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ADHDの力を発揮し自分らしく。フリーランスという働き方

time 2025/07/15

この記事を読むのに必要な時間は約 11 分です。

ADHDの力を発揮し自分らしく。フリーランスという働き方

この記事が含む Q&A

ADHDの人はフリーランスの仕事と相性が良いのでしょうか?
自由な環境と短期集中の仕事がADHDの強みに合うため、相性が良いことがあります。
ADHDの大人が仕事の効率を上げるためにどんな工夫ができるのでしょうか?
自分に正直に作業量とペースを把握し、環境やアラームを活用することが効果的です。
ADHDの特性を活かす働き方にはどんなメリットがありますか?
自由度やクリエイティビティの向上、自己の強みを最大限に発揮できる点があります。

私は最初、「ADHD(注意欠如・多動症)」のあるトップアスリートについての記事を担当することになったとき、自分とはまったく違う世界の人たちだろうと思っていました。
なぜなら、私自身がADHDに関してよくある固定観念――たとえば「落ち着きのない男の子」というような――を信じていたからです。
でも、専門家やアスリートへのインタビューを重ねるうちに、その診断は、驚くほど私自身とよく似ているのだと気づいたのです。

私は子どものころ、「おしゃべりアナ」というあだ名をつけられていました。
授業中におしゃべりが止まらなかったからです(これはADHDのある女性や女の子によくある特徴です)。
私は、山小屋のような静かな場所よりも、にぎやかなバーの方が集中できます(ADHDの人は、集中するために外的な刺激が必要になることがよくあります)。

リラックスするのが苦手で、むしろリスクを楽しむタイプです(ADHDの脳はドーパミンという快感を得るための物質が自然には出にくいため、それを求めて刺激を探しがちです)。

一方で、「大人としてちゃんと生活する」ことには本当に苦労しています(ADHDの脳は、「重要かどうか」よりも「興味があるかどうか」で物事を判断しがちです。楽しいことなら即行動。でも役所や歯医者は、つい後回しになります)。

ありがたいことに、ジャーナリズムの仕事、とくにフリーランスでの活動は、ADHDのある人にとってとても相性が良い場合があります。
精神科医のミミ・ウィンスバーグはこう話してくれました。

「締め切りがはっきりしている、ハイパーフォーカス(強い集中)ができる、目標が明確で、それを終えたらすぐ次に移れる。
しかも、長期的な計画管理をする必要はあまりない。基本的には短い集中で仕事が進んでいきます」

ここからは、ADHDとフリーランスライティングの相性、そして自分の強みを活かす方法や仕事に関する困難の乗り越え方について、もっと詳しくお話しします。

▫️ADHDとフリーランスの相性の良さ

フリーランスの中にどのくらいADHDの人がいるか、正確な数字はわかっていませんが、自営業の人たちにADHDが多い可能性があるという見方はあります。

臨床心理士でADHD当事者のエミリー・アンホルトはこう話します。

「起業やフリーランスでは、自分のニーズに合わせて働く環境をカスタマイズできます。
普通の仕事のように、自分を環境に合わせる必要はありません」

さらに、フリーランスには独特のプレッシャー―取材、企画、締め切り、そして報酬のやり取り―があり、それがADHDの脳にはうまく作用するのです。
平穏すぎる状態では動きにくくても、適度なプレッシャーの中では集中力が高まります。

ライターで神経多様性の支援者でもあるジェシー・ポケラスはこう語ります。

「新しいひらめきや視点、新しい仕事のプロジェクトは、従来の9時5時勤務では得られないような活力を与えてくれます。
私にとって、それはまさに“スーパーパワー”なんです」

長年フリーランスとして活動しているタラ・ハエルも、次から次へと湧いてくる企画のアイデアを、ADHDのおかげだと考えています。

「みんな『どうやってそんなにアイデアが出るの?』と聞くけど、私は『どうやったらこの蛇口を止められるのか教えて』って逆に聞きたいくらい」

と笑って話していました。
ただし、アイデアが多すぎて、どれから手をつけるかを決めるのに苦労することもあるそうです。

アンホルトによれば、ADHDの人は脳の中で思考のつながりをどんどん広げられるので、ブレインストーミング(アイデア出し)にとても向いています。
ハエルも、「取材中の相手が話すこと一つひとつが、次々に違う考えに結びついて、自然と良い質問が出てくるんです」と話していました。

▫️ADHDのある人がフリーランスとして働くためのコツ

私は以前、会社員として働いていた頃、火曜と木曜の午後2時に締め切りがある仕事をしていました。
ですので、自然とその日の午前11時ごろから書き始めるようになっていました。
結果的には、これが今のフリーランスという働き方にうまくつながっています。
早く仕上げれば、それだけたくさんの仕事ができるし、やる気も出るし、報酬も増えるからです。

アンホルトはこう説明します。

「ADHDのある人は、何かしらの刺激が必要になることが多く、それは不安という形で現れることもあります。
締め切り直前にものすごい集中力を発揮する人が多いのもそのためです」

でも、ADHDの強みは、時に「諸刃の剣」でもあります。だからこそ、大事な工夫がいくつかあります。

▫️自分に正直でいること

「うまくいった」先延ばしにも限界があります。
アンホルトは、「本当にどれだけの作業量をこなせるのか」を自分で把握することが大事だと言います。
たとえば、過去にどのくらいの時間をかけて書いたかを記録して、次の見積もりに活かすなどです。

「もし自分の先延ばしをうまくコントロールできない場合、フリーランスは向かないかもしれません。
でも、うまく調整できる人にとっては、とても自由度の高い働き方になります」

▫️仕事の選び方に気をつけること

ハエルは、調査報道など長期プロジェクトをしている記者を尊敬していますが、自分にはあまり向いていないとわかっているそうです。

「3か月の締め切りをもらっても、結局最後の1週間で全部やることになる。それでは良くないんです」

そのため、彼女の仕事の多くは1週間以内の納期にしているそうです。

ポケラスも、「新しいこと」に積極的に取り組むよう意識していると言います。

「ドーパミンが減ってきたと感じたら、新しいプロジェクトを入れるタイミングを計って、うまく切り替えるようにしています」

アンホルトの研究でも、ADHDの人は「新しいことの始まり」にはすごく活性化されるけれど、「終わらせる」ことに苦手意識を持つ傾向があるそうです。

▫️アラームを活用する

アンホルトは「アラームを設定するためのアラーム」まで設定しているそうです。
というのも、ADHDの脳では「目の前にないもの=存在しないもの」と感じやすく、やるべきことを忘れやすいからです。
だからこそ、「始める時間」や「終える時間」を思い出すためのアラームが有効です。

▫️環境を工夫する

たとえば、確定申告のような退屈な作業をしなければならないときには、楽しい場所でやるようにするといいかもしれません。
私にとっては、美しいコワーキングスペースやホテルのロビー、さらにはバーがそれに当たります。
通勤の必要がないなら、その自由を最大限に活かすべきです。

ハエルも、夜遅くにソーダを飲みながらバーやカフェで作業することが多いといいます。
アンホルトは、つまらない仕事をするときには、自分へのご褒美(たとえばカフェのスイーツ)を用意しているそうです。
「どうせ集中しにくい環境で、集中しにくい作業をしようとしたって無理ですよ」と彼女は話してくれました。

▫️外注も考えてみる

もちろん、面倒な作業でも自分でやらなければならないものもありますが、全部がそうとは限りません。
ハエルは、請求書の送信や、記事の記録、出張費の管理、締め切りカレンダーの作成などを、バーチャルアシスタントに任せています。

そうすることで、お金も時間も節約できるうえ、自分の頭脳をもっとも必要とする仕事に集中できます。

「請求書なんかに私の貴重な集中力を使いたくありません。
それより記事を書く方がよっぽど大事です」

▫️「相棒」をつくることも一つの手

私自身は、他の人たちが一生懸命働いているように見えるコワーキングスペースで作業することで、自分もやる気が出ます。
逆に、家に一人でいると、「他の人も休んでるのでは」と思って、ついだらけてしまいます。

ハエルはもっと積極的な方法も使っています。
たとえば、Facebookグループに「今日やるタスク」を書き込み、進捗を報告していくそうです。

「みんなが応援してくれるんです。
ポジティブなフィードバックと、やらなきゃという責任感が合わさって、すごく効きます」

さらに「ボディ・ダブル」という方法も使っています。
これは、Zoomで友人と一緒に作業する方法で、友人がゲームをしているだけでも、自分が集中できるようになるとのことです。

「その人が一緒にいるだけで、自分の集中力が持続するんです」

▫️自分を責めずに、いたわること

多くのADHDの大人は、子どもの頃から「怠け者」「集中できない」「学ぶ力に問題がある」といった否定的なメッセージを受けてきた経験があります。

アンホルトはこう話しています。

「そうした経験を悼んで、自分自身の思考の仕方や働き方に本当に問題があったのかどうかを見直してみましょう。
もしかしたら問題は、自分ではなく、“あなたの個性が活かされない場所”にいたことだったかもしれません」

そして今、フリーランスという働き方が、あなたの特性を活かせる「正しい場所」になるかもしれません。

「もちろんある程度の経済的余裕は必要ですが、多くの人にとっては、自分の特性に合った働き方をデザインするチャンスがあります。
フリーランスや起業は、そのためのすばらしい方法だと思います」

(出典:米Association of  Health Care Journalists)(画像:たーとるうぃず)

実際、それで生活していくのは簡単ではないかもしれません。

しかし会社にお勤めで、これからもずっとお勤めになっても、選択肢・可能性として意識しておくだけで、自分を助けてくれるはずです。

自閉症とADHDの私は自らの働き方を変え、社内も変える。

(チャーリー)


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