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「重度自閉症」というレッテル。その一般化が求められる理由

time 2021/12/09

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

「重度自閉症」というレッテル。その一般化が求められる理由

レッテルは人を悩ませるテーマです。
レッテルは不適切に使用されると、人を誤って表現したり、人間性を奪ったりします。

私、アリソン・シンガーは自閉症の子どもを持つ母親として、娘に傷つくような不正確なレッテルが貼られているのを何度も目にしてきました。
しかし一方、正確なレッテルを使うことで、自閉症の人たちの生活が劇的に改善されることもあります。

私が今、注目している具体的なレッテルは、“profound autism” 「重度自閉症」というものです。
自閉症の研究者や支援者の間では、このレッテルを使う人が増えています。

“Lancet”誌で、私もメンバーとして参加している「自閉症におけるケアと臨床研究の将来に関する委員会」の特別報告書を発表しました。
この報告書の中で、何人かの同僚と私は、自分で話すことができない人たちのニーズを強調するために、その「重度自閉症」という言葉を紹介しています。

「重度自閉症」という言葉は、生涯を通じて24時間のサポートが必要となる可能性が高い自閉症の人を表すことを目的としています。

このレッテルを導入する目的は、非常に幅広い自閉症スペクトラムをより具体的に示すことで、親やサービス提供者、そして一般の人々に、自閉症の人が必要な支援を受けられるようにするために必要な、言葉を提供することです。

重度自閉症のように簡潔で意味のある言葉は、適切なケアを決定するプロセスを簡素化し、より迅速で強力な支援を可能にします。

自閉症の支援者として、また24歳の重度自閉症の娘を持つ母親として、私はこの用語を適切に適用することで、多くの人たちの生活に良い変化をもたらすと確信しています。

自閉症の診断には、同じものはありません。
自閉症の人の中には、破壊的な行動や自傷行為をする人もいれば、そうでない人もいます。
知的障害のある人もいれば、優等生の人もいます。
また、歯磨きや着替えなどの基本的な作業ができない人もいれば、完全に自立した生活を送れる人もいます。

Lancet誌の委員会報告が発表される数日前、米国疾病対策予防センターは自閉症の割合が再び増加していることを発表しました。

8歳児のうち、44人に1人が自閉症と診断されており、CDCが2020年3月に54人に1人と推測した数字よりも増加しています。

CDCの報告によると、自閉症の8歳児の58パーセント以上が知的障害または境界域の知的障害を持っています。
この診断数の増加により、幅広い自閉症スペクトラムに、より特異性を持たせる必要性が特に緊急に感じられます。

私の娘であるジョディは、非常に集中的なサポートを必要とする人たちに医療および特別教育サービスを提供するグループリビング施設に住んでいます。
娘は発作を起こすことが多く、話をしたり、必要なことや欲しいものを表現したり、日常生活のわずかな変化に対応したりといった日常業務をこなすのに苦労しています。

私はまた、両親が重度自閉症の弟のスティーブンを助けるために、直面した多くの困難も目の当たりにしてきました。

娘のジョディが適切な支援を受けるまでの長い道のりは、自閉症を説明するために特定の言葉が必要な理由を示す典型的な例となります。
ジョディは何年もの間、高機能の特別支援学校の生徒と同じ学校生活を送ろうとするプログラムで悲惨な経験をしてきました。
ジョディが成長し始めたのは、住み込みのプログラムを見つけてからでした。

長い間、ジョディのニーズが、メディアでよく描かれる高機能側の人たち(「グッド・ドクター」などの番組の登場人物を思い浮かべてください)とは大きく異なることを知らせるために、私は常に戦わなければなりませんでした

このタイプの自閉症がメディアに多く登場し、高機能の自閉症の人がソーシャルメディア上でそれを助長することが多いため、自閉症であることの意味について誤解が広まっています。

私の家族の日々の苦労は軽減されましたが、社会の多くの人々が、自閉症の人々のニーズや能力がいかに多様であるかを理解していないために、多くの人たちが苦しみました。

今年の初めには、4歳の言葉を話せない自閉症の男の子が、医師の診断書があったにもかかわらず、マスクを着用していないという理由で飛行機から降ろされたことがありました。
息子を擁護した父親は、息子の自閉症は「障害ではない」と言われたそうです。

自閉症が障害ではないと考える人は、私の娘と一日一緒に過ごすべきです。

レッテルを貼らなくて良いという考え方をする人たちが、生きていくために相当なサポートを必要とする人たちのニーズを伝えることを、ますます難しくします。

目立つ自閉症支援活動は、より自立した個人に焦点を当てています。

そのために、重度自閉症の人たちは忘れられ、誤解されています。

レッテルに反対する人々が提案する解決策。
つまりレッテルを貼らずに自閉症がどのように現れるかを説明することは、ストレスを感じたときに、親が具体的な症状や行動のリストを語ることが常に可能な世界に住んでいる、または一般の人々がこれらの説明に対して常に理想的な反応を示す世界に住んでいることを前提としています。

ランセット誌の委員会の共同議長を務めた米カリフォルニア大学ロサンゼルス校自閉症研究治療センターの精神医学教授であるキャサリン・ロードは、「重度自閉症」のようなカテゴリーを作ることで、さまざまな人たちの異なるニーズに注意を向けることができると述べています。

自閉症を説明するためにレッテルを使用することに抵抗を感じる人にとって、ロードの指摘は理解するために重要です。

「重度自閉症」という言葉は、このグループに属する人を卑下するものでも、そうでない人の経験を無効にしようとするものでもありません。

今回のパンデミックでは、重度自閉症の人には、特別なサポートが必要であるという事実が改めて認識されました。

私が代表を務める自閉症科学財団では、この1年間、新型コロナウィルスに囲まれた世界に適応するために苦労している多くの家族の声を聞いてきました。

彼らの悩みは、マスクの着用や社会的な距離の取り方の問題から、プログラムの閉鎖による延々と続く非構造的な日々、学校の閉鎖やオンライン学習へのアクセスの欠如によるスキルの後退など多岐にわたります。

言葉を話さない自閉症の子どもを病院に連れて行くことを禁止されたという家族の話も聞きました。

私たちは、このような家族が自分たちの子供のニーズを明確に説明できるようにすることを目指すべきです。

「重度自閉症」という言葉を一般化することで、家族が必要なサポートやサービスをより効率的に受けられるようになり、人々が尊厳を持って充実した生活を送るための最良のチャンスを得ることができるのです。

(出典:米STAT)(画像:Pixabay

うちの子は自閉症で知的障害もあり、話すこともできず、ずっと介護が必要です。

そのとおりの「重度自閉症」です。

「発達障害」や「自閉症」をウリにしている人のメディア記事を見るたびに、うちの子が直面している状況とはまったく次元が違うので、いつも遠い距離を感じています。

また、そうした発達障害や自閉症の人や関わる人たちから、うちの子の困難を私よりも知っているふうに言われることがあり、なんとももどかしい気持ちになりました。

知的に困難だったり、話せなかったりして、抱える深刻な困難を伝えられない発達障害、自閉症の人、家族が多くいることも忘れないで頂きたいと願います。

発達障害当事者の私が思う「ニューロダイバーシティ」の問題点

(チャーリー)


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