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自閉症の程度や症状の違いにつながる遺伝子の変異。2つの研究

time 2022/06/05

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自閉症の程度や症状の違いにつながる遺伝子の変異。2つの研究

自閉症と診断された人たちの間で見られる特徴の大きな違いに、遺伝子変異がどのように関わっているのか。
今回、Nature Genetics誌に掲載された2つの新しい研究がそれについて答えています。

研究を行った、英ケンブリッジ大学のサイモン・バロン・コーヘン研究室のポスドク研究員バラン・ワリアーはこう言います。

「この問題の背景にあるのは、自閉症の不均質性です」

自閉症の中核的な特徴や併存する症状の有無や強さは、自閉症の人それぞれで大きく異なります。

今回の研究は、希少、一般、遺伝性、自然発生といった異なるカテゴリーでの遺伝子変異が、この不均一性にどう関わっているのかを明らかにしようとしたものです。

2つの研究結果を見て、米コロンビア大学のシステム生物学のユフェン・シェン准教授はこう言います。

「2つの研究結果は、方法論の違いから矛盾する部分もありますが、一般変異と稀な変異が自閉症の遺伝子構造に異なる形で寄与しているという証拠を追加しています。

しかし、異なると言っても、白黒つけられるように明確に違うわけではありません。
それらは重なりあいながら、異なる貢献をしているように思えます」

ワリアーの研究では、12893人の自閉症の人の遺伝子と行動データを分析しました。

遺伝子データから破壊的なde novo変異体(親から受け継いだ変異ではなく,ある個体において新しく発生した変異。DNA複製過程のエラーによって生じる)を探し出し、以前に計算した多遺伝子スコア(特定の形質に関連する共通の変異体の総体)を用いて、自閉症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、統合失調症、IQ、教育達成度について調べました。

次に、その変異体や多遺伝子スコアと、社会的困難、同一性へのこだわり、運動技能の問題など、自閉症の中核をなす、あるいはしばしば関連する19の行動との関連を調べました。

その結果、ADHD多遺伝子スコアの高さは、反復行動などの非社会的自閉症特性の増加と関連していました。
教育達成スコアの高さは、高いIQと自閉症の中核的特性の少なさと関連していました。

しかし、破壊的なde novo変異は、自閉症の中核的な特徴とは関連はありませんでした。
この変異を持つ325人は、持たない人に比べて自閉症ポリジェニックスコアが低く、統合失調症、学歴、IQのポリジェニックスコアにも特徴は見られませんでした。
しかし、他の発達障害が併発する傾向は見られました。

一方、自閉症多遺伝子スコアが高い者は、他の発達障害を併発する傾向はありませんでした。

研究チームは、自閉症の女の子は自閉症の男の子よりも破壊的なde novo変異を保有する可能性が高いものの、その変異は、自閉症に関連する遺伝子ではなく、発達遅滞に関連する遺伝子にのみ生じていることを発見しました。

ワリアーによれば、発達障害の発症確率を高めるのは、稀なde novo変異体である可能性がある、そして一般的な変異体もさらに受け継ぐと、自閉症につながる可能性があるといいます。

「この論文で伝えたいのは、自閉症はその中でも違いがあり、その違いが遺伝学研究に影響を及ぼすということです。
自閉症、あるいはあらゆる種類の発達障害を遺伝学で研究する際には、このことを考慮に入れる必要があります」

もう一つの研究は、米カリフォルニア大学サンディエゴ校の精神医学と細胞分子医学のジョナサン・セバット教授の研究チームが、12270人の自閉症の人、5190人の自閉症でない自閉症の人の「きょうだい」、19917人の自閉症の人の親たちから得た全ゲノム配列、エクソーム配列、遺伝子型データを組み合わせて分析し行ったものです。

自閉症、統合失調症、教育に関連する変異を反映した共通変異スコア、de novoミスセンス変異や機能喪失変異、遺伝性機能喪失変異を含む希少変異スコア、そしてそれらのすべてを網羅した複合スコアを調べました。

複合スコアが最も高い人は、スコアが最も低い人に比べて、自閉症である確率が2.2倍高くなっていました。

「今回初めて、希な変異によるリスクを実際に測定し、一般的な変異と合わせて、それらがほぼ自閉症に影響を与えることを示しました」

そうこの研究については、シェン准教授は説明します。

セバット教授の研究チームは、自閉症の女性は、自閉症の男性よりも、希少変異および一般変異のスコアが有意に高いことも明らかにしました。

そして、遺伝子と特性相関の別の解析では、自閉症多遺伝子スコアが高いか、de novo機能喪失型変異を有する人は、社会的困難を抱える可能性が高いこともわかりました。

この結果は、de novo変異と自閉症の中核的形質との間に関連はないとする、ワリアーの研究結果と相反するものだと、シェン准教授は指摘します。
そして、ワリアーの研究チームは、de novoの機能喪失型変異とミスセンス型変異を一緒に解析しましたが、
一方、セバット教授の研究チームはそれらを別々に解析しました。
これがこの相反を説明する可能性があるといいます。

「今後の研究では、個々の遺伝子や遺伝子グループについて調べる必要があります」

(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay

つまり、2つの研究から共通する結果と理解した大まかなことは次です。

・遺伝子の一般的な変異と稀な変異が重なりあいながら、異なる役割を行い、自閉症の違いにつながる

・親から受け継いだ遺伝子の変異ではなく,ある個体において新しく発生した遺伝子の変異、そのなかでも稀なものの影響が大きい

・自閉症の女性のほうが自閉症の男性よりも遺伝子の変異が多い
(※女性のほうが遺伝子変異の影響を受けにくい。「女性の保護効果」と呼ばれたりします)

自閉症の女の子のほうが男の子より遺伝子変異が多かった。研究

(チャーリー)

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