
この記事が含む Q&A
- ADHDが写真撮影に与える影響にはどのようなものがありますか?
- パターン認識や新しいアイデアの創出に優れる一方、忘れ物や時間管理が難しいことがあります。
- ADHDの方が写真家としての長所を活かすための工夫は何ですか?
- 予備の機材を持ち歩くなど、環境を整えることが効果的です。
- ADHDの診断を検討すべきサインは何でしょうか?
- 物忘れ、作業の遅れ、やる気の波が日常生活に影響を及ぼしているときです。
気が散りやすいことが、実はあなたの創造的な力を引き出すかもしれません。
ADHD(注意欠如・多動症)は、写真を撮るうえでの「ひみつ道具」のような存在になることもあるのです。
ADHDは、最も多く研究されている精神的な特徴のひとつです。
初めて記録されたのは、イギリスでペニーブラックという切手が郵便制度に革命をもたらした頃のことです。
ちなみに、このようなちょっとした雑学をたくさん覚えているのも、ADHDの特徴のひとつです。
一方で、作業中に必要な情報を一時的に保持する「ワーキングメモリ」はとても弱い傾向があります。
撮影に出かけるたびに忘れ物をして、三度も家に取りに戻ることもあります。
それでも何かしらを忘れることがよくあります。
こうした事態を減らすために、私はバッグやスタジオに予備の機材を常に置くようにしています。
ADHDには「ハイパーフォーカス」と呼ばれる集中状態があります。
興味をもった物事には短期間で驚くほどの習熟を見せますが、あるとき突然、関心がゼロになることもあります。
その証拠として、高額な機材が手元に残ることがあります。
その後は、もう二度と触れないかもしれません。
こうした現象を「ADHD税」と呼ぶ人もいます。
使わないままのモノを買ったり、支払いを忘れて延滞料金を払ったり、なくしたものを何度も買い直したりすることがあるのです。
ADHDの人は、パターン認識がとても優れていて、他の人が思いつかないような創造的でユニークなアイデアを生み出すことができます。
これは、脳が常に退屈を避けようとして、新しいつながりを次々と作っているからです。
そう、ADHDにとって「退屈」は最大の敵なのです。
もし私たちが何かに興味を持てないとき、どれだけお金になろうと、どれだけ魅力的な相手が関わっていようと、美味しそうな料理が目の前にあっても、それに取り組むことができません。
どれほどやりたいと思っても、脳がまったく動かないのです。
ADHDの根本にはドーパミンという脳内物質の不足があります。
これが感情のコントロールの難しさ、つまり「感情調整の困難」として現れます。
作業にどれくらい時間がかかるのかがわからなかったり、何を優先すればいいのかが判断できなかったりします。
やるべきことをリストにしても(というより、それがないとすぐに忘れてしまいます)、量が多いと圧倒されて、結局なにもできなくなってしまうのです。
そして、動けないどころか、イライラが爆発して人に当たってしまうこともあります。
これは、「ちょっとしたこと」に耐えられない低いフラストレーション耐性のためです。
では、これが写真家にとってどう影響するのでしょうか。
もしあなたがハイパーフォーカスの段階を乗り越え、それでもなお撮影や編集が好きでいられるなら、それは本物の「生涯の関心」かもしれません。
ADHDによる優れたパターン認識力は、構図のセンスにも現れます。
また、初対面の写真家とすぐに打ち解けることもでき、新しい刺激からインスピレーションを得て、多彩なスタイルで撮影することができます。
ただし、難点もあります。バックアップが雑だったり、編集に時間がかかりすぎたり、興味が薄れると何週間もカメラに触らないこともあるでしょう。
そのようなときには、助けになる方法があります。
薬による治療は、必要なときに集中する力を高めてくれますし、薬の効果が切れたあとも、自然な「脳内のカオス」が新しい発想を生んでくれるのです。
また、「認知行動療法(CBT)」と呼ばれる心理療法も効果的です。
これは、タスクを細かく分けて取り組んだり、「洗濯は一度きりで終わる作業ではなく、循環する生活の一部なのだ」といった考え方を理解する助けにもなります。
X世代(1960〜70年代後半生まれ)は、特にADHDが見過ごされやすい世代といわれています。
そして今後、その傾向はさらに強くなると考えられています。
ADHDは遺伝的な要素があり、今では「親が子どもからADHDをもらう」と冗談を言うほどです。
子どもが先に診断されて、それを見た親が「もしかして自分も…」と気づいて診断を受けるという流れです。
もし自分もそうかもしれないと思ったら、ぜひ検査を受けてみてください。
誰だってカギを忘れたり、物をなくしたり、やるべきことが終わらなかったり、起きるのがつらい日もあります。
でも、それが日常的に生活を妨げているとしたら、それは「ただのうっかり」や「軽いうつ」ではなく、ADHDかもしれません。
思い立ったらすぐ行動しましょう。
先延ばしにしてしまうのも、まさにADHDの特徴のひとつなのですから。
ショーン・マコーマック
アイルランドの商業写真家
(出典:Digital Camera World)(画像:たーとるうぃず)
強みもある。
それをぜひ、うまく活かしてください。
(チャーリー)