかけになるでしょう。
子どもたちが安心して体を動かし、健やかに成長できる環境を整えることが、骨の健康だけでなく全体的な生活の質を向上させることにつながるのです。

(出典:Journal of Autism and Developmental Disorders DOI: 10.1007/s10803-025-07051-z)(画像:たーとるうぃず)


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