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ADHDと犯罪の関連は本人だけの問題?家族と150万人の調査

time 2025/12/19

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ADHDと犯罪の関連は本人だけの問題?家族と150万人の調査

この記事が含む Q&A

ADHDと犯罪の関連は、個人の特性だけでなく家族内の遺伝的・環境的背景も関係するのですか?
はい、家族内の遺伝的要因や共有される背景要因が関連の強さに影響することが示されています。
研究でADHDはどう判定し、犯罪はどう定義したのですか?
ADHDは医療記録の診断記録や治療薬の処方記録で判定し、犯罪は裁判で正式に有罪判決が確定した記録を用いました。
男女差や家族関係の違いについて、どんな傾向が見られましたか?
女性で関連が強く表れる場面が多く見られた一方、関係の種類によって結果は異なり全てのケースで一貫してはいませんでした。

今回紹介するのは、スウェーデンのエレブルー大学とカロリンスカ研究所を中心とした研究チームが行った、大規模な人口データを用いた研究です。
この研究では、ADHDと犯罪との関連について、「本人の特性」だけでなく、「家族の中でどのように重なり合っているのか」という視点から詳しく調べています。

ADHDのある人は、そうでない人に比べて、犯罪で有罪判決を受ける割合が高いことが、これまでの多くの研究で報告されてきました。
しかし、その理由がどこにあるのかについては、必ずしも明確ではありません。
ADHDそのものの影響なのか、それとも遺伝や家庭環境など、家族の中で共有される要因が関係しているのか。
この研究は、そうした問いに答えることを目的としています。

研究に使われたのは、1987年から2002年にスウェーデンで生まれた人たちの記録です。
スウェーデンでは、出生時にすべての人に個人識別番号が付与されており、医療、家族関係、犯罪記録などの公的データを正確につなぎ合わせることができます。
研究者たちはこの仕組みを用いて、約150万人という非常に大きな集団を長期間追跡しました。

対象となった人たちは、15歳を迎えた時点から、その後に犯罪で有罪判決を受けたかどうかが調べられています。
15歳というのは、スウェーデンで刑事責任が生じる年齢です。
途中で国外に移住した人や、15歳になる前に亡くなった人などは分析から除外され、できるだけ正確に経過を追えるように工夫されています。

ADHDについては、本人の申告やアンケートではなく、医療記録に基づいて判定されました。
具体的には、医療機関でADHDと診断された記録がある人、またはADHDの治療薬が処方された記録がある人が、ADHDのある人として分類されています。この方法は、過去の大規模研究でも一般的に用いられているものです。

犯罪についても、警察への相談や疑いの段階ではなく、裁判などを経て正式に有罪判決が確定した記録のみが使われました。
分析では、「何らかの犯罪で初めて有罪判決を受けた場合」に加えて、「暴力を伴う犯罪」と「暴力を伴わない犯罪」を分けて検討しています。
これにより、犯罪の性質による違いも細かく確認できるようになっています。

まず、本人レベルでの分析では、ADHDのある人は、ADHDのない人に比べて、あらゆる種類の犯罪で有罪判決を受けるリスクが高いことが示されました。
とくに暴力を伴う犯罪では、その差が大きく表れています。
また、男性のほうが犯罪歴を持つ人数自体は多いものの、「ADHDがあることによってリスクがどれだけ高まるか」という相対的な影響は、女性のほうが大きいこともわかりました。

この研究の大きな特徴は、ここから先の「家族関係」を用いた分析にあります。
研究者たちは、一卵性双生児、二卵性双生児、実のきょうだい、母親が同じ異父きょうだい、父親が同じ異母きょうだい、いとこなど、遺伝的な近さや育った環境の共有度合いが異なる関係を細かく区別して比較しました。

考え方は比較的シンプルです。
もしADHDと犯罪の関連に遺伝的な要因が関係しているなら、遺伝的により近い関係ほど、その関連は強く表れるはずです。

実際に分析してみると、ADHDのある人の家族は、本人にADHDがなくても、有罪判決を受けるリスクが高い傾向が見られました。
そしてその強さは、一卵性双生児で最も強く、次に二卵性双生児や実のきょうだい、さらに異父・異母きょうだい、いとこと、段階的に弱まっていきました。

このような結果は、ADHDと犯罪の関連が、偶然や単なる家庭環境だけではなく、家族内で共有される背景要因、とくに遺伝的な要素と関係している可能性を示しています。
一方で、母親側のきょうだいと父親側のきょうだいの間に大きな差は見られず、環境だけで単純に説明できるわけではないことも示唆されました。

また、男女別の分析も行われています。
本人レベルだけでなく、きょうだいやいとこの分析においても、女性のほうがADHDと犯罪との関連が強く表れる場面が多く見られました。
ただし、すべての家族関係で一貫した差が出たわけではなく、関係の種類によって結果は異なっていました。

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研究者たちは、女性のADHDは診断に至るまでに症状が目立ちにくく、結果として診断や支援が遅れやすいことが、こうした結果に影響している可能性を論文内で指摘しています。
ただし同時に、ADHDの診断数や犯罪の件数そのものは男性のほうが多いことも強調されており、男女のどちらかだけに問題を帰すものではないとしています。

結果の信頼性を確かめるために、追加の分析も行われました。
たとえば、「犯罪を起こした本人自身がADHDである影響」を統計的に取り除いた場合でも、家族内の関連が残るかどうかが検討されています。
その結果、関連の強さはやや弱まるものの、多くの家族関係で関連は維持されていました。
また、ADHDの定義をより厳しくした場合でも、全体の傾向は変わらないことが確認されています。

この研究は、スウェーデンという医療制度や司法制度が整った国で行われており、他国でも同じ結果がそのまま当てはまるかどうかについては、今後の研究が必要だと述べられています。
また、診断記録や犯罪記録に基づく研究である以上、実際の行動すべてを完全に反映しているわけではないという限界も、論文内で丁寧に説明されています。

それでもこの研究は、ADHDと犯罪の関係を「個人の性格」や「努力不足」の問題として片づけるのではなく、家族や社会の中で形成される背景を含めて捉える必要があることを、非常に大きなデータを用いて示しています。
研究者たちは、こうした知見が早期の支援や予防につながる可能性がある一方で、当事者や家族への不当なレッテル貼りにつながらないよう、慎重な扱いが不可欠であることも強調しています。

ADHDと犯罪の関係は単純な因果関係ではなく、遺伝、環境、社会制度など、複数の要因が重なり合って形づくられているものです。

この研究は、その複雑さを正面から捉えようとした点に、大きな意義があると言えるでしょう。

(出典:Biological Psychiatry)(画像:たーとるうぃず)

ADHDと犯罪の関係を「個人の性格」や「努力不足」の問題として片づけるのではなく、家族や社会の中で形成される背景を含めて捉える必要がある

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(チャーリー)

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