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ADHDの女性は月経前のつらさがひどくなりやすい。研究

time 2025/06/27

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ADHDの女性は月経前のつらさがひどくなりやすい。研究

この記事が含む Q&A

ADHDの女性は月経前の不快感が増すことがありますか?
研究によると、ADHDの女性はPMDDのリスクが約4倍高くなります。
どうしてADHDの女性がPMDDにかかりやすいと考えられていますか?
ホルモン変動に対する感受性や脳内神経伝達物質の変動が関係している可能性があります。
ADHDとPMDDの関係性について、今後どのような研究が必要ですか?
ホルモン変動とADHDの関係性や効果的な治療方法の解明が求められています。

注意欠如・多動症(ADHD)を持つ女性は、月経前のつらさがひどくなりやすい――そんな関連性を明らかにした最新の研究が発表されました。
この研究では、ADHDと月経前不快気分障害(PMDD)との関係が詳しく分析され、ADHDの女性はPMDDを発症するリスクが大きく高まることがわかりました。
研究の中心となったのはイギリスのクイーン・メアリー大学やキングス・カレッジ・ロンドンなどの研究者たちです。

ADHDは、集中力の欠如や衝動性などによって生活に支障をきたす発達神経症の一種です。
従来、ADHDは主に男子に多いと考えられていましたが、成人になるとその男女比はほぼ1.5対1程度まで縮まることがわかっています。
とくに女性のADHDは、目立ちにくい注意欠如型や感情的な衝動性といった特徴を持つため、見過ごされやすい傾向があります。
さらに、女性はうつ病や不安障害などの診断が優先されることも多く、ADHDの診断が遅れる場合もあります。

今回の研究では、18歳から34歳の女性715人を対象にした調査が実施されました。
対象者は全員、出生時に女性と割り当てられ、月経周期があるとされる年齢層から選ばれました。
この調査では、「医師からADHDと診断されたかどうか」という自己申告に加えて、「成人ADHD自己評価尺度(ASRS)」という質問票を使ってADHDの傾向を評価しました。
また、PMDDについては「月経前症状スクリーニングツール(PSST)」を用いて、現在の症状から仮の診断(暫定的なPMDD)を行いました。

その結果、ADHDとPMDDの間には強い関連性があることが明らかになりました。

まず、医師からADHDと診断されたと報告した女性の31.4%がPMDDの症状を示していたのに対し、ADHDではないと判断されたグループでは9.8%にとどまりました。
さらに、ASRSの基準に基づいてADHDと判定された女性では、なんと41.1%がPMDDの症状を抱えていました。
これは、ADHDでない人に比べて約4倍のリスクに相当します。

また、ADHDに加えて、うつ病や不安障害などの診断がある女性では、PMDDのリスクがさらに高まりました。
ASRSによってADHDと判定され、かつうつ病または不安障害の診断も受けている人のPMDDリスクは、ADHDのない人に比べて4.5倍という非常に高い数値となりました。

このように、ADHDとPMDDの間には明確な関係があることが示されましたが、なぜADHDの女性がPMDDを発症しやすいのか、そのメカニズムについては今後の研究が待たれています。

研究チームは、ホルモン変動への感受性の違いが関係している可能性があると考えています。
PMDDは、ホルモンの量そのものではなく、その変動に対する個人の反応によって引き起こされるとされており、ADHDを持つ人はこうしたホルモン変化に敏感である可能性が指摘されています。

たとえば、エストロゲンの減少はドーパミンの減少を引き起こします。ドーパミンはADHDに深く関係する神経伝達物質であり、その変動がADHDの症状をさらに悪化させたり、PMDDのような感情的な不安定さを招いたりするかもしれません。

また、ADHDの女性は産後うつや、ホルモン避妊薬によるうつ症状など、他のホルモン変化の時期にも精神的な不調が起こりやすいことが過去の研究からも明らかになっています。
こうした一連の知見は、ADHDがある女性は人生を通してホルモンの変動による影響を強く受ける可能性があることを示唆しています。

研究では、ADHDとPMDDを併せ持つ女性が報告する症状の傾向も分析されました。
怒りっぽさ、涙もろさ、抑うつ気分などは、ADHDの有無にかかわらずPMDDに共通する症状でしたが、ADHDを持つ女性では不眠の訴えがとくに多いという違いが見られました。
一方で、「集中できない」といった症状は、ADHDのある人でもない人でも同じ程度に報告されており、PMDDによる注意困難はADHD特有のものではないと考えられます。

この研究の強みは、外来患者だけでなく、広く一般女性を対象にした点にあります。
これによって、病院にかかっていないADHDの女性についても、PMDDのリスクを推定できる貴重なデータが得られました。

しかし、いくつかの限界もあります。

たとえば、PMDDの正式な診断には少なくとも2か月間の症状記録が必要ですが、本研究では一度きりの質問紙による評価であるため、厳密には「暫定的なPMDD」という扱いになります。
また、PMDDに見える症状が、実際にはADHDやうつ病の「月経前悪化(PME)」という可能性も否定できません。

さらに、調査対象となった人々は比較的高学歴であり、必ずしも全体の人口構成を反映していない点や、PMDDに関する研究と知った上で参加した可能性があることなども、結果の一般化には注意が必要です。

それでもなお、ADHDを持つ女性が、PMDDやその他のホルモン変動による問題にさらされやすいという事実は、臨床現場にとって大きな示唆を与えるものです。
現時点でPMDDの治療には、抗うつ薬、ホルモン避妊薬、認知行動療法などが用いられますが、ADHDを伴う場合の治療効果についてはまだわかっていません。
一部の報告では、PMDDの時期にADHD薬の用量を増やすことで症状が改善したという例もあります。

今後は、ADHDとホルモン感受性の関係を明らかにする研究が求められます。
思春期、妊娠、更年期など、女性の人生にはさまざまなホルモン変動の時期があります。
こうした時期におけるADHD女性の健康と生活の質を守るためには、PMDDをはじめとした問題への理解と支援が欠かせません。

ADHDとPMDDという2つの見落とされがちな問題が、実は深くつながっているかもしれない――この研究は、その重要な一歩を踏み出したといえるでしょう。
これからの医療や支援の現場で、より的確でやさしい対応がなされていくことが期待されます。

(出典:the British Journal of Psychiatry)(画像:たーとるうぃず)

これまで理解されなかった困難が理解され、必要な方に必要な支援がなされることを願います。

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(チャーリー)


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