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母親の「睡眠時無呼吸症候群」と子の発達障害との関係。研究

time 2022/06/04

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母親の「睡眠時無呼吸症候群」と子の発達障害との関係。研究

近年、妊娠中に母体の免疫系が活性化すると、子どもの発達障害のリスクが高まることを示す証拠が次々と得られています。

少なくとも一部の子どもにおいてはそれが、認知や学習に影響を及ぼす発達の遅れや、統合失調症や自閉症スペクトラム障害(ASD)などのリスク上昇の原因因子である可能性があると考えられるようになりました。

母親の免疫系は、ストレス、ウイルス感染、肥満など、さまざまな要因に反応して活性化することがあります。
これまであまり研究されていない要因として、睡眠時無呼吸症候群がありました。

この病気は、通常妊娠末期の妊婦の15パーセント、ハイリスク妊娠の妊婦の60パーセントが罹患するといわれています。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に繰り返し起こる短時間の呼吸停止(部分的または全体的)を特徴とし、毎晩数百回起こることもあります。
睡眠時無呼吸症候群のほとんどの人は、その発生に気づいておらず、妊娠後期に初めて経験する女性も少なくありません。

睡眠時無呼吸症候群は血液中の酸素濃度を変化させ、間欠的低酸素症と呼ばれる状態を引き起こします。

米ウィスコンシン大学マディソン校のマイケル・E・ケーヒル博士が率いる研究チームによれば、低酸素が「睡眠時無呼吸症候群に関連する罹患のほとんどを引き起こす深い炎症」を誘発する可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群に関連する既知の病的状態には、高血圧、心臓病、肥満、糖尿病などがあります。

ケーヒル博士らの研究チームは、妊娠中の母親の睡眠時無呼吸症候群と子どもの神経異常との関係の可能性や、子供の生涯に渡る行動への影響(もしあれば)を、ラットを用いて研究しました。

ラットの妊娠後期に、酸素濃度10.5パーセントの空気を2分、通常の酸素濃度21パーセントの空気を2分という4分サイクルで8時間以上睡眠させ、間欠的低酸素状態を経験させ、睡眠時無呼吸症候群のモデルとしました。

胎盤は母体の低酸素の直接的影響から胎児を大きく保護します。
そのため、母体が断続的に低酸素状態になっても、胎児が低酸素状態になることはありません。

しかし、真の問題は、妊娠中の低酸素症によって母親の免疫系が活性化されることです。
それによって、胎児の子宮内、あるいは出生後の発達に影響があるかどうかです。

研究チームの実験の結果は劇的なものでした。

妊娠中の母親の断続的な低酸素状態が、胎児の大脳皮質の過接続と機能亢進を強力に誘発することがわかりました。

これは「コミュニケーション、認知、社会的な領域にわたる広範囲な行動異常」をもたらすと考えられます。

また、重要なこととして、研究チームはこれらの変化の大きさと幅は、女性よりも男性で一貫して深刻であることも発見しました。

子どもの行動変化については、出生直後の母子間のコミュニケーションだけでなく、思春期、さらには成体の子どもでは、認知・実行機能障害、社会行動の変化、グルーミング行動(一種の反復行動)の増加などが見られました。
生後の発声の異常はオスにもメスにも見られましたが、それ以外の異常はすべてオスの子どもにのみ見られました。

オスの子どもに見られた神経異常は、シナプスの数が過剰であることと、皮質のシグナル伝達が過敏であることが中心です。
とくにmTOR経路と呼ばれるシグナル伝達経路での変化が顕著でした。

研究者らは、観察されたこの異常を、例えば自閉症スペクトラム障害や統合失調症を引き起こすと仮定される異常とは特に関連づけようとはしませんでしたが、こう述べています。

「我々のデータは、母親の睡眠時無呼吸症候群が、とくに男の子における発達障害の発症の重要な危険因子である可能性を明確に示す証拠となりました」

また研究チームは、観察された神経と行動の異常を持つオスの子どもラットに、ラパマイシンと呼ばれる米食品医薬局が認可している薬を投与しました。
ラパマイシンは、mTOR経路を標的とすることが知られており、この例では、この経路のシグナル伝達の亢進を抑制するように考えられます。
その結果、行動異常が改善しました。

研究チームはこの証拠に基づいて、この薬剤がヒトの自閉症スペクトラム障害の治療薬となる可能性を示唆するものではないが、ラットでの今回の結果は、ある種の脳性疾患においてmTORシグナルを標的とする薬の可能性を示す一助になるものと述べています。

研究チームは、母体の炎症と睡眠時無呼吸症候群に伴う間欠的低酸素症の正確な関係を明らかにするための更なる研究と、人のさまざまな精神疾患に対する、睡眠時無呼吸症候群の影響や因果関係の可能性に関する大規模な研究を行うことを呼びかけています。

(出典:米Brain & Behavior Research Foundation

「妊娠中に母体の免疫系が活性化」

との関連はその他の研究でも挙げられるようになってきています。

さらなる研究が望まれます。

自閉症の原因と考えられること。米コロンビア大の自閉症研究

(チャーリー)


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