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ADHDの症状に影響する年齢・睡眠・行動の関係を示した研究

time 2025/11/15

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

ADHDの症状に影響する年齢・睡眠・行動の関係を示した研究

この記事が含む Q&A

ADHDは注意のつまずきと落ち着きにくさ(多動・衝動)の2つの経路に分けて理解すべきですか?
はい、両者は別々に結びつく要素が異なるため、それぞれに合った支援が有効と示されています。
年齢や性別でADHDの特徴はどう変わりますか?
年齢とともに多動・衝動は弱まる傾向がある一方、注意の続きにくさは年齢にかかわらず見られやすいことが特徴です、性別では多動・衝動は男の子に強い傾向がありますが注意のつまずきには性別差がありません。
具体的にはどんな支援が有効ですか?
注意のつまずきには学習を細分化した課題や集中しやすい環境づくり、衝動性には睡眠リズムの整備や場面切り替えをサポートする声かけ、感情の波を抑える関わりが有効です。

ADHDのある子どもたちと関わっていると、「この子はどうしてこんなに集中が続かないのだろう」「どうしてこんなに動き続けてしまうのだろう」と感じる場面があります。
学校でも家庭でも、目の前の行動には理由があるとわかってはいても、その背景がつかみにくいことも少なくありません。

今回、中国のグアンシー自治区人民病院コグニティブ&スリープセンターとグアンシー医学科学院ブレイン・メンタルディジーズ研究所の研究チームが行った調査は、まさにその「背景」に迫ったものです。
子どものADHD症状と、年齢、性別、睡眠の状態、行動の特徴、そして“考える力”の関係を、ひとつひとつていねいに調べた大規模な研究でした。研究に参加したのは331人の6〜12歳の子どもたち。ADHDの診断を受け、薬を飲んでいない状態で、満遍なく学校に通っている子たちです。

研究チームは、ADHDの中心となる2つの特徴――「注意が続きにくい」「落ち着きにくい(多動・衝動)」のどちらに、どんな要素が関係しているのかを細かく分析しました。
これまでもADHDと睡眠や学習のつまずきの関係は語られてきましたが、この研究の特徴は、睡眠の種類を細かく区別し、考える力の中身も複数に分けて検討し、さらに行動の困りごとも合わせて総合的に見たことです。
つまり、ADHDを「ひとつのまとまり」として見るのではなく、「注意のつまずき」と「落ち着きにくさ」を別々にとらえ、それぞれにどんなものが結びついているのかを丁寧に追いかけたのです。

研究チームが最初に示したのは、年齢による変化でした。
多動や衝動性は、子どもが成長するにつれてゆっくり弱まっていく傾向が見られました。
しかし、注意が続きにくさのほうは、年齢が上がっても大きく変わらない点が特徴でした。

そしてもうひとつ興味深いのは性別です。
多動・衝動の強さは男の子のほうが高い傾向が見られましたが、注意が続きにくい特徴については男女の差はありませんでした。
この結果は、注意のつまずきが見えにくい女の子のADHDが見過ごされやすい、という現場の感覚と一致するところがあります。

次に、研究チームは「考える力」とADHDの特徴の関係を調べました。
ここで使われたのは「注意」「計画」「同時処理」「順序立て」の4つの力に分けて見る方法です。
その中で、注意が続きにくい子どもたちは、やはり「注意の力」に弱さが見られました。
これは当然のように見えますが、「多動・衝動の強さ」とはほとんど関係していなかった点が重要です。
つまり、注意のつまずきの裏側には、やはり“注意そのものの力”が関係しているのに対し、多動・衝動の子は必ずしも“注意力”が低いわけではないということです。

さらに研究チームは、睡眠の状態に目を向けました。
睡眠とADHDの関係はこれまでも指摘されてきましたが、今回は「寝つきにくさ」「寝ている途中の動きの多さ」「日中の眠気」「寝汗の多さ」など、睡眠を6つのタイプに分けて調査しています。

その結果、「注意が続きにくい」子どもでは、寝つきの悪さや日中の強い眠気が関係していることがわかりました。
一方、多動・衝動については「睡眠中の動きの多さ」や「寝入りと目覚めの切り替えの不安定さ(睡眠−覚醒移行の乱れ)」と強く結びついていました。
これは、睡眠が単なる“量”ではなく、“質”や“タイミング”の問題としてADHDと関わっていることを示しています。

そして、この研究で最も大きい意味をもつ結果が、行動の特徴との関係です。
注意が続きにくい子は、学習のつまずきと非常に強い結びつきがありました。
「わかっているのに点数がとれない」「どこで間違えたのかわからない」という親子の悩みは、まさにこの部分とつながっていると言えます。
一方、多動・衝動が強い子どもたちは、反抗的な行動の多さと深く関係していました。
「すぐにカッとなる」「言われても止まらない」といった日常の困りごとが、衝動性の高さとリンクしていたのです。

さらに興味深いのは、不安の少なさと多動・衝動が結びついていた点です。
一般的には不安が強い子ほど動きが小さくなることがありますが、この研究でも同じ傾向が確かめられ、「不安の少ない子ほど衝動的になりやすい」という結果が出ています。
これは、外から見ると「元気」「明るい」「気にしていないように見える」子どもでも、じつは衝動を抑える力が弱く、そのために行動が激しくなっている可能性を示しています。

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研究全体を通して見えてくるのは、ADHDというひとつの診断の中に、「注意に関する困難」と「衝動や落ち着きにくさ」という、性質の異なる2つの道筋があるということです。
そしてそれぞれに結びついているものが違うため、支援の方向も変わってきます。
注意が続きにくい子には、学習のつまずきを早めに見つけ、細かく区切った課題調整や集中しやすい環境づくりが助けになります。
一方、衝動性が強い子には、睡眠のリズムを整える工夫や、行動の切り替えをサポートする声かけ、そして感情の波を小さくするための関わりがより重要になります。

また、年齢とともに落ち着きが出てくる子もいれば、注意の困難が長く続く子もいます。
「この子はずっとこのままなのだろうか」と不安を感じる親御さんも多いですが、研究が示すのは「育ち方のパターンはそれぞれであり、どの子にもその子に合った支え方がある」ということです。

今回の研究はひとつの病院での調査であり、睡眠は家庭での観察をもとにした評価であるため、細かい睡眠のリズムそのものを測ったわけではありません。
それでも、「注意」と「衝動」はまったく別の要素とつながっており、年齢、睡眠の質、日中の行動、そして“考える力”が複雑に組み合わさっていることを示した点で、大きな意味があります。

ADHDのある子どもは、決して“努力していない”わけではありません。脳の中で起きていること、体のリズムの問題、周りの環境との相性――多くのものが少しずつ影響し合っています。

家庭や学校で接していると、「なぜ?」と感じる行動の裏側には、このような多層的な理由があり、子ども自身が最も困っていることも少なくありません。

この研究のように、症状の“中身”を分けて理解することで、子どもに合わせたサポートがより見つけやすくなるはずです。
私たち大人ができることは、子どもの行動の奥にある「理由」を知り、その子に合ったかかわり方を選んでいくこと。
ADHDを持つ子どもたちが、自分のペースで学び、遊び、成長していけるように、その子の強さとつまずきを一緒に見つけていく姿勢が大切だと、この研究は静かに教えてくれます。

(出典:Frontiers in Psychiatry DOI: 10.3389/fpsyt.2025.1658202)(画像:たーとるうぃず)

>年齢とともに落ち着きが出てくる子もいれば、注意の困難が長く続く子もいます

>育ち方のパターンはそれぞれであり、どの子にもその子に合った支え方がある

あせらず、気長に考えていただきたいと思います。

ADHDの子どもの学びに必要なのは「自由」と「寄り添い」

(チャーリー)

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