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武術ゲームが自閉症の子に言語・社会性・運動で効果。中国研究

time 2025/09/27

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武術ゲームが自閉症の子に言語・社会性・運動で効果。中国研究

この記事が含む Q&A

武術ゲーム形式の運動プログラムは自閉症の子どもに効果がありますか?
研究では言語・社会性・感覚・運動機能で中程度から大きな効果が確認されています。
どんな内容の活動で効果が生まれたのですか?
ウォームアップ・武術の基本動作を使ったゲーム・協力・待つ・ハイタッチなどの社会的やりとり・感覚統合遊び・リラクゼーションの3段階で構成されています。
研究の限界は何ですか?
地域が限定的な56人を対象で、長期効果や神経科学的測定は検討されていません。

自閉症の子どもたちは、ことばや社会的なやりとりに困難を抱えるだけでなく、体の動きや運動機能にも課題があることが多いとされています。
歩き方が不安定だったり、走ったり跳んだりするときにぎこちなさが見られることがあり、それが遊びや学校生活での孤立につながることもあります。

今回、中国の懐化大学と山東理工大学の研究チームは「武術をもとにしたゲーム形式の運動プログラム」を開発し、その効果を検証しました。
研究に参加したのは、中国四川省成都市の特別支援学校に通う自閉症の子ども56人です。
子どもたちは無作為に2つのグループに分けられ、一方のグループは24週間にわたって週3回、1回60分の「武術ゲーム」に参加しました。
もう一方のグループは、従来のABA(応用行動分析)や言語療法といったリハビリ支援を受けました。

武術ゲームは、ただ型を練習するのではなく、ゲーム性を取り入れた構成になっていました。

物語の背景を設定して役割を演じたり、仲間と協力したり、記憶力を試す課題を取り入れることで、子どもが楽しみながら取り組める工夫がされています。
動きも安全性に配慮されていて、高度で危険な技は含まれません。
その代わり、立つ・座る・転がる・走るといった基本動作に武術の要素を組み合わせ、感覚やバランスを養う内容になっていました。

研究チームが開発した「構造化された武術ゲーム」は、3つの段階(ウォームアップ・ゲーム本編・リラクゼーション)に分けられていました。

最初のウォームアップ(10分)では、ジョギングや関節の運動、簡単な武術の動きを行い、体を温めて集中を高めます。
続くゲーム本編(40分)では、蹴る・打つ・投げる・つかむ・突くといった基本動作を遊びの中に組み込みました。

たとえば「モンスターを倒すゲーム」では、先生が壁に大きな的を貼りつけて「この怪物をやっつけよう!」と声をかけます。
子どもたちは順番に前に出て、キックやパンチを繰り出し、的に当てると歓声と拍手がわき起こります。
的に当たるたびにポイントが加算され、子どもは夢中で挑戦します。
これによって、下肢の筋力や注意力が高められるだけでなく、仲間からの応援やハイタッチを通じて「人と関わる喜び」も自然に体験できました。

「武術メモリーチャレンジ」では、コーチが2つの動きを順番に見せます。
たとえば「突き→蹴り」。
子どもはそれを覚えて同じ順番でまねします。
慣れてきたら動作の数が3つ、4つと増えていきます。
うまくできたときには「すごい!」と声をかけられ、達成感が積み重なっていきます。
これは集中力と記憶力を伸ばす仕掛けです。

二人組での「パートナードリル」では、片方が攻撃の動きをし、もう片方が防御をする役割を担います。
交代で役を変えながら、相手の動きに注意を向け、待つ・タイミングを合わせるといった社会的なスキルを練習します。
ここでは「相手の番を待つ」「目を合わせる」「終わったらハイタッチをする」といった、日常のやりとりに近い行動が自然に身についていきました。

さらに「感覚統合ゲーム」では、床にマットや小さな段差を置いて「山を越えて宝物を取りに行こう」というシナリオが設定されました。
子どもは体を使って障害物を乗り越え、宝物役のボールを手に取ります。
この過程で、バランス感覚や空間認識、触覚や体の位置感覚(固有感覚)が刺激されました。

最後のリラクゼーション(10分)では、深呼吸やストレッチをして体を落ち着けます。
セッションが終わる頃には、子どもたちの表情は穏やかになり、達成感と安心感が漂っていました。

効果を調べるために、研究者たちは「自閉症治療評価チェックリスト(ATEC)」「自閉症行動チェックリスト(ABC)」「粗大運動機能測定(GMFM)」を使い、言語、社会性、感覚、健康行動、自己管理、そして立つ・歩く・跳ぶといった体の動きを評価しました。

結果は明らかでした。

武術ゲームに参加した子どもたちは、従来型の支援を受けた子どもたちに比べて、言語の力や社会的なやりとり、感覚の調整、健康的な行動など、行動面での改善が大きく見られました。
また、寝返りや座る、はいはい、立つ、歩く、走る、跳ぶといった運動機能でも、明らかに高い効果がありました。
研究チームは、この方法が「中程度から大きな効果」をもたらすことを統計的に確認しています。

研究者たちは、この効果の理由について、複数の要素が同時に働いたからだと説明しています。
武術ゲームは、複数の感覚を同時に使う動きが多く、脳の神経回路を活性化させます。
また、順番を守る、仲間に合図を送る、ハイタッチするなどの社会的やりとりを自然に体験できるため、社会性の学びにもつながります。
つまり「体を動かす」「ルールを守る遊び」「仲間との交流」が一体となった活動が、行動や運動の両方にプラスの影響を与えたのです。

研究チームは、このような武術ゲームを特別支援学校やリハビリ施設のカリキュラムに積極的に取り入れることを提案しています。
学校の体育の時間や放課後の活動で取り入れたり、地域で武術クラブを作ったりすることで、自閉症の子どもたちが自然に仲間と関わり、自信を育てていける場になるとしています。

一方で、この研究には限界もあります。
対象は一つの地域の56人に限られており、より多様な子どもたちに当てはまるかどうかは分かりません。
また、24週間という短期間の効果は確認できましたが、終了後に効果がどれだけ続くのかは検討できていません。
さらに、細かい手の動きなどの評価や、脳の変化を調べるような神経科学的な測定は行われていないため、今後の課題とされています。

それでも、この研究は新しい可能性を示しています。
自閉症の子どもにとって、単調でつまらない練習よりも、物語や遊びの要素がある活動の方が集中しやすく、楽しく学べます。武術という文化的にも魅力のある要素を取り入れたゲームは、心と体の両面に働きかける支援方法として注目されます。

このような実践が広がれば、自閉症の子どもたちが「できた」という達成感を積み重ね、仲間と一緒に動く喜びを体験し、生活の中での自信や安心感につなげられるかもしれません。

(出典:Frontiers in Psychology DOI: 10.3389/fpsyg.2025.1660040)(画像:たーとるうぃず)

これは、面白そうで、確かに効果がありそうです。

見てみたい、うちの子とやってみたい。

より幸せそう。大学で行われる親も一緒の自閉症の子の柔道教室

(チャーリー)


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