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自閉症や知的障害の人にとってゲームは楽しくなっているか?

time 2026/02/14

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

自閉症や知的障害の人にとってゲームは楽しくなっているか?

この記事が含む Q&A

ゲームは神経多様性を尊重する文化になっているのか?
回答: 研究はアクセシビリティを文化参加の権利として再定義する必要があると指摘しています。
研究で多かったゲームジャンルと傾向は何ですか?
回答: 全体の約67%が学習支援のシリアスゲームで、パズル約35%・複数ジャンル組み合わせ約29%が目立ち、娯楽ゲームは少ないです。
アクセシビリティの定義と課題は何ですか?
回答: 設計段階から当事者が参加し、調整だけでなく創造的・倫理的・政治的原則を組み込むことが重要で、予測不能性や認知負荷などの障壁低減が課題です。

ゲームは、ただの遊びではありません。

自閉症のある人や知的障害のある人にとって、ゲームは学びの場であり、自己表現の場であり、社会とのつながりの場でもあります。
しかし、その「遊ぶ権利」は、本当に平等に保障されているのでしょうか。

ポルトガルのルゾフォナ大学の研究チーム(Centre for Research in Applied Communication, Culture, and New Technologies/Digital Human-Environment Interaction Lab など)が発表した研究は、2014年から2025年までに発表された48本の実証研究を分析し、「神経発達の違いをもつ人にとって、ゲームのアクセシビリティはどのように研究されてきたのか」を体系的に整理しました。

このレビューが問いかけているのは、単に「ゲームを使って何を訓練できるか」ではありません。
もっと根本的な問いです。

「ゲームは、神経多様性(ニューロダイバーシティ)を尊重する文化になっているのか」

 

ニューロダイバーシティという考え方は、脳の違いを「障害」ではなく「人間の自然な多様性」ととらえます。
自閉症やADHD、ディスレクシアなどは「治すべき異常」ではなく、「異なる認知スタイル」と考える立場です。

この視点から見ると、ゲームのアクセシビリティとは、単なる機能追加ではありません。
それは「文化への参加の権利」に関わる問題になります。

研究チームは、48本の論文を分析した結果、いくつかの重要な傾向を見いだしました。

まず、ゲームの多くは「シリアスゲーム(教育・訓練目的のゲーム)」として設計されていました。
全体の約67%が、学習支援や認知トレーニングなど「何かを改善する目的」で作られていたのです。

娯楽としてのゲームは、ほとんど研究対象になっていませんでした。
つまり、神経発達の違いをもつ人は「楽しむプレイヤー」ではなく、「訓練される対象」として扱われることが多いということです。

さらに、アクセシビリティの定義そのものを明確に示していた研究は、わずか4本しかありませんでした。
ほとんどの研究では、「アクセシビリティとは何か」が理論的に整理されないまま、機能の追加や調整が行われていました。
たとえば、

・難易度を調整できる
・文字サイズを変えられる
・色やコントラストを変更できる
・音声フィードバックを追加する

といったカスタマイズ機能が、もっとも多く実装されていました。

しかし、研究チームは指摘します。
アクセシビリティが「設定の調整」にとどまっている限り、それは技術的な対応であって、文化的な包摂とは言えないのではないか。
また、ゲーム内で報告されたバリア(障壁)は多面的でした。

・認知負荷が高すぎる
・時間制限が強い
・操作が複雑
・視覚や音の刺激が過剰
・難易度が固定されている
・暗黙のルールが理解しづらい

こうした要素が、自閉症や知的障害のある人にとって大きな負担になっていました。
とくに「予測不能性」や「時間的プレッシャー」は共通した課題として挙げられていました。

興味深いのは、ゲームジャンルの偏りです。

最も多かったのはパズルゲーム(約35%)でした。
次に、複数ジャンルを組み合わせたものが約29%。アクションやRPGはほとんど扱われていませんでした。

パズルは構造が明確で、段階的に難易度を調整しやすいため、研究対象として選ばれやすいのでしょう。
しかしその結果、ゲーム体験が「認知トレーニング」に偏ってしまう傾向があります。

娯楽としての大作ゲームやオンラインゲームにおけるアクセシビリティは、ほとんど研究されていませんでした。

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もう一つの重要な結果があります。
48本のうち、神経発達の違いをもつ人が「共同デザイナー」として参加していた研究は、わずか3本しかありませんでした。
約半数はプレイテスターとしての参加にとどまり、14%はほぼ受動的な参加でした。

つまり、多くのゲームは「当事者のために」作られていても、「当事者と一緒に」作られているわけではなかったのです。
研究チームは、この点を強く問題視しています。
本来、ニューロダイバーシティの立場では、当事者は専門知識をもつ存在です。認知のあり方や感覚の特性について、最も深い理解をもつのは本人たちだからです。

しかし、ゲーム研究ではまだ、測定や評価が中心で、「意味」や「体験」の側面が十分に扱われていませんでした。
このレビューは、アクセシビリティを次のように再定義する必要があると提案しています。
それは、

・創造的原則
・倫理的原則
・政治的原則

としてのアクセシビリティです。
つまり、アクセシビリティは「後付けの調整」ではなく、最初からデザインの中心に置くべきものだという考え方です。
研究チームは、今後の課題としていくつかの方向性を示しています。

まず、診断カテゴリーに依存しすぎない枠組みの構築。
次に、長期的な影響を追跡する研究の不足。
さらに、エンターテインメント分野への拡張。
そして、当事者参加型デザインの本格的導入。

特に強調されているのは、「遊ぶ権利(right to play)」という視点です。

ゲームは治療器具ではありません。
それは文化であり、表現であり、関係性をつくる場です。
もしアクセシビリティが「能力の補正」にとどまるなら、それはニューロダイバーシティの理念とはずれてしまいます。

 

ゲームが本当に包摂的になるためには、

・調整可能であること
・予測可能であること
・感覚過敏に配慮すること
・多様なプレイスタイルを認めること
・物語や表現に当事者の声を反映すること

が必要になります。
そして何より、「設計の段階から参加していること」が重要だと、この研究は示しています。

アクセシビリティは、特別な人のための特別な機能ではありません。
それは、すべてのプレイヤーの創造性を広げる設計思想です。
ゲームの世界は、まだ変わり始めたばかりです。
しかし、このレビューが示したように、変化の方向は見えています。

それは、修正ではなく共創へ。
調整ではなく文化へ。
支援ではなく対話へ。

ゲームが、神経の多様性を前提にした文化になるとき、そこでは「普通」の定義そのものが変わるのかもしれません。
そしてそのとき、アクセシビリティは機能ではなく、当たり前の前提になっているはずです。

(出典:Disabilities DOI:10.3390/disabilities6010018)(画像:たーとるうぃず)

たしかにそうです。

これまでの研究で見てきたのは、あまり、楽しそうじゃないゲームが少なくありませんでした。

多様な人たちに多様な楽しみを与えてくれる、ゲームのますますの発展に期待しています。

自閉症、ADHDなどの人たちが友人を作れる専用ゲームスペース

(チャーリー)

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