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「ダメな母親」と思っていた私が気づいた、私自身もADHD

time 2025/05/30

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

「ダメな母親」と思っていた私が気づいた、私自身もADHD

この記事が含む Q&A

大人のADHDはどのように診断されるのですか?
専門医による評価と症状の詳細な問診および観察で診断されます。
どうすればADHDの理解や診断を受けやすくなるのですか?
家族で症状や困りごとを正直に伝え、専門家の助言を求めることが大切です。
ADHDの治療にはどのようなものがありますか?
薬物療法と心理社会的支援や行動療法が一般的に用いられます。

デニス・モスは、ほかのお母さんたちと同じように、息子のカイルのことを心配していました。
カイルは学校で集中するのが難しく、課題をやりとげることができませんでした。
いつも動き回ってばかりで何も終わらせられないその様子から、モスは彼のことを「ハチドリ」と呼んでいたそうです。

モスは、子どもたちに自分が子どもだったころには得られなかったような「しっかりと向き合ってくれる母親の存在」を与えたいと思い、専業主婦としての生活を選んでいました。
そして、カイルに何か助けが必要だと感じて、専門家のもとを訪れました。

診断は「注意欠如・多動症(ADHD)」でした。これは、注意の持続が難しかったり、落ち着きがなかったり、衝動的な行動をとったりする発達にかかわる障害です。
その後すぐに、弟のブレイクにも同じ診断が下されました。

54歳のモスは、2人のADHDの息子を持つことになりました。
子どもたちのことをもっと理解しようとする中で、彼女は自分自身の心の中にずっとあった「なぜ私はうまくできないのか」という疑問に向き合うことになります。

きっかけは、ADHDに関する講演会でした。
スライドで「女性に見られるADHDの特徴」が紹介されたとき、モスは「あれも、これも、全部あてはまっている」と思ったそうです。

家では、シンクにお皿がたまり、家事が中途半端になり、鍵を失くすこともよくありました。
専業主婦であるにもかかわらず、日常のタスクをこなすことができなかったのです。
エンジニアである夫は支えてくれていましたが、なぜ妻が「うまくやれないのか」は理解できませんでした。
モスは「私はダメな人間、ダメな母親だ」と感じ、「なぜこんなにも人生が大変なのか」と悩んでいました。

けれども、その講演会の情報がモスに教えてくれたのは、自分が抱えていた苦しさには理由があるかもしれないということでした。
それまで「自分の性格のせい」と思っていた困難の数々が、ひとつひとつ説明されていったのです。
そして彼女は講演のあと、こう自分に問いかけました。「もしかして、私もADHDなの?」

モスのように、長いあいだ説明のつかない生きづらさを感じてきた大人たちが、子どもの診断をきっかけに自分の状態に気づくことがあります。
2018年に『Molecular Psychiatry』に掲載された研究によると、ADHDの約74%は遺伝的な要因に関係しており、家族の中に同じような傾向が見られることが多いとされています。

ジョンズ・ホプキンズ大学医学部の精神医学・行動科学の准教授であるデイビッド・W・グッドマンは、家族の誰かがADHDと診断されたことで、自分のことも理解できるようになったという大人の患者を何人も診てきたと話します。

けれども、大人のADHDは見逃されることが少なくありません。
というのも、子どものような目立った多動ではなく、落ち着きのなさや集中しづらさなど、より微妙なかたちで現れるため、不安やうつといった別の問題と誤解されやすいのです。
また、「現代は誰もが忙しくて疲れているのだから」という思い込みによって、症状が見過ごされたり、本人の努力不足とされてしまうこともあります。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によれば、2023年の時点で、ADHDと診断されたアメリカの成人は推計1550万人。そのうち約半数が、大人になってから診断を受けています。
成人のADHDの割合は過去20年で6.1%から10.2%に増加しています。

グッドマンは、「ADHDの大きな誤解は、『誰でもあること』だと思われてしまうことです」と話します。
たしかに、誰にでもうっかりや忘れ物、集中力の低下はありますが、「ADHDはそれとはちがいます」といいます。

「これは、意志の力でどうにかなるものではありません。集中しようとがんばっても、毎日、終わりのない忘れ物や遅刻、注意の欠如に悩まされます。生活のあらゆる面に影響するのです」

さらにグッドマンはこう指摘します。

「ADHDに気づかずに成長した人たちは、周囲から『だらしない』『やる気がない』『頭が悪い』といった評価をされ続け、それが自己イメージになってしまうのです」

治療を受けていないADHDの大人は、離婚のリスクが2倍になり、経済的な困難や感情の爆発、強いストレスに直面することが多くなります。
仕事についても長続きせず、2年ごとに転職を繰り返す人もいます。

しかし実際には、ADHDのある成人のうち、正確な診断と適切な治療を受けている人はわずか10~25%にとどまっているといわれています。
とくに女性の場合は、診断が遅れたり、抗うつ薬など本来とは異なる治療がされてしまったりすることが多く、これが大きな社会課題となっています。

最近、アメリカのADHD関連学会は、成人のADHD診断に関する初の正式なガイドラインを作成するための特別委員会を設置しました。
グッドマンは、以前からこの分野に関わっており、医療関係者や専門団体向けの診断基準の作成にも取り組んでいます。
成人のADHDに関心を持ち診断を希望する人が増えているにもかかわらず、臨床医の多くがこの世代への理解や対応に十分ではないといわれています。
けれども、専門家は、こうした取り組みが正確な診断と支援につながると考えています。

グッドマンは、「診断がつくことで、自分の中にある困難が『性格の問題』ではなく、『治療が可能な状態』であるとわかる。それが、自己認識に大きな変化をもたらす」と語ります。

モスは、精神科のナース・プラクティショナーと連携し、2023年12月に自身がADHDであるという診断を受けました。
そして、子どものころから自分を苦しめていた「恥ずかしさ」や「自信のなさ」に少しずつ向き合えるようになったと話します。

「ずっと自分はバカなんじゃないかと思っていました。でも、それは自分が努力できなかったからではなく、ADHDの特性によるものだったんです」

いま、モスの息子たちは12歳と14歳。
彼女は、以前とはちがう母親になったと感じています。

モス自身も含めて、3人ともADHDの治療薬を使用しながら、家の中の生活に「意図的な構造」を取り入れています。
たとえば、予定には移動時間も含めて書き込み、色分けした付箋を使って家族みんなでタスクを管理し、部屋の中もすっきり保つようにしているのです。

魔法のように一瞬で全てが解決するわけではありませんが、それでもモスは「ようやく人生が自分の手に戻ってきた」と感じています。
息子たちの状態も安定してきており、夫とは「家族でイタリア旅行に行こうか」という話も出るようになりました。
そんなふうに未来を夢見ることすら、これまではできなかったといいます。

「ワクワクしています。まさか自分が、こんなふうに感じられる日が来るなんて思ってもいませんでした。
正直、ずっと同じことの繰り返しなんだろうってあきらめていたんです。
でも今は、『何ができるかな?』『やりたかったこと、もっと夢を見てもいいんじゃないかな』って、そう思えるようになりました」

(出典・画像:米CBS

その調子で、ますます家族楽しく過ごせるようになることを願っています。

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(チャーリー)


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