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自閉症やADHDの特性があっても生活が楽になる「待つ力」

time 2026/01/30

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

自閉症やADHDの特性があっても生活が楽になる「待つ力」

この記事が含む Q&A

待つ力は自閉症の子どもの日常生活の困難を和らげる可能性があるのですか?
はい、待つ力が高いほど自閉症特性と適応行動の関連が弱くなる可能性が示唆されています。
ADHDと待つ力の関係は3歳ではどうですか?
3歳では ADHD特性と待つ力の緩衝効果は明確には確認されず、年齢が上がると現れやすい可能性が指摘されています。
どうやって待つ力を育てるべきですか?
遊びを通した訓練やルールのあるゲーム、順番を意識する活動、感情を落ち着かせる練習などが候補とされています。

私たちは日常生活の中で、何度も「待つ」「我慢する」「衝動を抑える」といった場面に出会います。
たとえば、お菓子をすぐに食べたい気持ちをこらえる、順番が来るまで待つ、やりたいことを後回しにする、といった小さな選択の積み重ねです。

こうした行動の土台にあるのが、実行機能と呼ばれる心の働きです。
実行機能には、注意を保つ、ルールを守る、記憶を使う、気持ちや行動をコントロールするといった複数の要素が含まれます。

スウェーデンのウプサラ大学心理学部、カロリンスカ研究所、ストックホルム地域医療機関、カーティン大学(オーストラリア)などの研究グループは、自閉症やADHDの家族歴をもつ3歳児において、「待つ力」がどのような役割を果たすのかを詳しく調べました。

この研究が示しているのは、
「待つ力(報酬を先延ばしする力)が強い子どもでは、自閉症特性と日常生活の困難との結びつきが弱まる」
という重要な可能性です。

研究の対象となったのは、生後5か月から追跡されているスウェーデンの縦断研究に参加している77人の3歳児です。

子どもたちは、次の3つのグループに分けられました。

・自閉症の家族歴がある子ども
・自閉症とADHDの両方の家族歴がある子ども
・自閉症やADHDの家族歴がない子ども

研究者たちは、実験室で行う課題を使って実行機能を測定し、さらに保護者への聞き取りや臨床評価によって、自閉症特性、ADHD特性、日常生活での適応行動を評価しました。

この研究では、実行機能を大きく二つのタイプに分けています。

一つは「認知的な実行機能」です。
これは、作業記憶、注意の切り替え、ルールに従う力、干渉を抑える力など、考えることを中心とした働きです。

もう一つは「報酬を先延ばしする力(ディファード・グラティフィケーション)」です。
これは、目の前の誘惑にすぐ飛びつかず、より大きな報酬のために待つ力です。
感情や動機づけに強く関係する実行機能の側面と考えられています。

まず、家族歴による違いを調べたところ、次の結果が得られました。

自閉症の家族歴がある子ども、または自閉症とADHDの家族歴がある子どもは、家族歴がない子どもと比べて、認知的な実行機能の得点が低い傾向がありました。
一方で、報酬を先延ばしする力については、グループ間で差は見られませんでした。

つまり、「複雑な認知的コントロールを必要とする力」は早い段階から差が出やすい一方で、「待つ力」は家族歴の有無だけでは単純に説明できないことが示されました。

 

次に、自閉症特性やADHD特性と、それぞれの能力との関連を詳しく調べました。
分析の結果、次のような傾向が見られました。

自閉症特性が高いほど、
・報酬を先延ばしする力が低い
・日常生活での適応行動が低い

という関連が見られました。

一方で、ADHD特性が高いほど、
・認知的な実行機能が低い

という関連がより明確でした。

つまり、
自閉症特性は「待つ力」と、ADHD特性は「認知的な実行機能」と、より強く結びついている可能性が示されました。

さらに重要なのは、「待つ力」が緩衝材として働くことが示された点です。

研究者たちは、自閉症特性が高いほど適応行動が低くなる、という一般的な関係に注目しました。
そのうえで、報酬を先延ばしする力が高い場合、この関係がどう変化するのかを分析しました。
結果として、

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・待つ力が弱い子どもでは
自閉症特性が高いほど、適応行動は大きく低下する

・待つ力が平均的な子どもでは
自閉症特性と適応行動の関連は中程度

・待つ力が強い子どもでは
自閉症特性と適応行動の関連がほとんど見られない

というパターンが確認されました。

つまり、待つ力が強いと、自閉症特性があっても日常生活での困難が表れにくくなる可能性があるということです。

この結果は、実行機能が「保護因子」として働くという考え方と一致します。
保護因子とは、リスクがあっても悪い結果が出にくくなる要因のことです。

自閉症の特性そのものを変えるわけではなくても、待つ力があることで、日常生活への影響が和らぐ可能性が示唆されています。
研究者たちは、待つ力が関係する日常場面として、次のような例を挙げています。
・順番を待つ
・欲しいものをすぐ取らずに我慢する
・相手の話が終わるまで待つ
・ルールを守る

これらはすべて、適応行動の中心となるスキルです。
一方で、ADHD特性と適応行動との関係については、今回の年齢(3歳)では明確な緩衝効果は確認されませんでした。

研究者たちは、ADHD特性は年齢が上がるにつれてよりはっきり現れることが多く、3歳ではまだ測定が難しい側面がある可能性を指摘しています。

この研究にはいくつかの重要な意味があります。

一つは、自閉症特性のある子どもすべてが同じ発達経路をたどるわけではないという点です。

もう一つは、発達の早い段階で「待つ力」を育てることが、将来的な生活のしやすさにつながる可能性があるという点です。

研究者たちは、実行機能はある程度「伸ばすことができる能力」であると述べています。
具体的には、

・遊びを通したトレーニング
・ルールのあるゲーム
・順番を意識する活動
・感情を落ち着かせる練習

などが候補として挙げられています。

この研究が伝えているのは、「自閉症特性があるから将来が決まってしまう」という考え方ではありません。
むしろ、小さな力の違いが、大きな生活の違いにつながる可能性があるという視点です。

待つ力は、目立たない能力かもしれません。
しかし、その力があることで、子どもは環境と折り合いをつけやすくなります。

この研究は、自閉症特性のある子どもたちの「困難」だけでなく、支えとなる力がすでに存在している可能性を静かに示しています。

「特性があるから大変」ではなく、「特性があっても、支えとなる力を育てられる」。
そのような希望を感じさせる研究です。

(出典:Journal of Autism and Developmental Disorders DOI: 10.1007/s10803-025-07165-4)(画像:たーとるうぃず)

「発達の早い段階で「待つ力」を育てることが、将来的な生活のしやすさにつながる可能性」

「待つ力」が育つよう、手助けしていってください。

自閉症と特性の違いが示す「探索」と「活用」の行動パターン

(チャーリー)

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