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帝王切開で生まれると発達障害になりやすい。それは間違い

time 2019/08/29

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

帝王切開で生まれると発達障害になりやすい。それは間違い

2000万人以上の出産のデータを用いた新しい研究では、帝王切開分娩が子どもの自閉症スペクトラム障害(ASD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)に関連していることを発見しました。

しかし、この研究は帝王切開分娩が自閉症やADHDの原因だと示すものではありません。
これは相関関係であり因果関係ではない研究結果の例になるものです。

発達障害である自閉症とADHDは、行動の発達に明確な違いが現れるもので、脳のネットワークの違いによるものと推測されています。

自閉症では社会的およびコミュニケーションの発達に影響を与えます。
ADHDでは注意を制御および指示する能力に影響します。

脳が異なって発達する正確な原因は明らかになっていません。
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遺伝的要因、環境的要因、それらについての役割を理解するのに役立つ双子での研究によれば、自閉症もADHDのどちらも遺伝的要因が影響していることが示されています。
しかし、これらの研究は妊娠中の細菌やウィルス感染など環境的要因も影響している可能性も示しています。

帝王切開分娩と自閉症との関係は20年近く前からよく知られています。
ADHDとの関連はそれほどではありません。

”the journal JAMA Network Open”に掲載された今回の研究は、これまでに行われた研究について分析を行った「メタ分析」です。

その結果は帝王切開分娩と自閉症やADHDとの強い関連を示すものでした。

メタ分析の対象となった研究データをあわせると2000万人以上のデータとなります。
帝王切開で生まれた子どもは、幼児期に発達障害の自閉症やADHDと診断される確率が増加していました。
帝王切開で生まれた子どもは自閉症と診断される可能性が1.33倍、ADHDと診断される可能性は1.17倍となっていました。

しかし、子どもたち全体では自閉症と診断される確率は1パーセントです。

全体での確率は1パーセントであったに対し、帝王切開で生まれた子どもでは1.33パーセントだったというのは意味があるものとはいえません。
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また、こうした調査結果では気をつけなければならない誘惑があります。

帝王切開で生まれたということと、自閉症やADHDと診断されたということを、原因と結果として考えたくなるのです。

しかし、単純な答えを求める私たちの欲求には注意しなければなりません。

今回のメタ分析での研究では、疫学のアプローチがとられています。
疫学は、一人ではなく、人の集団を対象として、病気の発生原因や予防などを研究する学問です。
疫学研究は、大規模な集団を調査して、特定の要因で特定の病気になることが偶然と考えられるよりも多く一致するパターンを見つけようとするものです。

この疫学を用いれば、自閉症またはADHDの人は帝王切開で生まれていた可能性が高いという観察結果を見出します。

しかし疫学では、ある要因(帝王切開分娩)が別の要因(ADHDまたは自閉症)を引き起こすかどうかを判断することができません。

その理由は二つあります。

まず、全く別の要因がこの関連付けに影響している可能性があることを排除できません。

たとえば、帝王切開は、肥満や高齢、喘息などの免疫疾患をかかえる妊婦に多く行われることが知られています。
これら、肥満や高齢、喘息などの免疫疾患などの要因それぞれが、自閉症の子どもを持つ可能性の増加とも関連しているとも考えられます。
むしろそれらのほうが帝王切開よりも、発達障害との関係がある可能性が高いと考える人もいるでしょう。
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二つ目の理由は、疫学研究ではそうなる「メカニズム」、つまりこうした関連が生まれる生物学的説明を提供できないことです。

「帝王切開で生まれた子どもは自閉症になる確率が高い」と考えた場合、
その理由を説明するには、帝王切開で生まれた新生児と自然分娩の新生児との生物学的違いをまず研究調査し、そして違いがあるのなら、それがどうやって発達障害につながるのかを研究しなければなりません。
そして、その研究から強力な証拠が得ることができなければ、科学的な根拠をもって帝王切開と発達障害との因果関係を結論付けることができません。

今回の研究では、帝王切開分娩と自閉症とADHDとの間に統計的関連があると結論付けられました。
しかし、それは関連があるということだけを教えてくれるのみです。

このような関係性がある理由は不明なままです。
そして、帝王切開で生まれたということだけでは、自閉症やADHDを発症する子どもの確率推定には使えないことはほぼ確実です。

帝王切開分娩よりも、遺伝的な要因と子宮内における環境的な要因との相互作用が脳の発達に影響を与えていると考えるのが正しいでしょう。

(出典:米THE CONVERSATION)(画像:Pixabay

帝王切開との関係は私は考えたこともありませんでしたが、

①AであるとBであることも多かった = 相関関係

②AだからB = 因果関係

今回の研究とその結果はしっかりとしたものであるものの、①と②は違うので、間違った理解をしないようにという話でした。
エセ科学では、科学的であることを装い、そして多くは①を②のように使います。気をつけて頂きたいと思います。

相関と因果を考えさせる私の好きなネタを。

【問題】これはなんでしょうか?

・がんで亡くなった方の95%が生まれてからこれをほぼ毎日、数時間おきに摂取していた。
・自殺した人の70%に、自殺行動を起こす前の24時間以内にこれを摂取していたことが認められた。
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【答】「お米」
発達障害を引き起こす原因について科学的に現在わかっていること

(チャーリー)


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