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自閉症の子への「TEACCH」支援モデルの効果を検証。研究

time 2025/07/26

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自閉症の子への「TEACCH」支援モデルの効果を検証。研究

この記事が含む Q&A

TEACCHはASDの子どもたちの社会性を改善する効果があるのですか?
はい、研究で社会性のスコアが有意に向上したとの結果があります。
TEACCHの支援プログラムはどのような特徴がありますか?
視覚的な構造化とスケジュールを用いて安心して活動できる環境を作ることです。
TEACCHの効果はすべての分野で認められていますか?
いいえ、社会性や認知、微細運動では効果が確認されていますが、他の分野には効果の証拠が限定的です。

自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的なやりとりの難しさや、繰り返しの行動などを特徴とする発達のちがいです。
重い知的障害をともなう場合もあれば、知的には高い能力がありながら、コミュニケーションや環境への適応に苦労する場合もあります。
このように、ASDは人によって状態が大きく異なる「多様性のある特性」であり、その支援には柔軟で多面的な方法が必要とされています。

ASDのある人のために、これまでさまざまな治療や教育法が試みられてきました。
その中のひとつが「TEACCH(ティーチ)」と呼ばれる支援プログラムです。
TEACCHは、「自閉症および関連するコミュニケーションに障害のある子どもたちの治療と教育(Treatment and Education of Autistic and Related Communication Handicapped Children)」の略称で、アメリカで開発された支援モデルです。

今回の研究は、TEACCHが本当に効果があるのかどうかを確かめるために、これまでに発表されたたくさんの研究をまとめて詳しく調べ直したものです。
調査を行ったのは、中国の北京リハビリテーション病院(首都医科大学付属)と、黒竜江中医薬大学第二附属病院の研究チームです。

TEACCHの一番の特徴は、「構造化された教育環境」の提供です。
これは、ASDのある子どもたちが混乱しにくく、安心して活動に取り組めるように、「何を、いつ、どこで、どのように」行うのかを視覚的にわかりやすく示す支援方法です。
たとえば、「今から絵本を読む」「そのあとおやつの時間」といったスケジュールを、絵や写真カードを使って壁に貼り出すなどの工夫がされます。
こうすることで、先の見通しが立ちやすくなり、予測できないことへの不安や混乱が減るとされています。

また、教室や家庭の中での活動場所を明確に分ける、課題の内容がひとりで理解・完了できるように工夫する、といった「構造化」もTEACCHの重要な考え方です。
たとえば、机の上に「始まり」と「終わり」がはっきりわかる課題を用意し、「自分でできた」という経験を積みやすくすることで、子どもの自信と自立が育まれます。

さらにTEACCHでは、保護者の参加も重要視されています。
家庭と学校や施設が連携して、支援のやり方をそろえたり、家でも視覚的なスケジュールや課題の提示方法を取り入れたりすることで、子どもが安心して一貫した環境の中で生活できるようになります。

この研究では、TEACCHがASDのある子どもや青年に与える効果を、英語および中国語の文献から11件(701人分)を対象に統計的に分析しました。
対象となった年齢は2歳から18歳で、支援の場は家庭、学校、病院などさまざまでした。

研究の目的は、TEACCHがASDのある人の社会的なスキルや認知能力、運動機能などにどのような影響を与えるのかを明らかにすることです。
評価された項目は、社会性、認知能力、微細運動、模倣、言語の理解と使用、日常生活のスキル、手と目の協調、感覚の受け取り方などです。
また、「自閉症行動チェックリスト(ABC)」「小児自閉症評価尺度(CARS)」「自閉症治療評価チェックリスト(ATEC)」といった指標も用いて、症状の重さの変化を確認しました。

その結果、注目すべき点として、TEACCHを受けたグループでは社会性のスコアが有意に高くなっていました。
これは、友だちや大人との関わり、集団での行動、表情やジェスチャーの理解などの面で、TEACCHが効果的だったことを示しています。
認知能力や細かい運動の力(ボタンを留める、えんぴつを使うなど)においても、TEACCHは有意な改善をもたらしていました。

一方で、模倣や言葉の理解と使用、コミュニケーション、全身を使った運動、日常生活のスキル、手と目の連携、感覚の受け取り方といった面では、明確な効果は見られませんでした。
これらは、TEACCHの枠組みでは十分にアプローチしきれない課題である可能性があります。
また、これらの結果には評価方法の違いや、実施頻度、子どもの状態のばらつきが影響していることも考えられます。

ただし、ASDの特性の重さを示すABC、CARS、ATECのスコアにおいては、TEACCHグループの方が有意に改善を示しており、症状全体としての軽減につながっている可能性が示唆されました。

研究チームは、これらの結果からTEACCHが「社会性」「認知」「微細運動」の3点において効果的であることを確認しました。
また、TEACCHの実践は家庭や学校、施設などのさまざまな場面で応用可能であり、保護者や支援者との連携も取りやすいという実用性の高さも評価されています。

研究の中では、証拠の質についても評価が行われました。
「社会性」と「微細運動」については「高い質の証拠」とされており、TEACCHによる効果が信頼できるものであることが示されています。
一方で、その他の項目では「中程度」から「非常に低い」と評価されており、今後の研究による再検証が必要とされています。

今回の研究にはいくつかの限界もありました。
研究の数が限られていたこと、評価方法や支援内容が統一されていなかったこと、また実施頻度や時間が研究ごとに異なっていたことなどが、結果のばらつきにつながったと考えられます。

今後の課題としては、TEACCHの具体的な実施内容を標準化すること、大規模な参加者を対象にした質の高い研究を行うこと、支援の長期的な効果を追跡することなどが挙げられています。
とくに、ASDの支援においては「本人と家族の希望に合い、効果が科学的に裏づけられていて、日常生活に無理なく取り入れられる支援」が求められています。
TEACCHはそのような支援の一例として、今後も重要な位置を占めていくと考えられます。

結論として、この研究はTEACCHがASDのある人の社会性、認知機能、微細運動に対して有効であるという証拠を示しました。
ただし、すべての分野での効果が明確に認められたわけではなく、その限界も含めて理解する必要があります。
ASDのある人たちにとってよりよい未来をつくるためには、個別の特性に合った柔軟な支援と、科学的に裏付けられた方法の両方が必要です。
そして、TEACCHはその可能性のひとつとして、今後も研究と実践の両面で注目されていくでしょう。

(出典:BMC Pediatrics)(画像:たーとるうぃず)

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