
この記事が含む Q&A
- 重度の自閉症の大人は見かけなくなるのはなぜですか?
- 多くは歴史的に誤診や制度の隙間で社会から隠され、現在も支援の不足により見えにくい状況です。
- ケネディの発言は自閉症の実情を正しく反映していますか?
- いいえ、過去には多くの自閉症の人々が適切な支援を受けられず、現在も支援が必要な方々が存在します。
- 自閉症は近年になって増えた現象ですか?
- いいえ、社会の見えやすさの向上により、「新たな現象」と誤解されることが多いだけで、歴史的に存在しています。
米国保健福祉長官のロバート・F・ケネディ・ジュニアは最近、「重度の自閉症の大人を見かけない」と発言し、それがワクチンに関する、すでに何度も否定されてきた自身の主張を裏付けるものだと語りました。
私たちは、カリフォルニア州ベイエリアで自閉症のある子どもを育てている母親として、こうした発言をこれまでにも何度も耳にしてきました。
これは、ただの間違いではありません。
非常に危険な発言です。
現実には、重度の自閉症のある人たちは昔から存在しています。
ただし、1950年代や60年代には、診断されることがほとんどなく、誤って別の病名をつけられたり、施設に隔離されたりすることが多かったのです。
ケネディが子どもの頃、支援を必要とするような仲間を見なかったとすれば、それは彼らが存在しなかったからではなく、社会から隠されていたからです。
実際、自閉症という診断名が「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」に初めて記載されたのは1980年のことでした。
それ以前は、現在「重度の自閉症」と呼ばれている子どもたちは、統合失調症や精神遅滞と誤診され、州立の施設に送られていました。
なかには、生涯その施設で過ごした人もいます。
そのような施設が1960年代から70年代にかけて閉鎖され始めた際も、彼らが社会に温かく迎え入れられたわけではありませんでした。
多くの人たちは資金不足のグループホームに移され、支援制度の間を転々としたり、最悪の場合は路上で暮らすことになったりしました。
1975年には、障害のある子どもたちを含むすべての子どもに教育を受けさせることを義務付けた「障害児教育法」が成立しました。
しかし、これはすべての子どもが通常の教室に入れるようになったことを意味するわけではありません。
とくに、ケネディが通ったような私立校では、その影響は限られていました。
現在でも、重度の自閉症のある生徒の多くは、一般の教室ではなく、特別な支援を受けられる場所で学んでいます。
もしあなたが教師や専門職、または親でなければ、彼らと日常的に接する機会はほとんどないかもしれません。
では、ケネディが「ショッピングモールで見かけない」と言うような高齢の自閉症の人たちは、今どこにいるのでしょうか。
一部の人は支援付きの住宅プログラムに住んでいます。
高齢の親と一緒に暮らしながら、将来への不安を抱えている人もいます。
そして、残念なことに、適切な医療を受けられないまま早すぎる死を迎えた人も少なくありません。
当時の誤診のせいで、本来必要のない向精神薬を処方されたり、無視されたり、施設で虐待されたりした人もいました。
あるいは、制度の隙間に落ちてしまい、誰の目にも止まらずに生きてきた人もいます。
そうした人々を今見かけないからといって、「自閉症は最近の現象だ」と決めつけるのは、無知であるだけでなく、あまりにも残酷です。
50年前、自閉症のある人たちを見捨てていた社会の仕組みは、いまも本質的には変わっていません。
もしロバート・F・ケネディ・ジュニアが本当に状況を良くしたいと考えているのなら、私たちのような家族に対する支援や、高齢の自閉症のある人たちへのサービスの改善に目を向けるべきです。
陰謀論や誤った情報は、誰の助けにもなりません。
自閉症は「最近の現象」ではありません。「やっと目に見えるようになってきた」だけなのです。
(出典:米The Mercury News)(画像:たーとるうぃず)
親子共に日本に生まれてよかったと思います。
これからも、そう思えることがどうかできますように。
(チャーリー)