この記事が含む Q&A
- 選択性緘黙と自閉症が併存すると話すことの困難さはより深刻になるのですか?
- 研究では、両方ある子どもほど話す困難さが大きくなる傾向が示されています。
- 話せない状態はどんな身体反応として現れるのですか?
- 「声が出ない」「のどが締めつけられる感じ」「体が固まって動かなくなる」といった体感が語られています。
- どのような支援が有効と考えられていますか?
- 話すように強く促すより、安心できる環境づくりと体の反応を理解することが重要と指摘されています。
多くの人は、選択性緘黙を「話せなくなる不安の問題」として理解しています。
しかし、この研究は、話せなくなる体験が、単なる心理的な緊張ではなく、「体が固まる」という非常に身体的な反応と深く結びついている可能性を、子ども自身の声から明らかにしています。
この研究を行ったのは、イギリスのセレクティブ・ミューティズム・インフォメーション・アンド・リサーチ・アソシエーションとブリストル大学医学部の研究チームです。
対象となったのは、5歳から16歳までの子どもたちで、「自閉症のみ」「選択性緘黙のみ」「自閉症と選択性緘黙の両方」「どちらの診断もない」という4つのグループに分けて調査が行われました。
研究では、まず保護者を対象に大規模なオンライン調査が行われました。
そこで使われたのが、選択性緘黙質問票と呼ばれる尺度です。
この質問票は、「家庭」「学校」「社会的な場面」で、どの程度話すことができているか、そして話せないことが生活にどれほど影響しているかを評価するものです。
その結果、最も話すことの困難さが大きかったのは、「自閉症と選択性緘黙の両方」の診断を受けている子どもたちでした。
次に困難が大きかったのが「選択性緘黙のみ」、その次が「自閉症のみ」、そして最も困難が少なかったのが「どちらの診断もない」子どもたちでした。
つまり、選択性緘黙がある場合、とくに自閉症が重なると、話すことの困難さはより深刻になる傾向が示されました。

さらに興味深いのは、「話せないことが生活にどれだけ影響しているか」という点です。
選択性緘黙のある子どもたちは、家庭、学校、友だち関係など、さまざまな場面で「話せないこと」が強い負担になっていました。
自閉症と選択性緘黙の両方をもつ子どもたちでは、その影響がさらに大きく、本人だけでなく保護者の心配も強いことが示されました。
この研究の特徴的な点は、子ども本人に直接質問する調査を行ったことです。
人数は少ないものの、子どもたち自身が「話そうとしたとき、体で何が起きているか」を語っています。
その中で多くの子どもが語ったのが、「声が出ない」「のどが締めつけられる感じがする」「体が固まって動かなくなる」といった体験でした。
とくに選択性緘黙のある子どもや、自閉症と選択性緘黙の両方がある子どもでは、のどや体の「フリーズ」が頻繁に起きていました。
一方で、どちらの診断もなく、保護者も心配していない子どもでは、こうした体験はほとんど見られませんでした。

子どもたちは、話すことが難しくなるきっかけについても語っています。
最も多かったのは、「話すように急かされること」「早く答えるように言われること」「何度も同じ質問をされること」でした。
また、「変な声になったらどうしよう」「間違えたらどう思われるか」といった不安も、話すことをさらに難しくしていました。
これらは、単なる恥ずかしさではなく、体が固まる感覚と結びついて語られています。
研究者たちは、こうした反応が、危険や脅威を感じたときに体が動かなくなる「フリーズ反応」と関係している可能性を指摘しています。
心拍数が下がり、体が固まり、声も出なくなるという反応は、闘うことも逃げることもできない状況で起こる防御反応として知られています。
選択性緘黙の子どもたちが経験している「話せなさ」は、この身体的な防御反応と重なっている可能性がある、というのがこの研究の重要な示唆です。

また、この研究では、選択性緘黙のある子どもの約4分の1が自閉症も併せもっていることが示されました。
この割合は、一般的な印象よりも高く、選択性緘黙を診断・支援する際に、自閉症の特性をあわせて考える重要性を示しています。
話せなさの背景には、不安だけでなく、感覚の過敏さや環境への圧倒されやすさが関わっている可能性があるからです。
研究者たちは、この研究だけで原因を断定することはできないとしながらも、「話せないこと」を努力不足や性格の問題として扱うのではなく、まず体と神経の反応として理解する必要性を強調しています。
とくに、話すように強く促すことは、かえって体のフリーズを強めてしまう可能性があるため、安心できる環境を整えることが最優先だと述べています。

この研究が静かに伝えているのは、選択性緘黙の子どもたちが「話さない」のではなく、「話せない状態に体ごとなってしまうことがある」という事実です。
そして、その体験は、子ども自身の中ではとても具体的で、苦しく、説明しにくいものだということです。
話すことを目標にする前に、まず体が固まらずにいられる安心をどう作るのか。
この研究は、その問いを、子どもたちの声を通して、私たちに投げかけています。
(出典:Behavioral Sciences DOI:10.3390/bs16010152)(画像:たーとるうぃず)
「緘黙」たいへんな困難だろうと察します。
もう何十年も前、私が小学生だったころ、1日中ずっと何もしゃべらない同級生がいました。
笑顔を見せたりするのに、なぜ、何もしゃべらないのかまったくわからず、ただ不思議に思っていました。
少しでも当時の私が知っていれば、何か役に立てたこともあったかもしれないと今になっても少し悲しい気持ちになります。
見えなくても、いろいろな困難があること、それがどのようなものか知ること、本当に重要です。
場面緘黙症、緘黙、広く知られて理解されてほしいです。とくに子どもたちには。
(チャーリー)





























