この記事が含む Q&A
- ADHDのある子どもの学校への関わりは、行動面は比較的高く、感情面と考え方の面は中程度というのが本研究の要点ですか?
- はい、平均的にはその傾向が見られました。
- 友だちに対する思いやり行動が学校への関わり全体を支える大きな力になる、という結論は本文のどの点から導かれていますか?
- 先生から見て思いやり行動が多い子ほど、行動面・感情面・考え方の面の関わりが高い傾向がありました。
- 感情のコントロールが難しいほど行動面の学校参加が低くなる傾向があり、不注意の強さは感情面の学校参加と関連しているのですか?
- はい、不注意が強いほど感情面の学校参加が低く、集中できない体験が学校への気持ちを下げる可能性が示唆されています。
この研究は、「ADHDのある子どもたちは、学校でどれくらい“関わろうとしているのか”、そしてその関わり方はどのような特徴と結びついているのか」を、行動面・感情面・考え方の面という三つの視点から丁寧に調べたものです。
研究を行ったのは、アメリカのチルドレンズ・ナショナル・ホスピタル、シンシナティ・チルドレンズ・ホスピタル・メディカル・センター、シンシナティ大学医学部などの研究チームです。
ADHDのある子どもは、注意がそれやすい、落ち着いて座っていられない、衝動的に行動してしまうといった特徴から、学校生活でさまざまな困難を経験しやすいことが知られています。
その結果として、「学校が好きかどうか」「授業に前向きかどうか」「学習に粘り強く取り組めているか」といった“学校への関わり”が弱まりやすいと考えられてきました。
しかし、これまでの研究の多くは、「学校への関わり」を一つのまとまりとして扱うものが中心で、「行動」「感情」「考え方」という三つの側面を同時に、しかもADHDと診断された子どもを対象に詳しく調べた研究はほとんどありませんでした。
そこでこの研究では、小学5年生でADHDと診断された150人の子どもを対象に、次の点を調べました。
・学校での行動面の関わり(ルールを守る、課題を出す、授業に参加する など)
・学校に対する感情面の関わり(学校が楽しい、教室が好き など)
・学習に向かう考え方の関わり(自分で考え直す、理解しようと工夫する など)
さらに、これらの関わり方と、
・不注意の強さ
・多動性・衝動性の強さ
・感情のコントロールの難しさ
・友だちに対する思いやり行動(プロソーシャル行動)
・性別、人種、保護者の学歴、薬の使用状況
との関係も分析しました。

まず明らかになったのは、ADHDのある子どもたちは、平均的に見ると「行動面の学校参加は比較的高く」、「感情面」と「考え方の面」は中程度であるということでした。
つまり、「ADHDだから学校にまったく関われていない」というわけではなく、多くの子どもが一定レベルでは学校生活に参加できていることが示されました。
この点はとても重要です。
次に、どのような特徴が学校への関わりと結びついているかが詳しく調べられました。
最も一貫して強い関連を示したのは、「友だちに対する思いやり行動」でした。
先生から見て、
・困っている友だちを助ける
・やさしく声をかける
・協力できる
といった行動が多い子どもほど、行動面・感情面・考え方の面のすべてで、学校への関わりが高い傾向にありました。
この結果は、「問題行動を減らすこと」だけでなく、「良い行動を育てること」が、学校生活を支えるうえでとても重要であることを示しています。
一方で、感情のコントロールが難しいほど、「行動面の学校参加」が低くなる傾向がありました。
たとえば、
・イライラすると爆発しやすい
・気持ちの切り替えが苦手
といった特徴が強いと、ルールを守る、課題に取り組むといった行動が難しくなりやすいことが示唆されます。
不注意の強さは、「感情面の学校参加」と関係していました。
不注意が強い子どもほど、
・学校が楽しいと感じにくい
・授業に対して前向きな気持ちを持ちにくい
傾向が見られました。
これは、「集中できないこと」そのものだけでなく、「集中できない体験が積み重なることで、学校に対する気持ちが下がっていく」可能性を示していると考えられます。

興味深いことに、多動性・衝動性が強いほど、「感情面の学校参加が高い」という結果も得られました。
一見すると意外ですが、多動性・衝動性のある子どもは、人と関わる機会が多く、活発にやりとりをするため、「学校にいる感じ」や「人と関わっている感覚」を強く持ちやすい可能性があると研究者は考察しています。
さらに、背景要因についてもいくつかの関連が見られました。
・女の子のほうが、男の子より感情面の学校参加が高い
・ADHDの薬を使用している子どもは、感情面の学校参加が高い
・人種によって、行動面と考え方の面で違いが見られる
・保護者の学歴が高いほど、考え方の面の学校参加がやや低い
これらはまだ初期的な知見であり、慎重な解釈が必要ですが、「子どもの特性だけでなく、置かれている環境や背景も、学校への関わり方に影響する」ことを示しています。
この研究が伝えている最大のメッセージは、次の点です。
ADHDのある子どもの学校での困難は、「能力のなさ」や「やる気のなさ」では説明できない。
むしろ、
・感情の調整のしやすさ
・友だちとの関係性
・注意の特性
といった複数の要因が重なり合って生じている。

そして、とくに重要なのは、
「友だちに対する思いやり行動が、学校への関わり全体を支える大きな力になっている」
という点です。
この結果は、支援の方向性にも示唆を与えます。
問題行動を減らすことだけを目標にするのではなく、
・人と助け合う経験
・安心して関われる関係づくり
・感情を整える力を育てる支援
を重ねていくことが、結果的に学習や学校生活全体を支える可能性があります。
ADHDのある子どもたちは、「関われない存在」ではありません。
すでに多くの子どもが、学校とつながろうとする力を持っています。
この研究は、その力がどこにあり、どのように育てられるのかを教えてくれています。
(出典:School Mental Health DOI: 10.1007/s12310-026-09853-7)(画像:たーとるうぃず)
「友だちに対する思いやり行動が、学校への関わり全体を支える大きな力になっている」
わかりやすい発見だと思います。
そうした方向の支援の重要性が知られてほしいと思います。
「ふつう」になれない私、ADHD女子高生の学校での闘い。研究
(チャーリー)





























