この記事が含む Q&A
- 自閉症の子どもを育てる家族が直面する主な困難は何ですか?
- 診断直後の動揺や自責感、抑うつ、社会的な視線による孤立感などが主な困難として挙げられます。
- 介護者が直面する対処のあり方にはどんな特徴がありますか?
- 診断後の役割変化や家計の負担、リハビリ中心の生活への再編、家族間の協力と絆の強化が見られます。
- 社会との関わりをどう支えるべきと提言されていますか?
- 共感的な支援や適切な情報提供、レスパイト等の休息支援、地域資源の活用と学校・地域の理解促進が重要とされています。
自閉症のある子どもを育てる家族は、子ども本人だけでなく、家族自身もまた社会の中でさまざまな視線や困難にさらされています。
とくに日常生活の中で積み重なっていく「スティグマ(否定的なレッテルや偏見)」は、外からは見えにくい一方で、家族の心身に大きな影響を及ぼします。
今回紹介する研究は、そうしたスティグマの経験を、自閉症のある子どもの家族、とくに主な介護者の視点から丁寧に描き出した質的研究です。
この研究は、中国・上海にあるトンジ大学医学部関連のリハビリテーション病院を拠点に行われました。
対象となったのは、自閉症と診断された子どもを育てる家族介護者15人です。
研究者たちは、あらかじめ質問のテーマを決めた聞き取りを用いて、診断時から現在に至るまでの経験、感情、家族関係、社会との関わりについて、1人あたり約1時間にわたって話を聞き取りました。
インタビューの内容は、話された言葉をそのまま書き出し、家族エンパワメント理論とスティグマ理論を枠組みとしてテーマ分析が行われています。
分析の結果、家族介護者の経験は大きく四つのテーマに整理されました。

一つ目は、自閉症のある子どもを育てる中で家族介護者が直面する困難です。
多くの介護者は、診断を受けた直後に強い精神的動揺を経験していました。
診断をすぐには受け入れられず、複数の病院や専門家を訪ね歩いた人も少なくありません。
「一生続く」という説明を聞いた瞬間、足が震え、目の前が暗くなったと語る人もいました。
また、妊娠中や過去の自分の行動を振り返り、「自分のせいではないか」と強い自責感に苦しむ介護者もいました。
なかには、深い抑うつ状態に陥り、生きること自体を悲観的に考えた時期があったと語る人もいます。
こうした内面的な苦しみに加えて、社会的な場面での回避行動も多く見られました。
親戚や友人との集まりを避けたり、子どもについて尋ねられることを恐れたりする経験が語られています。
子どもの行動に向けられる同情的、あるいは否定的な視線が、家族を社会から遠ざけてしまうのです。
地域の中で子どもを遊ばせたいという思いと、からかわれたり誤解されたりする不安との間で揺れ動く「板挟み」の状態も、多くの介護者が共有していました。
さらに、将来に対する不安も大きなテーマでした。
多くの介護者は、あえて先のことを考えないようにしていると語っています。
思春期の問題、感情のコントロール、自立の可能性、そして自分たち親が年を取った後に誰が子どもを支えるのかという問いは、重くのしかかっています。

二つ目のテーマは、子どもの自閉症に対して家族がどのように対応していくか、という家族の対処のあり方です。
自閉症の診断は、家族の構造や役割分担、経済状況に大きな変化をもたらしていました。
多くの家庭で、どちらか一方の親が仕事を辞め、フルタイムの介護者になる選択をしています。
その結果、収入は減り、リハビリ費用や教育費が家計に重くのしかかります。
生活のリズムや楽しみ方も大きく変わり、家族全体が「子どものリハビリ中心」の生活へと再編されていきます。
夫婦関係にも影響は及びます。衝突やすれ違いを経験した家庭もあれば、困難を共有する中で結束を強めた家庭もありました。
互いに支え合うことができたケースでは、それが長期にわたる介護を続ける原動力になっていました。
また、子どもとのささやかなやり取り、たとえば肩をたたくしぐさや小さな気遣いが、介護者にとって大きな支えになっていることも語られています。

三つ目のテーマは、介護者自身の受容と成長です。
時間の経過とともに、多くの介護者は診断への否認や強い感情的反応から、現実的な問題解決へと姿勢を変えていきます。
情報を集め、リハビリ方法を学び、自分の子どもに合った支援を模索する中で、「親自身が専門家になっていく」過程が描かれていました。
教育や福祉の知識を深め、海外の研究を読み、地域で活動を立ち上げる人もいます。
こうした経験は、介護者の自己効力感を高め、人生観そのものを変えていくこともありました。
子どもとの生活を通して時間の使い方が変わり、人との関わり方が広がったと感じる人もいます。
もともとの人生計画は大きく崩れたものの、新たな意味や役割を見いだしたと語る介護者もいました。

四つ目のテーマは、家族エンパワメントの視点から見た社会との関わりです。
多くの介護者は、オンラインの親のコミュニティから大きな支えを得ていました。
同じ立場の親同士が情報や感情を共有する場は、孤立感を和らげる重要な役割を果たしています。
また、通常学級への就学を目指す過程では、学校側との交渉や周囲の保護者からの視線など、さまざまな壁に直面していましたが、理解ある教師や学校との出会いが、希望につながることもありました。
地域資源の活用も重要な要素として挙げられています。
一部の家庭は、地域から活動場所や講習会の提供、ボランティアの支援を受けていました。
こうした取り組みは規模としては小さくても、家族にとっては大きな安心感につながっていました。
一方で、リハビリサービスの高額さや質のばらつき、信頼できる情報を得にくい現状に対する不満も多く語られています。
研究者たちは、これらの結果を踏まえ、家族介護者の心身の健康を支えるエンパワメントの重要性を強調しています。
共感的な理解と心理的支援、家族を中心とした多職種連携、個別化されたリハビリ計画、介護者が休息を取れるレスパイト支援、そして地域や社会全体での理解促進が不可欠だと結論づけています。
この研究は、自閉症のある子どもを育てる家族が、単に支援を受ける存在ではなく、試行錯誤の中で力を獲得し、成長していく主体であることを示しています。
同時に、その力が発揮されるためには、家族だけに負担を押しつけない社会的な仕組みが必要であることも、問いかけています。
(出典:BMC Nursing DOI: 10.1186/s12912-025-04178-3)(画像:たーとるうぃず)
中国と日本では異なるところも多いように思えます。
まわりの目をあまり気にしない、まわりに迷惑となるようなことはしないように気をつける、関わる人たちに恵まれてきたこと、などで私はうちの子と一緒に暮らしていて「嫌な目」「大変な目」にはほとんどあったことがありません。
本当にありがたく感謝しています。
(チャーリー)





























