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バーチャルと現実を結ぶXRが自閉症やADHDの子の成長を支援

time 2025/11/04

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バーチャルと現実を結ぶXRが自閉症やADHDの子の成長を支援

この記事が含む Q&A

XRとは何を指し、教育現場で何が可能になるのですか?
XRはVR・AR・MRを含む総称で、現実と仮想をつなぎ学習をより自由にする技術です(教育現場では安全な環境での反復練習や社会的・運動スキルの支援が期待されています)。
XRは神経多様な子どもたちに具体的にどう役立ちますか?
安全な仮想環境での練習を通じ、運動協調・社会的スキル・注意の持続などの向上が報告され、学習への意欲と自信の回復にもつながることが多いとされています。
本格的な導入を進める上での課題は何ですか?
コストや教員のトレーニング、機材設置、倫理・安全配慮、長期効果の検証、学校・家庭での実装研究など、標準化された評価や実装の整備が必要と指摘されています。

仮想空間や拡張現実の技術が、特別支援教育の現場に少しずつ広がりはじめています。
教室の中にいながら、別の世界を体験できる。
自分のペースで動き、試し、学ぶことができる。
それが、エクステンデッド・リアリティ(XR)と呼ばれる技術です。

チリのバルパライソ・カトリック大学の研究チームは、世界中の研究を集め、XRが自閉症やADHDなどの神経多様な子どもたちの学びにどのように役立っているのかを系統的に分析しました。
2020年から2024年までに発表された研究の中から、教育の現場でXRを使った実証的研究を厳密に選び出し、22件を詳しく検討しました。

XRとは、バーチャル・リアリティ(VR)、オーグメンテッド・リアリティ(AR)、そしてそれらを組み合わせたミクスト・リアリティ(MR)を含む総称です。
現実世界と仮想世界をつなぎ、より自由で柔軟な学習環境を作るための技術です。

研究の対象となったのは、3歳から18歳までの神経多様な子どもたち。
おもに自閉スペクトラム症(ASD)の子どもが多く、全体の約87%を占めていました。
ADHDや発達障害を併せ持つ子どもたちも含まれています。

多くの研究は、社会的スキル、運動の発達、感情の認識、注意の持続など、学校生活での困難に関わる能力をテーマにしています。
たとえば、バーチャル空間の中で会話の練習をしたり、感情の表情を読み取ったり、体を動かして空間認識を高めたりといった活動です。
どれも現実では不安を感じやすい場面を、安全でコントロールされた環境の中で練習できるように設計されています。

全体として、研究結果は明るいものでした。
モーター・スキル(運動協調)を扱った研究の約86%で、バランスや空間認識、体の使い方に有意な改善が見られました。
また、社会的スキルを扱った研究の約85%も、他者とのやりとりや感情理解の向上を報告しています。
注意や集中力も、従来の授業より長く保てる傾向が示されました。

子どもたちは、XRを使うときに楽しさや安心感を感じ、学びへの意欲が高まることが多かったといいます。
とくに運動協調発達に関する取り組みでは、失敗しても危険がない環境で繰り返し練習できることが大きな利点になっていました。

たとえば、ボールを投げたり、身体を使った課題を行ったりする場面では、現実世界では転倒や衝突などのリスクがあります。
しかし仮想空間の中では、そうした危険を避けつつ、正しい動きを視覚的に確認したり、リアルタイムでフィードバックを受け取ったりすることができます。
これは、運動発達の支援にとって画期的なことです。

一方で、研究の多くは実験室や特別な設備を備えた環境で行われており、実際の学校や家庭での応用には課題も残っています。
空間の確保、機材のコスト、教師や支援者のトレーニング、技術的なサポート体制などが必要です。
また、多くの研究では追跡期間が短く、効果がどれくらい長く続くかを検証したものは少数でした。

研究チームは、XRの導入を現実の教育に生かすためには、いくつかの条件が欠かせないと指摘しています。

第一に、運動や学習の成果を正確に測定するための標準化された評価方法が必要です。
現在は研究ごとに異なる尺度が使われており、比較が難しい状況です。

第二に、対象年齢に応じたプログラム設計が求められます。
幼児と高校生では発達段階がまったく異なり、同じ内容での効果を測ることはできません。

第三に、技術を使う人々——教師、セラピスト、家族——が安全かつ効果的に使えるようにするための支援体制が不可欠です。

XRの技術は、子どもたちの世界を広げる「窓」となりえます。
バーチャル・リアリティ(VR)は、完全に没入できる仮想世界を作り出し、社会的な対話や空間感覚の練習に向いています。
オーグメンテッド・リアリティ(AR)は、現実の中にデジタル情報を重ね、日常生活の動作や細かい手の動きを支援するのに適しています。
この二つを組み合わせたXRは、学びと遊び、現実と仮想をなめらかにつなぐことができるのです。

しかし、技術の進歩がそのまま教育の進歩につながるわけではありません。
研究者たちは「倫理」と「安全」を最も重要な要素として挙げています。
とくに子どもたちの身体発達を扱う場合、過度な刺激や誤った使い方は、逆に発達の妨げになるおそれがあります。
長時間の利用による疲労や、VR酔いと呼ばれる症状、あるいは現実との境界感覚の混乱などにも配慮が必要です。
したがって、運動発達や教育の専門家が設計段階から関わることが推奨されています。

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また、家庭や学校の協力も欠かせません。
家族は、子どもが安心して取り組める環境づくりを支え、教師は授業との橋渡し役となり、子どもの成果を現実の活動にどう結びつけるかを考える必要があります。
この協働があってこそ、XRの学びが「現実の力」へと変わっていきます。

興味深いことに、子どもたちはXRの中での成功体験を通じて、自信を取り戻すケースも多かったと報告されています。
失敗を恐れずに挑戦できる環境は、自己効力感を高め、現実での行動にも前向きな変化をもたらします。
それは「ゲームのような学び」ではなく、「安心して挑戦できる学び」です。

しかしながら、研究の質にはまだばらつきがあります。
約半数の研究は中程度の信頼性にとどまり、サンプルサイズが小さい、統制群がない、実施期間が短いといった制限が見られました。
また、性別の偏りも顕著で、参加者の約4分の3が男子でした。
女子の神経多様性についての研究が不足していることは、教育現場でも課題となっています。

今回のレビューで、運動発達へのXRの影響を評価した研究の多くが肯定的だったことは注目に値します。
子どもたちの運動能力は、認知や社会的スキルとも深く関わっています。
体を動かしながら空間を理解すること、他者とタイミングを合わせて動くこと、感情を身体で表現すること。
それらはすべて、発達の土台を作る要素です。
XRはこの「動きの世界」を、より安全に、より楽しく広げる可能性を持っています。

研究者たちは、今後の課題として次の点を挙げています。
第一に、大規模で多様な子どもたちを対象としたランダム化比較試験を行うこと。
第二に、長期的な追跡調査を行い、XRで得たスキルがどれほど現実に定着するかを検証すること。
第三に、実際の学校や家庭で導入できる形の「実装研究」を進めることです。
これらが整えば、XR教育のエビデンスはより確かなものになるでしょう。

教育の現場において、XRが「特別な支援技術」から「共に学ぶための技術」へと変わっていくことが理想とされています。
ユニバーサル・デザイン・フォー・ラーニング(UDL)の考え方に基づき、すべての子どもが自分のやり方で学べる環境を作る。
それは、特別支援の枠を超え、教育全体の質を高める取り組みでもあります。

研究の結論はこう述べています。
「XR技術は、神経多様な子どもたちの学びを支える有望な手段である。だが、技術だけでは十分ではない」
それを生かすのは、子ども、家族、教師、専門家、そして社会全体の協働なのです。

XRを使えば、子どもたちは仮想の世界で新しい体験をしながら、自分のペースで学べます。
その中で「できた」「わかった」という瞬間を積み重ねていく。
そして、その自信を現実の生活へと少しずつ持ち帰っていく。
その循環こそが、インクルーシブ教育の未来を形づくる鍵になると、この研究は示しています。

まだ課題は多くありますが、研究チームは希望をもって結論づけています。
技術が人を置き去りにするのではなく、人に寄り添い、支えるものとなるように。
XRは、子どもたちの心と体の世界をつなぐ「もうひとつの教室」になりうるのです。

(出典:Chirdren DOI:10.3390/children12111474)(画像:たーとるうぃず)

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自閉症のある大人が語る「XR」の力。自分らしさを支える技術

(チャーリー)

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