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ADHDの誤情報が怪しい治療へ誘う。TikTokの危険性

time 2025/07/03

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

ADHDの誤情報が怪しい治療へ誘う。TikTokの危険性

この記事が含む Q&A

TikTokのADHDに関する情報が若者の知識にどのように影響しますか?
誤った情報は知識を減らしつつ、自己過信や誤った治療法への関心を高める可能性があります。
SNSで流れるADHD情報の信頼性を見極めるにはどうしたらよいですか?
信頼できる専門機関や医療者の情報源を確認し、科学的根拠に基づく情報を選ぶことが重要です。
誤ったADHD情報に振り回されないために、私たちにできることは何ですか?
正確な知識を身につけ、誤情報を指摘し、正しい情報を広める努力を続けることです。

近年、多くの若者がTikTok(ティックトック)を利用しています。
この短い動画を共有するSNSは、気軽に情報を入手したり楽しんだりできるため、特に10代後半から20代前半の大学生を中心に爆発的な人気を博しています。
しかし、その一方で、ADHD(注意欠如・多動症)について誤った情報が大量に広がっていることをご存じでしょうか。

米シラキュース大学の研究チームは、TikTok上のADHD情報が大学生のADHDに関する知識や偏見、治療を受ける意図にどのような影響を与えるのかを調査しました。
彼らの研究は、TikTokが若者のADHD理解に与える影響を初めて実験的に明らかにしたものとして注目されています。

現在、TikTokには「#ADHD」のハッシュタグが付けられた動画が280億回以上も再生されています。
これは、若い世代がADHDに強い関心を持っていることを示すとともに、多くの人がSNSでADHDに関する情報を求めていることを物語っています。
しかし、過去の調査では、TikTokで視聴回数が多いADHD関連の動画の大半が、科学的に間違った情報(ミスインフォメーション)を含んでいることが明らかになっています。

そこで研究チームは、大学生490人を対象に実験を行いました。
参加者は、これまでADHDの診断や治療を受けたことがないものの、現在ADHDに関連する症状を感じている学生たちです。
研究チームは、参加者をランダムに3つのグループに分けました。
一つ目のグループには正確なADHD情報を提供する動画を、二つ目のグループには間違ったADHD情報を伝える動画を、三つ目のグループには睡眠に関する動画(ADHDとは関係のない内容)を見せました。
各グループが見た動画の時間は合計約12分間です。

その後、学生たちはADHDに関する知識や自信、ADHDへの偏見、治療を受ける意図などについて質問に答えました。
また、動画自体の信頼性や娯楽性についても評価しました。

この実験の結果は非常に興味深いものでした。

まず、誤ったADHD情報を見た学生は、ADHDについての正しい知識が実験前よりも減ってしまいました。
にもかかわらず、自分がADHDについて正しく理解しているという自信は大きく増加していました。
これは「ダニング=クルーガー効果」という心理学的な現象で、自分の知識や能力を実際以上に高く見積もってしまう現象です。
つまり、誤った情報に触れた学生ほど、間違った知識に基づいて自分の理解を過信してしまったのです。

一方で、正確なADHD情報を見た学生は、ADHDに関する知識がしっかりと増加し、自信も高まりました。
これは、正しい情報が学生たちにしっかり伝わった結果であり、誤った情報を見た学生たちとは対照的な結果です。

治療を受ける意図に関しても大きな違いが見られました。
誤った情報に触れた学生は、科学的な根拠がしっかりある治療(例えば医師が処方する薬物治療)だけでなく、科学的根拠が不十分な治療法(例えば特殊な食事療法や効果が不明なサプリメントなど)についても積極的に受けたいという意図を示しました。

これは非常に危険な傾向です。
なぜなら、科学的根拠がない治療法を信じてしまうと、時間やお金を無駄にするだけでなく、本当に必要な治療から遠ざかってしまう可能性があるからです。

意外なことに、この研究ではADHDに対する偏見に関しては大きな変化が見られませんでした。
つまり、正しい情報を伝えても誤った情報を伝えても、ADHDへの偏見が特に増えたり減ったりすることはなかったのです。

さらに、この研究で重要だったのが、動画の「娯楽性」の影響です。
参加者は動画が面白いほど内容をよく覚え、知識が増えました。
一方で、動画が楽しいと感じるほど、治療を受けようとする意図は低くなりました。
娯楽性が高い動画は視聴者の関心を引きつけますが、場合によっては治療への動機付けを弱める可能性もあるという結果でした。

この研究が示す問題は深刻です。

ADHDの診断や治療を希望する人は近年世界的に急増しています。
とくにアメリカやイギリスではADHDの治療薬が不足し、診断や治療を受けるための待機期間が非常に長くなっています。
誤った情報を信じて自己判断で不必要な治療を求める人が増えれば、医療機関はさらに圧迫され、本当に治療を必要としている人たちが適切な医療を受けられなくなる可能性があります。

このため、研究者たちは対策の重要性を強調しています。
具体的には、誤情報を訂正する「デバンキング」、あらかじめ誤情報に注意を促す「プレバンキング」、小さな工夫で行動を促す「ナッジング」などが有効とされています。
また、専門家や医療機関が娯楽性を高めつつ正確な情報を積極的に発信することが重要です。

TikTokのようなSNSは、私たちの生活に深く浸透しています。
しかし、そこで広がる情報には、便利さの陰に隠れた危険性があります。
今回の研究が明らかにしたように、とくに若い世代が誤った情報を鵜呑みにしてしまうリスクは深刻です。

今後、正しい情報を適切に届ける努力と、誤った情報を見極める力を育てることが、私たち一人ひとりに求められているのかもしれません。

(出典:European Child & Adolescent Psychiatry)(画像:たーとるうぃず)

「誤った情報に触れた学生は、科学的な根拠がしっかりある治療(例えば医師が処方する薬物治療)だけでなく、科学的根拠が不十分な治療法(例えば特殊な食事療法や効果が不明なサプリメントなど)についても積極的に受けたいという意図を示しました。」

冷静になって、正しい情報で、正しい対応をされてください。

子どもたちがADHD・自閉症をネットで知り診断を求める時代

(チャーリー)


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