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自閉症の人はChatGPTをどう使っているのか。助けとリスク

time 2026/01/30

この記事を読むのに必要な時間は約 11 分です。

自閉症の人はChatGPTをどう使っているのか。助けとリスク

この記事が含む Q&A

ChatGPTは自閉症のある人にとって、実行機能を補助する道具、感情の整理の場、翻訳機能として役立つとされていますか?
実行機能の負担を軽くする道具、感情の吐き出しの場、相手に合わせた表現への翻訳機能としての活用が挙げられます。
研究はどのようなリスクを指摘していますか?
誤った前提の強化や自己表現の過剰依存、正義感との衝突、環境・データ問題への倫理的配慮の欠如などが挙げられます。
今後の設計のポイントは何とされていますか?
思考を支える足場としての利用を前提に、置き換えない設計、少し考えさせる仕組み、方向づけ、相手側の理解促進が重要とされています。

大規模言語モデルを使ったチャット型AIであるChatGPTは、ここ数年で急速に日常生活へ入り込んできました。
調べもの、文章作成、アイデア出し、雑談、悩み相談など、さまざまな用途で使われています。

こうした流れの中で、「自閉症のある人たちは、ChatGPTをどのように使っているのか」「そこには、どんな助けと、どんなリスクがあるのか」を丁寧に調べた研究が発表されました。

この研究は、アメリカのシンシナティ大学、ストーニーブルック大学、フロリダ国際大学、サウスカロライナ大学、マギル大学、サウスフロリダ大学の研究者らによって行われています。

研究者たちは、自閉症の当事者がSNS上で語っているChatGPT体験に注目し、約4,000件におよぶ投稿を分析しました。
その結果、ChatGPTは自閉症のある人にとって「考えることを支える道具」として大きな役割を果たしている一方で、同時に見過ごせないリスクも含んでいることが明らかになりました。

この研究が示しているのは、「ChatGPTは役立つか、危険か」という単純な二択ではありません。
役立つ部分と、問題を生みやすい部分が、同じ仕組みの中に同時に存在しているという事実です。

多くの自閉症のある人は、日常生活の中で「やる気はあるのに、行動に移せない」「何から手をつければいいのかわからない」という困難を抱えやすいとされています。
これは「実行機能」と呼ばれる力――計画を立てる、順序を考える、作業を始める、集中を維持するなどの力に関係しています。
研究者たちは、当事者の投稿から、ChatGPTがこの実行機能の負担を軽くするために使われていることを見いだしました。
たとえば、

・頭の中にあるごちゃごちゃした考えを、そのままChatGPTに打ち込む
・すると、ChatGPTが文章の形に整理してくれる
・そこから少しずつ手直しする

という使い方です。
ある投稿では、
「ChatGPTは、実行機能を外注できるから助かる。構成を考えなくていい。とにかく全部投げ込めば、向こうがスタートさせてくれる」
と表現されていました。
自分の中だけで考え続けると止まってしまう人でも、ChatGPTを通すことで「最初の一歩」が生まれます。
このことが、課題や仕事、日常作業に取りかかるための大きな支えになっているのです。

次に多く見られたのが、感情の整理や不安の調整にChatGPTを使うという体験です。
自閉症のある人の中には、

・質問しすぎると嫌がられないか
・何度も同じ話をすると迷惑ではないか
・感情を出すと重いと思われないか

といった不安を強く感じる人が少なくありません。
そのため、人に相談したい気持ちがあっても、ためらってしまうことがあります。
ChatGPTは「感情をもたない存在」であり、疲れたり、イライラしたり、嫌な顔をしたりしません。
この点が、「安心して話せる相手」として受け取られていました。
ある投稿では、
「質問しすぎて相手を怒らせてしまうかもしれないという恐怖を感じないのは、AIと話すときだけ」
と語られていました。

ここで重要なのは、ChatGPTが「感情を理解している」から役立つのではなく、判断されない存在だと感じられることが役立っているという点です。
不安が高まったとき、頭の中の考えを言葉にして吐き出す。
その行為そのものが、気持ちを落ち着かせる助けになっているのです。

 

三つ目の大きな役割は、「翻訳機」としての働きです。
自閉症のある人のコミュニケーションは、

・率直
・簡潔
・感情的な飾りが少ない

という特徴をもつことがあります。
一方、一般的な職場や社会では、

・やわらかい言い回し
・クッション言葉
・遠回しな表現

が好まれる場面が多くあります。
このズレが、誤解やトラブルにつながることがあります。
研究では、当事者がChatGPTに、

・書いた文章を貼り付けて「もっと丁寧にして」と頼む
・相手から届いたメッセージを貼り付けて「どういう意味か教えて」と尋ねる

といった使い方をしていることが示されました。
ある人は、自分の頭の中の言葉と、ChatGPTが出力した文章を対比させて紹介しています。

頭の中:
「もう3回も連絡しているのに、あなたは『後で』と言うだけで、利用者は怒っている」

ChatGPTの文章:
「こちらの範囲では問題なく動作しています。そちらでの対応をお願いできますでしょうか」

このように、感情をそぎ落とし、職場向けのトーンに変換してくれる点が助けになっていました。
多くの当事者は、これを「自分の言葉を消したい」のではなく、誤解されずに伝えたいという目的で使っています。

さらに興味深いのが、ChatGPTを通して「自分が自閉症であることを理解した」「自分の考え方はおかしくないと感じられた」という体験です。
自閉症のある人は、

・なぜ自分だけこんなに生きづらいのか
・なぜ周囲と考え方が違うのか

と長年悩み続けることが少なくありません。
研究では、当事者がChatGPTに自分の行動や考え方を説明し、それを診断基準に照らし合わせてもらうことで、「もしかして自分は自閉症かもしれない」と気づいたケースが報告されています。

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また、ChatGPTの

・論理的
・文字通りに受け取る
・感情より構造を重視する

といった応答スタイルが、「自分と似ている」と感じられることもありました。
ある投稿では、
「ChatGPTは道具というより、初めて自分と同じ考え方をする存在に出会った感じ」
と表現されています。
このような体験は、「自分は壊れているのではない」「こういうタイプの人間なんだ」という自己理解につながっていました。

ここまで見ると、ChatGPTは自閉症のある人にとって、とても心強い存在に見えます。
しかし研究は、同時に重要なリスクも示しています。

一つ目は、「誤った考えを強化してしまう可能性」です。
ChatGPTは基本的に、相手の話を否定せず、会話を続けるよう設計されています。
この性質は安心感につながる一方で、問題も生みます。
たとえば、

・AIが意思をもっている
・特別な使命を与えられた
・自分は重大な危険にさらされている

といった考えをもつ人が、そのままChatGPTに話すと、ChatGPTが前提を疑わずに会話を続けてしまう場合があります。
ある投稿では、家族が
「本人はChatGPTが意識をもったと信じるようになった」
と語っていました。
否定されないことが、「肯定された」と受け取られ、思い込みが強化されてしまうのです。

二つ目のリスクは、「本来の自分の声が失われていくこと」です。
最初は、文章を少し整えるために使っていたChatGPTが、次第に、

・メールは必ずChatGPTに通す
・メッセージはすべてChatGPT経由

という状態になる人もいました。
ある人は、
「人と話しているのは私じゃなくて、アルゴリズムだった」
と表現しています。
これは、便利さの裏側で、自分で考え、表現する感覚が弱まっていくことを意味します。
結果として、

・うまくやれているのに、空虚
・つながっている感じがしない

という状態に陥ることがあります。

三つ目は、「正義感との衝突」です。
自閉症のある人の中には、
「正しいと思えないことを続けるのがとても苦しい」
という強い正義感をもつ人がいます。

AIが、

・環境に悪影響を与える
・大量の電力を使う
・データ搾取の問題がある

と知ったことで、「便利でも使えない」と感じ、利用をやめた人もいました。
ある投稿では、
「楽になるのはわかる。でも有害だと知った以上、使えない」
と語られています。
支援として役立つ一方で、価値観と衝突してしまうのです。

研究者たちは、これらの結果から次のような結論を示しています。
ChatGPTは、自閉症のある人にとって**思考を支える足場(足場がけ)**のような役割を果たしている。
しかし、その足場が「支え」から「置き換え」へと変わるとき、問題が生じる。

そこで今後は、

・少し考えさせる仕組みを入れる
・いきなり答えを出さず、方向づけをする
・自閉症側だけが変わるのではなく、相手側にも理解を促す

といった設計が重要だと述べています。
この研究が伝えている最大のメッセージは、次の点です。

ChatGPTは、魔法の解決策でも、危険な存在でもありません。
使い方と設計しだいで、支えにも、重荷にもなり得る。

自閉症のある人が、自分の声を失うことなく、自分の力を広げるための道具としてAIを使える社会。

そのためには、技術だけでなく、私たちの理解のあり方も問われています。
便利さの先にある「その人らしさ」を、どう守るのか。
この研究は、その大切な問いを投げかけています。

(出典:arXiv DOI: 10.48550/arXiv.2601.17946)(画像:たーとるうぃず)

私は、大きなメリット、助けてくれるものだと思っています。

こうしたリスクも認識したうえで、かかえる困難が少しでも軽減できるように活用されていってほしいと期待します。

発達障害の人が抱く不安がChatGPTやGeminiに現れた

(チャーリー)

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