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自閉症の診断と睡眠時間の関係を6万人超のデータで調べた研究

time 2025/12/19

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自閉症の診断と睡眠時間の関係を6万人超のデータで調べた研究

この記事が含む Q&A

自閉症と睡眠の関連はどのように示されていますか?
年齢に合った十分な睡眠がとれている子どもは、自閉症と診断される可能性が約22%低いとされますが、因果関係は確定していません。
性別や体格指数の影響はどう解釈できますか?
男の子は女の子より自閉症診断リスクが高いものの、十分な睡眠がとれている場合にはリスクが低くなる傾向があり、やせている子どもで睡眠の効果が特に顕著でした。肥満・過体重では睡眠の差は大きく見られませんでした。
研究の限界は何ですか?
睡眠時間や診断情報が保護者回答に基づく一時点のデータであり、長期的な因果関係を検証する追跡研究が必要です。

夜、なかなか寝つけない。
夜中に何度も目が覚める。
朝、学校に行く時間になっても体が動かない。

自閉症のある子を育てている親にとって、「睡眠の悩み」はとても身近なものです。本人にとっても、眠れない夜が続くことは、翌日の疲れや不安、集中のしづらさにつながりやすく、生活全体に影響します。

一方で、「自閉症だから眠れないのは仕方がない」「睡眠の問題は結果であって原因ではない」と感じている人も多いかもしれません。
今回紹介する研究は、そうした見方に対して、少し違った角度から光を当てています。

この研究は、「年齢に合った十分な睡眠がとれているかどうか」と「自閉症の診断」との関連を、アメリカ全体を代表する大規模なデータを用いて調べたものです。
研究を行ったのは、アメリカのフロリダ州立大学ヘルス校、ミシシッピ大学医療センター(精神医学・人間行動学部、予防医学部)、南ミシシッピ大学医療専門職学部の研究チームです 。

研究で使われたデータは、2022〜2023年に実施された「全米子ども健康調査」です。
6〜17歳の子ども63,866人が対象となっており、家庭の状況や健康状態について、保護者が回答しています。

ここで研究チームが重視したのが、「年齢別十分睡眠」という考え方です。
これは、アメリカ睡眠医学会が示している「年齢ごとに必要とされる睡眠時間」を満たしているかどうかを指します。
6〜12歳では1日9〜12時間、13〜17歳では8〜10時間。この範囲内で睡眠がとれている場合を「十分な睡眠がとれている」と定義しました。

自閉症の診断については、「医師などの医療専門職から、自閉症と診断されたことがあるか」という質問への回答をもとに判断しています。

まず、全体の結果を見てみると、調査対象の子どもの約4.4%が自閉症と診断されていました。
そして、年齢に合った十分な睡眠がとれていない子どもでは、自閉症と診断されている割合が5.16%でした。
一方、十分な睡眠がとれている子どもでは4.05%でした。

数字だけを見ると小さな差に感じられるかもしれません。
しかし、年齢や性別、人種、体格指数といった要因を統計的に調整したうえでも、十分な睡眠がとれている子どもは、自閉症と診断される可能性が約22%低いという結果が示されました。

この結果は、「睡眠が足りないと自閉症になる」という意味ではありません。
研究チームも因果関係については慎重な立場をとっています。
ただ、睡眠が自閉症と無関係ではない可能性を、非常に大きなデータで示した点が重要です。

性別ごとの分析も行われました。
もともと自閉症は、男の子の診断率が女の子より高いことが知られています。
この研究でも、男の子は女の子より約2.6倍、自閉症と診断されやすいという結果でした。

そのうえで、睡眠との関係を見ると、男の子でも女の子でも、十分な睡眠がとれている場合には、自閉症の診断率が低い傾向が確認されました。とくに男の子では、その関連がやや強く表れていました。

さらに研究チームは、体格指数との組み合わせにも注目しました。
標準体重の子どもと比べて、やせている子どもや肥満の子どもでは、自閉症の割合が高い傾向が見られました。

興味深いのは、やせている子どもの場合、十分な睡眠がとれていると、自閉症と診断される可能性が明確に低くなっていた点です。
一方で、肥満や過体重の子どもでは、睡眠の十分さによる大きな違いは確認されませんでした。

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研究チームは、こうした複数の要因がどのように組み合わさっているのかをより直感的に理解するため、機械学習を用いた分析も行っています。
その結果、最も強く影響していたのは性別であり、次いで睡眠の十分さ、年齢、体格指数が重要な要因として浮かび上がりました。

とくに、自閉症の診断リスクが最も高いグループとして示されたのは、「12歳以下の男の子で、年齢に合った十分な睡眠がとれておらず、体重が標準から外れている子ども」でした。
一方で、十分な睡眠がとれていて、体重が標準範囲にあり、年齢が高い子どもでは、診断リスクが低い傾向が見られました。

この研究が示しているのは、「自閉症の特性は変えられないものが多い一方で、睡眠のような生活の要素は無視できない関連をもっている可能性がある」という視点です。
自閉症の原因が睡眠にあると結論づけることはできませんが、睡眠が発達や心身の状態と深く結びついていることは、研究全体から一貫して示されています。

研究チームは最後に、この研究の限界についても述べています。
睡眠時間や診断情報は保護者の回答に基づいていること、一時点の調査であるため時間的な前後関係が分からないことなどです。
そのため、今後は長期間にわたる追跡研究が必要だとしています。

それでも、この研究は、自閉症のある子どもや家族が日々直面している「眠れない」「生活リズムが整わない」という現実が、単なる付随的な問題ではなく、発達や診断と結びついた重要なテーマである可能性を示しています。

自閉症とともに生きる日常の中で、睡眠は見過ごされがちですが、今回の研究は、その意味を改めて問い直す材料を提供しています。

(出典:Journal of Autism and Developmental Disorders DOI: 10.1007/s10803-025-07175-2)(画像:たーとるうぃず)

うちの子も小さな頃は本当に眠りませんでした。

私もへろへろになっていることがよくありました。

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かつてはそんな気持ちでずっとそうしていましたが、メラトニンや薬を飲むようになってからはよく眠るようになりました。

私も眠れるようになっただけでなく、昼間の本人の活動も良くなり、笑顔も増えました。

医師に相談し、処方されるのであれば、無理せずに薬を利用したほうがいいと、今の私は思います。

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(チャーリー)

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