この記事が含む Q&A
- ADHDとスポーツの関係はどのようなものですか?
- ADHDの特性は状況次第で競技パフォーマンス向上につながることもありますが、集中力の揺らぎはケガのリスクを高める可能性もあります。
- ADHDのある子ども・思春期アスリートが気をつけるべき栄養ポイントは何ですか?
- エネルギーを十分に確保しつつ、質の良い複合炭水化物・適切な量のたんぱく質・良質な脂質を意識し、微量栄養素は食品から摂ることを基本とします。
- ADHD薬とスポーツの関係はどう考えればよいですか?
- 薬は食欲低下やエネルギー消費の変化をもたらすことがあるため、体重・成長を見ながら適切に調整することが大切です。
ADHDのある子どもや思春期のアスリートにとって、栄養がどのような意味をもつのか。
米ミシガン州立大学 食品科学・人間栄養学部およびミシガン州立大学エクステンション 健康・栄養研究所が発表したレビュー論文がそれに答えています。
ADHDは、注意の向けにくさ、多動性、衝動性といった特性を特徴とする神経発達症です。
アメリカでは子どもや思春期の約1割がADHDと診断されており、スポーツに取り組む子どもたちの中にも、一定の割合でADHDのある選手が存在します。研究によれば、アスリート全体の7〜8%がADHDをもつと推定されています。
一見すると、ADHDとスポーツは相性が悪いように感じられるかもしれません。
しかし、論文では、ADHDの特性が必ずしも不利に働くわけではないことが説明されています。
衝動性は、とっさの判断力や動きの速さにつながることがあります。
また、多くのアスリートが語る「ハイパーフォーカス」と呼ばれる状態では、競技中に周囲の雑音や余計な刺激が消え、目の前の動きや感覚に強く集中できることがあります。
こうした特性が、競技パフォーマンスの向上に寄与する場合もあるのです。
一方で、ADHDには明確な課題もあります。
集中力の揺らぎや衝動的な行動は、ケガのリスクを高める可能性があります。実際に、ADHDのある若いアスリートは、そうでないアスリートに比べて脳しんとうや筋骨格系のケガを経験する割合が高いことが報告されています。ただし、この点についても一貫した結論が出ているわけではなく、研究によって結果は分かれています。
ADHDの治療として、多くの子どもや思春期が薬物療法を受けています。
刺激薬を中心としたADHD治療薬は、注意力や自己制御を改善し、競技中の集中やルール順守を助けることがあります。
成人アスリートを対象とした研究では、これらの薬が持久力やパワーを高める可能性が示されています。
しかし、子どもや思春期においては、運動能力そのものを大きく向上させるという明確な証拠は限られています。

さらに重要なのは、ADHD治療薬が食欲を低下させることがある点です。
成長期のアスリートにとって、十分なエネルギーと栄養を摂ることは、競技力だけでなく、健康な成長やケガの予防にも直結します。
食欲が落ちることで、エネルギー不足に陥ると、疲労がたまりやすくなり、集中力の低下や回復の遅れにつながるおそれがあります。
論文では、ADHDのある子どもや思春期のアスリートに特化した栄養介入研究は、現時点ではほとんど存在しないと明確に述べられています。
そのうえで、一般的な子どもや思春期のアスリート向けのスポーツ栄養の原則と、ADHDに関する栄養研究を組み合わせることで、実践的な指針を示しています。
まず重要なのが、エネルギー摂取量です。
ADHDのある子どもは、安静時のエネルギー消費が高い傾向があることが報告されています。
そのため、薬を使用していない場合には、一般的な推奨量よりもやや多めのエネルギー摂取が必要になる可能性があります。
一方で、刺激薬を使用している場合には、活動量や食欲の変化によって、エネルギー消費が低下することもあります。
こうした違いを踏まえ、体重や成長の様子を見ながら調整することが大切だと論文は述べています。
炭水化物については、量だけでなく質が重視されています。
ADHDのある子どもは、血糖値の調整が不安定である可能性が示唆されています。
急激に血糖値を上げる砂糖や精製された甘い食品を多く摂る食事は、ADHD症状の悪化と関連する可能性があります。
そのため、主食や間食では、全粒穀物や野菜、果物といった、消化吸収がゆるやかな複合炭水化物を中心にすることが勧められています。
運動量に応じて、体重1kgあたり3〜5g、多い日には8〜12gの炭水化物が目安とされています。

タンパク質については、ADHD特有の特別な必要量は示されていません。
一般的な子どもや思春期のアスリートと同様に、体重1kgあたり約1.5gを目標に、肉や魚、卵、豆類などからバランスよく摂ることが推奨されています。
脂質に関しては、質の重要性が強調されています。
飽和脂肪酸の摂取が多い食事は、ADHDと関連する可能性がある一方で、オメガ3系多価不飽和脂肪酸、特にEPAやDHAは、ADHD症状の軽減と関連する研究が報告されています。
サプリメントによる効果については結果が一貫していませんが、魚やナッツ、種子類など、食品からこれらの脂質を摂ることは、脳の健康や将来的な心血管の健康にも寄与すると考えられています。
さらに、微量栄養素にも注目が向けられています。
亜鉛、鉄、マグネシウム、ビタミンDなどは、神経伝達や脳機能と関わりがあり、不足している子どもではADHD症状が強い傾向が報告されています。
ただし、どの栄養素が決定的に重要かについては結論が出ておらず、単一のサプリメントで劇的な改善が得られるわけではありません。論文では、サプリメントよりも、栄養価の高い食品を日常的に摂ることが基本であるとしています。
ADHD治療薬を使用しているアスリートについては、実践的な工夫も紹介されています。
薬を飲む前にしっかりと朝食を摂ること、食欲が落ちやすい時間帯には、少量でもエネルギー密度の高い食品を選ぶことなどが例として挙げられています。
また、脱水や暑熱障害のリスクについては研究結果が分かれているため、一般的な子どもや思春期のアスリート向けの水分補給ガイドラインを守り、体重変化や発汗量を意識することが勧められています。
論文の結論として、ADHDのある子どもや思春期のアスリートは、競技上の強みと課題を併せ持つ存在であり、栄養はその両方に影響を与える重要な要素であると述べられています。
現時点では直接的な介入研究は不足していますが、エネルギーを十分に確保し、炭水化物や脂質の質に配慮し、必要な微量栄養素を食品から摂ることは、競技力の向上だけでなく、ADHD症状の安定やケガの予防にもつながる可能性があります。
栄養は魔法の治療法ではありません。
しかし、成長期の体と脳を支える土台として、日々の食事が果たす役割は小さくありません。
ADHDのある子どもがスポーツを楽しみ、自分の力を発揮し続けるために、栄養という視点が今後さらに重要になっていくことを、この論文は示しています。
(出典:Nutrients)(画像:たーとるうぃず)
ADHDのある子どもは、安静時のエネルギー消費が高い傾向があることが報告されています。
そのため、薬を使用していない場合には、一般的な推奨量よりもやや多めのエネルギー摂取が必要になる可能性があります。
一方で、刺激薬を使用している場合には、活動量や食欲の変化によって、エネルギー消費が低下することもあります。
こうした違いを踏まえ、体重や成長の様子を見ながら調整することが大切
いろいろ細かな話がありますが、ここが一番重要だろうと思います。
うちの子について言えば、「太り過ぎ」にはならないよう、体重には気をつけてきました。
(チャーリー)





























