この記事が含む Q&A
- 自閉症のある若い成人の強みにはどんな特徴が挙げられていますか?
- 優しさ・共感・思いやり・知性・粘り強さなど、対人面の強みや認知的力が多く挙げられ、環境次第で強みが生きることが語られています。
- 自閉症の困難としてよく挙げられる点は何ですか?
- 社交や社会的な合図の読み取り、実行機能の課題、経済的・制度的な壁、痛みや疲労、睡眠の問題などが挙げられ、環境によって困難と強みの捉え方が変わるとされます。
- 支援のあり方は本文でどのように提案されていますか?
- 「強みを伸ばす」だけでなく、環境を調整し生活全体を支える包括的支援が必要であり、どの環境なら力を発揮できるかを一緒に考えることが重要とされています。
「あなたの強みは何ですか?」
そう聞かれたとき、すぐに答えられるでしょうか。
自閉症のある若い成人たちに、研究者たちはこの問いをまっすぐに投げかけました。そしてもう一つ、「いま、あなたが感じている主な困難は何ですか?」とも尋ねました。
診断基準ではなく、チェックリストでもなく、自由な言葉で。
この研究は、アメリカのSPARKという大規模研究登録システムを通じて行われ、カリフォルニア大学サンフランシスコ校やテキサス大学オースティン校デル医学校などの研究チームによって実施されました。
18歳から35歳までの自閉症のある若い成人295人が、自分の言葉で「強み」と「困難」を書きました。
答えは、驚くほど多様でした。

まず、強みです。
いちばん多く挙げられたのは、「優しい」「思いやりがある」「愛情深い」といった対人面の特性でした。
「優しい」
「思いやりがある」
「愛情深い」
「共感できる」
「人を安心させられる」
「友だちを支えられる」
自閉症というと、どうしても「対人関係が苦手」というイメージが先に立ちます。しかし、この研究では、約4割の人が対人スキルや対人特性を自分の強みとして挙げています。
「私はフレンドリーです」
「人をリラックスさせることができます」
「困っている友人を支えられます」
そんな言葉が並びます。
中には、「社交性」を強みと答えた人もいます。さらに、「人前でうまく振る舞える」「人好きなふりができる」といった、いわゆるマスキングに関わる力を強みと表現した人もいました。
それが楽かどうかは別として、「できる」という事実を、自分の力として捉えているのです。

次に多かったのは、「認知的な力」です。
「賢い」
「知的」
「創造的」
「論理的に考えられる」
「細かいところに気づける」
「記憶力がある」
こうした言葉が多く挙げられました。
興味深いのは、「状況によっては強みでもあり、困難でもある」と語る人がいたことです。
「細部に気づく力は、間違いを見つけるときには役立つ。でも、気になりすぎて疲れることもある」
同じ特性が、環境によってまったく違う意味をもつ。そのことを、本人たちはよくわかっています。
さらに目立ったのが、「粘り強い」「困難に負けない」「努力家」「決意が強い」といった力です。
「粘り強い」
「回復力がある」
「努力家」
「強い意志を持っている」
困難をくぐり抜けてきた経験そのものが、強みとして語られていました。
自閉症のある人たちは、日常の中で多くの壁に直面します。その中で身につけた忍耐や工夫は、本人にとって確かな力になっているのです。

では、困難はどうでしょうか。
もっとも多く挙げられたのは、「社交」に関する難しさでした。
「人と交流すること」
「社会的な合図を読み取ること」
「会話がうまくいかない」
「社会的な不安」
しかし同時に、「もっと人とつながりたい」「理解されたい」という思いも語られています。
これはとても重要な点です。
「自閉症の人は社会的動機が低い」という単純な説明では、この声はすくえません。難しさはあっても、つながりたい気持ちは確かにある。そのギャップが、孤独や疲労につながることもあります。

また、「実行機能」の困難も多く挙げられました。
集中できない。
整理整頓が難しい。
時間管理がうまくいかない。
やる気が出ない。
これらは仕事や学業だけでなく、対人関係にも影響します。
「考える時間がほしい」
「面接で、すぐに答えを出せない」
そんな声もありました。
さらに、診断基準には直接書かれていない困難も多く報告されました。
経済的な不安。
仕事が見つからない。
仕事のストレス。
交通手段がない。
社会保障や医療制度にアクセスしにくい。
そして、慢性的な痛みや疲労、睡眠の問題。
「一日に複数のことができない」
「痛みのせいで好きなことが制限される」
身体的な負担が、社会参加や就労にも影響していることが語られました。
この研究から見えてくるのは、「自閉症の特性」だけでは説明できない、生活全体の困難です。

そしてもう一つ、大切なことがあります。
強みと困難は、きれいに分かれるものではない、ということです。
社交性は、ある環境では強みになる。
別の環境では、強いストレスになる。
感覚の鋭さも、場面によっては才能になり、別の場面では負担になります。
特性は固定された「欠陥」ではなく、環境との相互作用の中で意味が変わる。
だからこそ、支援は「症状を減らす」ことだけに向けられるべきではない、と研究者たちは述べています。
経済、雇用、身体健康、交通、制度へのアクセス。
そうした生活全体を支える包括的な支援が必要だと指摘しています。
そして同時に、「強み」を称えることも大切ですが、それだけでは十分ではないとも書かれています。
「強みがあるのだから頑張れるはず」というメッセージは、ときに当事者に過剰な自己努力を求めることになります。
必要なのは、本人が無理をして適応し続けることではなく、環境が調整されること。

今回、自閉症のある若い成人たちは、自分の言葉で語りました。
優しさ。
創造性。
粘り強さ。
共感。
知性。
そして、
孤独。
疲労。
経済的不安。
制度の壁。
実行機能の困難。
その両方が、同時に存在しています。
自閉症を「できないことの集合」として見るのではなく、「多様な力と多様な困難を併せ持つ存在」として見る。
そして、「どの環境なら、その人の力が自然に発揮されるか」を一緒に考える。
この研究は、その出発点を示しています。
強みを伸ばすことと、困難を減らすこと。
その両方を、本人の言葉から考える。
それが、これからの支援の土台になっていくのかもしれません。
(出典:Journal of Autism and Developmental Disorders DOI: 10.1007/s10803-026-07260-0)(画像:たーとるうぃず)
自閉症を「できないことの集合」として見るのではなく、「多様な力と多様な困難を併せ持つ存在」として見る。
そして、「どの環境なら、その人の力が自然に発揮されるか」を一緒に考える。
本当にそれが一番大事なことだと思います。
ご本人、まわり、社会、にとって。
ADHD・自閉症の成人調査。強みを見いだす人ほど幸福度が高い
(チャーリー)




























