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「気が散る」「落ち着きがない」だけじゃない発達障害のADHD

time 2025/06/03

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

「気が散る」「落ち着きがない」だけじゃない発達障害のADHD

この記事が含む Q&A

ADHDの診断に遺伝子検査は必要ですか?
いいえ、現代の診断は主に行動と症状の観察によります。
ADHDの症状はすべての人に同じように現れますか?
いいえ、個人差や症状のタイプにより大きく異なります。
ADHDの遅発や診断遅れを防ぐにはどうすれば良いですか?
子どもの行動や困難に気づき、専門家に早めに相談することが重要です。

発達障害は、子どもの頃の脳の発達に影響を与えるさまざまな状態をまとめた呼び名です。
この中には、注意欠如・多動症(ADHD)、自閉症、そしてディスレクシアのような学習障害が含まれます。

こうした症状は、子どもの成長とともに、だんだんとはっきりと見えてくることが多いです。
なぜなら、年齢ごとに身につけておくべきとされるスキルが十分に育たないことで、まわりと比べたときにその差が目立ってくるからです。

ADHDは発達障害の中で最も多い障害で、オーストラリアでは子どもの約8~10%、大人では2~5%にみられます。
ADHDがあると、たとえば気が散りやすくて作業が進まなかったり、物をよくなくしたり、注意を集中し続けるのが難しいといった行動が見られます。
ADHDは、学習や友だちづきあいなど、生活のあらゆる場面に影響します。診断されないままの場合、その困難が長く続き、不安やうつ、自己評価の低さにつながることも少なくありません。

ADHDの診断についてですが、これといった決定的な遺伝子や脳の異常は見つかっていませんし、これだけでわかるという確実な検査もありません。

診断には、子どもの場合は「不注意」の診断基準のうち6項目以上(大人は5項目以上)、または「多動・衝動性」の基準のうち6項目以上(大人は5項目以上)を、少なくとも6か月以上続けてみせているかどうかが判断材料になります。

診断基準には、たとえば「集中しづらい(話を聞けない、細かいところに注意がいかない、やるべきことをやりきれない)」や、「落ち着きがない(そわそわする、手足を動かす、じっとしていられない、しゃべり続ける)」そして「衝動的(話や遊びをさえぎる、順番を待てない)」といった特徴が含まれます。

ADHDがある人すべてが「多動」なわけではありません。
「不注意優勢型」の場合、最大の困難は集中力の維持にあり、とくにあまり興味を持てない日常的な課題ではその傾向が強くなります。
また、「多動・衝動性」と「不注意」の両方の基準を満たす場合は、「混合型ADHD」と診断されます。

こうした診断基準の問題点のひとつは、ADHDに特有の症状ばかりとは限らないことです。
たとえば、集中力の問題はうつ病などでも見られます。

そのため、「症状のチェックリストに当てはまるか」だけではなく、「その症状が日常生活にどれくらい影響しているか」が重視されます。
つまり、「ADHDの症状が、その人の毎日の生活や能力に実際に困りごとを引き起こしているかどうか」が大切です。

この「困りごと」は、何に取り組んでいるかによって人それぞれ異なります。
たとえば、学校では集中できなくても、その後写真家や記者のように締め切りの多いクリエイティブな仕事で成功する人もいます。

また、人生のある時期だけ診断基準を満たす場合もあります。
ADHDと診断されるためのすべての基準を満たしてはいなくても、「いくつかの特徴にあてはまり、生活で困りごとが生じている」というケースもあります。
このような場合でも、日常生活や学校・仕事で大きな苦労を感じることがあります。
診断がつかなくても、ADHDの傾向によって困りごとが続くことがあるのです。

ADHDは性別によっても差が見られます。
4歳から11歳の男の子は、女の子に比べて最大4倍も診断されやすいです。

これは診断基準が、とくに多動な男の子の特徴を見つけやすい内容になっているからかもしれません。
一方で、落ち着きがあってあまり目立たない、集中力の問題を隠そうとする女の子には気づかれにくい傾向があります。

そのため、女の子や女性は診断が遅れやすく、「うつ」など内にこもる症状が目立つことも多いです。
ただ、ここ40年ほどで女の子の診断の遅れは徐々に改善してきています。
また、年齢が上がるにつれて男女差は小さくなり、若年成人では女性の割合は約38%と、半分近くまで増えます。

ADHDには強い遺伝的な要素もあります。
遺伝率はおよそ70~80%とされていて、これは「ADHDの個人差のうち、どれだけが遺伝子の違いで説明できるか」という割合を示しています。
つまり、ADHDの人と血縁が近いほど、ADHDになる確率は高くなります。

しかし、遺伝の仕組みはとても複雑です。特定の遺伝子がADHDの原因である、という単純な話ではありません。
初期の研究では、神経伝達(脳が化学物質で信号をやりとりする仕組み)に関わる6つの遺伝子がADHDに関係しているとされましたが、それぞれの影響はごく小さいものでした。
今では、ADHDは「ポリジェニック疾患」、つまり何千ものごく一般的な遺伝子バリアントがかかわることがわかっています。

それぞれの遺伝子は、ごくわずかずつしかADHDの特徴に影響を与えませんが、これらが合わさることでADHDとして現れるのです。
これらの遺伝子は一般的なものなので、ADHDの特徴は「ある」「ない」とはっきり分かれるのではなく、全体としてなだらかに分布しています。

また、家族の中では「遺伝」と「同じ家庭環境」の両方が影響するため、この2つをきっぱり分けて調べるのは難しいといえます。

環境も大きく影響します。
家庭が協力的でサポートがある場合、親が子どもの特性にあわせて育て方を変えることが多く、そのおかげでADHDが目立たなくなり、診断が遅れる場合があります。

一方で、親のどちらか、あるいは両方がADHDの場合は、育て方にその影響が出ることもあります。
子どもの行動が「親から受け継いだADHD」なのか、「家庭の育ち方」の影響なのか、はっきりと区別するのは難しいのです。

また、オーストラリアでの調査では、同じ学年でも誕生日が遅い、つまり学年で一番年下の子どもほどADHD治療を受ける割合が高いことがわかっています。
これは、環境が「ADHDと診断されるタイミング」に影響している例といえますが、「原因」までは説明できません。

(出典:THE CONVERSATION)(画像:たーとるうぃず)

・「その症状が日常生活にどれくらい影響しているか」が重視されます。

ADHDと診断された場合、それは決して、軽々しいものではないことを多くの方に認識いただきたいと思います。

ADHDや自閉症の若者の命を守る「子どもの頃の安心体験」

(チャーリー)


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