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米ハーバード大学のニューロダイバーシティ、発達障害の学生事情

time 2021/12/27

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米ハーバード大学のニューロダイバーシティ、発達障害の学生事情

インクルーシブで多様性のあるキャンパスを目指す中でも、ニューロダイバーシティ/神経多様性は見過ごされがちです。
多くの学生は、同級生の中にニューロダイバージェントがいることに気づかないまま、あるいは自分自身がニューロダイバージェントであることに気づかないままかもしれません。

米ハーバード大学では神経多様性のある学生は、しばしば不利な立場に立たされることがあります。
そうした経験からハーバード大学のキャンパスは変化を求められています。

神経多様であることは、社会的引きこもりや感覚の問題といった神経多様性の症状を容易に悪化させ、時には神経多様性の根本的な状態を露呈する行動パターンを呼び起こすことさえあります。
例えば、24歳のクリスティン・キングは高校時代にADHDと診断され、大学の1年目には自閉症と診断されました。
クリスティンは、ハーバード大学のキャンパスで生活することで、自分がニューロダイバージェントであることを自覚しました。
ハーバード大学が「完全に一人になることも、自分だけの空間を持つこともできない」「圧倒的な環境」となり、自閉症の症状や経験を悪化させることになったといいます。

ニューロダイバーシティの診断は、学生が自分自身のニーズを理解するのに役立ちますが、それを開示したときにどのように受け取られるかに影響を与えることもあります。

デンマーク出身の25歳のニーナ・スコフ・イェンセンは、8歳のときに自閉症とADHDの診断を受けています。
自分の障害を公表しているにもかかわらず、彼女は大学受験の際には自分の状態を開示することを躊躇しました。

「多くの人がすごく受け入れてくれる一方で、まったく事実でないことを推測されるので、オープンにするのはかなり気が引けます。
障害者のレッテルは、かなり定義的であるひどい傾向があります。
例えばデートをしようとなると、障害者であれば、セクシーであると見なされません」

ハーバード大学の学問的、社会的環境は、学習とコミュニケーションに関して、理想的な発達をした人向けに設計されています。
ニューロダイバージェントの学生にとって大学での経験がどのように異なるかを十分に考慮されてはいません。
そのため、ニューロダイバージェントの学生が適合しようとしなければなりません。

自閉症であることをオープンにしたことで、スコフ・イェンセンはハーバード大学の他のニューロダイバージェントから多くのメッセージを受け取りました。

「他にもいるだろうとは思っていましたが、こんなにたくさんいるとは思っていませんでした。
ハーバードにはかなりの数の未診断の自閉症の学生がいるのではないかという疑念を持っています」

ニューロダイバージェントの人の多くは、学校での成績が良く、クラスでも優秀で、ハーバード大学の学生の典型的な特徴であるので、ハーバード大学には意外と多いということもありえます。

クリスティンはそのような生徒の一人です。
自分がニューロダイバージェントであることを理解すると、ハーバードを全く違う角度から見るようになったそうです。
それまでクリスティンは、ハーバード大学が「難関大学」であるために、単に苦労しているのだと思っていました。
しかし、クリスティンはこの苦労が他の理由によるものであることに気づきました。
ハーバード大学がニューロダイバージェントの学生の試練を過小評価するのは、ハーバードが「難関」を示すためであり、エリート教育機関であることを理想としているためだと。

「私は他の人と同じように学ぶことができなかったので、困難でした」

授業が難しく、苦労することはよくあることですが、ニューロダイバージェントの学生はさらに大きな困難に直面します。
ハーバード大学は、大学の教育内容に対応できると考える成績優秀な学生を入学させます。
しかし、そうした中にニューロダイバージェントの学生がいて、勉強に関して異なるニーズを持っていることをわかっていません。

そのため、正しい診断を受けることで、多くの学生が自分のニーズをよりよく理解し、新しい環境への移行をスムーズにする効果的な支援を受けられるようになるかもしれません。
一方で診断を受けずに大学に行けば、彼らの経験にマイナスの影響を与える可能性があります。

クリスティンは来年度から休学します。自分のニューロダイバーシティがその決断に影響を与えました。
まず、オンライン学習は自閉症に優しくないと考えています。
次に、入学1年目は本当に負担が大きかったと感じたからです。
思い描いていたようにはいきませんでした。
それは、自分の自閉症のためだと考えています。

こうしてニューロダイバーシティは大学での体験に悪影響を及ぼす可能性があります。
しかし一方で、そうであることが、出願者の人生全体のストーリーが考慮される出願においては、ニューロダイバーシティのある人生経験は、その人を目立たせる可能性もあります。

ハーバード大学の配慮はニューロダイバージェントの学生の成功にとって極めて重要なものです。
スコフ・イェンセンは、ハーバード大学が行うようになった取り組みにポジティブな驚きを感じています。

「ハーバードには複数のアドバイザーがいるなど、多くのサポートリソースがあります。
予測可能性や構造が重要な場合にはとても助かります。
ハーバードでの生活をより快適にすることに純粋に関心を持っているAEOという存在にはとくに助けられます。
私が実際に必要とする支援のすべてを疑うことなく、完全に満たしてくれました。
私が知らなかったサポートについても、ハーバード大学での生活に非常に役立つかもしれないと教えてくれましたた」

しかし、まだ改善の余地はあります。
自閉症の人は予測可能性や構造を非常に好むため、スコフ・ジェンセンもAEOの活動が役立っていると考えているものの、基本的なことができていないと感じることもあります。

「授業が始まる直前まで来ません。

重要なことをすぐに決めなければならないことに不安を感じてしまう私には、それではあまり助けになりません。
ハーバードでは短い期間にしかチャンスがないことが多いので、適切なサポートがなければニューロダイバージェントの学生は見逃す可能性が高くなります。

またハーバードは、入居や授業登録など、私たちが特に苦労するような事柄について、障害のある学生に特別な働きかけをすることもできるはずです」

ニューロダイバージェントの学生は、大学がどのようにすればもっとうまくサポートできるかについて、自分たちの意見を持っています。
たとえば、スコフ・ジェンセンは、ハーバード大学が学生や職員にさまざまな障害について理解できるようになる必要があると考えています。

「理想を言えば、教員は、授業をより利用しやすくするためのトレーニングを受けるべきでしょう。
また、障害のある学生がハーバード大学に直接アドバイスすることも理想的でしょう」

また、大学が障害者であることの意味を身近に感じられるようなイベントを開催し、人々がより受け入れられるような支援を行うことも願っています。

こうした困難な状況にあるにもかかわらず、発達障害の学生たちはキャンパス内にコミュニティを形成しています。
同じような境遇の人たちとのつながりを感じるのに役立っています。
クリスティンはこう言います。

「私は、他の多くのニューロダイバージェントの人たちや、多くの障害者とともにいることができました。
彼らとその経験には感謝しています。
私は、ニューロダイバージェントの学生がハーバードのキャンパスで学生としてだけでなく、リーダーとしてふさわしい発言力を持つようになってほしいと思っています」

ニューロダイバージェントのこのコミュニティは、自分の経験についてオープンに話し合うことができる安全な空間でとなっています。
しかし、社会にはニューロダイバシティに対する否定的な考えはあり、課題となっています。
ニューロダイバーシティに対する固定観念や無知が、ニューロタイプの人たちを避けるように仕向けることがあります。
そうした社会的な偏見は、ニューロダイバージェントたちが自分の違いを恥じるようになる原因になります。
自閉症やADHDに対するある種の否定的なイメージについて、スコフ・ジェンセンはこう言います。

「自閉症やADHDは男性ばかりという固定観念があります。
そのために女性は、自閉症を見落とされたり、他の障害と誤診されたりすることが多くなっています。
現時点では、自閉症の診断を受けた男性の数は女性の約4倍ですが、研究者は、この数字は診断基準の問題やジェンダーバイアスに起因するものだと指摘しています」

クリスティンはこう言います。

「心理学や神経科学のような授業で、病理学的に説明されたり、神経多様性について非常に否定的な感じや見下した調子で話されると、自閉症である自分はその教室にいることがいたたまれなくなります。
これは、ニューロダイバースのコミュニティを孤立させ、広い大学コミュニティの対等なメンバーとして受け入れられていないように感じさせます」

スコフ・イェンセンはこう言います。

「私は、人々が先入観を捨て、私が誰であるかを個人として見る能力を持つことを心から望みます」

(出典:米HARVARD POLITICAL REVIEW)(画像:米ハーバード大学

世界を代表する大学だからこそ、良い例となってほしいと願います。

ニューロダイバーシティなんていう言葉ができる前から、「変わり者」も多くいただろうと思いますし。

Googleと米スタンフォード大が協力。神経多様性取り組み

(チャーリー)


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