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発達障害の子それぞれに合わせて療育の対応ができるAIロボット

time 2018/06/28

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発達障害の子それぞれに合わせて療育の対応ができるAIロボット

発達障害の子どもは、まわりの人たちの感情を理解することが困難なことがよくあります。
例えば、幸せな表情と恐怖の表情の区別ができません。
そのために、子どもに親しみやすいロボットに感情を表現させて、子どもたちが理解できるようにする療育方法があります。
療育にロボットを使う場合には、子どもが興味を持っているか、興奮しているかなど、ロボットが子どもの状態を理解することができれば、最も効果的なものになると考えられます。
MITのメディアラボの研究者は、子どもの関心状態をそれぞれの子どもにあわせて推定することができるAIを開発しました。
この、それぞれの子どもにあわせて「ディープ・ラーニング」により学習したAI、ロボットの研究はScience Roboticsに掲載されました。
「目標は、人が行う療育をロボットが代わって行えるようにすることではありません。
人が行う療育を補強するものです。それぞれの子どもに最適化されたロボットが療育を手伝うのです。」
そうMITメディアラボのオギー・ルドビクは話します。
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この研究論文の共同執筆者であり、人間の感情に関わるコンピュータの研究をリードしているロザリン・ピカードは、発達障害の子どもへの療育において、それぞれの子どもに最適化する、パーソナライズは特に重要なことだと言います。
それはこの有名な言葉が示すように、発達障害はそれぞれの人ごとに、異なるものだからです。
「発達障害の人に会ったといっても、それは発達障害である人の一人に会ったにすぎない。」
ピカードはこう言います。
「発達障害の人に役立つAIの開発は、簡単ではありません。
通常、AIに用いる機械学習の方法では、似たようなデータを多く必要とします。
しかし、それぞれの人によって異なる発達障害の場合には、そのような手法を用いることができません。」
ルドビクとピカードたちの研究チームではこれまでに、それぞれの人に最適化できるディープ・ラーニングを用いたAIにより、アルツハイマー病の進行の予測の研究なども行っています。
現在のロボットを使った療育とは、主に次のようなものです。
最初に人が、さまざまな感情表現を子どもに教えるために、異なる表情の写真やカードを見せながら、恐怖、悲しみ、喜びなどを表情から理解することを教えます。
次に、ロボットがこれらと同じような感情を示せるようにプログラムをして、ロボットに対する子どもの状況を観察します。
そして、子どもの状況から、人がロボットや教え方を調整し、次のステップに移っていきます。
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今回の研究では、SoftBank Roboticsのロボット、NAOを利用しました。
NAOは目の色、手足の動き、声の調子を変えることで感情表現を行います。
日本から17名、セルビアから18名の3歳から13歳までの発達障害の子どもたちが研究に参加しました。
35分間のセッション中に、退屈で眠そうになったり、興奮して部屋を飛び回ったり、手を叩いたり、ロボットを見て笑ったり、触れたりしました。
子どもたちのほとんどは、実際の人に対するのと同じように、ロボットにも敬意を払っていました。
「単なるおもちゃではなく、NAOとして接していました。」
一人の4歳の少女は、セッションの始めには母親の後ろに隠れたままでしたが、ロボットを見て開放的になると、終わりの頃には笑顔をみせていました。
ロボットを抱きしめて、愛しているよ!と言っていた子どももいました。
「人が発達障害の子どもに療育を行う場合には、数秒間、こちらに注意をひくだけでも、すばらしいことです。
しかし、ロボットを使った場合には、子どもたちはもっと長い間、注目してくれます。」
そう、ルドビクは言います。
「また、人が行う場合には表現方法がさまざまに変わってしまいますが、ロボットは常に全く同じに表現します。
子どもからすると、わかりやすく、イライラすることもなくなります。」
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今回の研究では、ディープ・ラーニングによるAIのロボットが子どもの行動を適切に認識するために有益であることが確認されました。ディープ・ラーニングは階層的な複数のデータ処理層を利用する学習方法で、AIの精度を改善させるものです。
ディープ・ラーニングの概念は1980年代から存在していましたが、コンピュータの高い計算能力が必要であったため、実現できたのは最近のことです。音声による応答システムや認識の分野で利用されており、顔、体、声の特徴を理解するなど、抽象的な概念の理解に適した技術です。
「人の表情を理解しようとした場合に、例えば顔のどの部分が最も重要になるでしょうか?
ディープ・ラーニングを使うことで、人間がそれらを分別してロボットにプログラムをしなくても、ロボットが自分でわかるようになります。」
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今回の発達障害の子どもの療育向けのロボットでは、ディープ・ラーニングの利用方法をさらに一歩進めて、個々の子どもたちからの集められたデータにあわせ、その子に最適化されたAIを実現できるようにしました。
子どもの手首につけたセンサー、子どもの表情、頭と体の動き、ポーズやジェスチャー、音声、心拍数、体温、汗について取得したデータから、ディープ・ラーニングにより学んだAIが、子どもたちの状況を把握します。
ロボットのAIが認識した子どもの状況と、人間の専門家5人が評価した子どもの状況とを比較しながら、AIの精度も高められていきました。
そうして、今回の研究に参加していなかった子どもも含めて、それぞれ異なる発達障害の子どもの状況についても高い精度で把握できるAI、ロボットが実現されたのです。
ルドビクたち研究チームが、ディープ・ラーニングによる子どもの状況認識について調べると、興味深い、発達障害の子の文化的な違いも発見されています。
「例えば、日本の子どもたちは夢中になっているときには体を動かすことが多くなります。
一方でセルビアの子どもたちは、興味がないときに体を動かすことが多くなりました。」
(出典・画像:米MIT)(画像:たーとるうぃず撮影 発達障害の子を助けるロボット、NAOに実際に触れてきました。
米MITからの研究発表です。
これまでご紹介してきたロボットの多くは、乱暴な言い方をすれば紙芝居のようなものでした。
相手がどんな子どもかは関係なく、決められたことを行うだけでした。
今回のMITの研究成果は、相手の子どもそれぞれにあわせて、自動で細かな対応を行う、療育の効果を高めることが期待できるロボットができたということです。
発達障害の子それぞれについて理解してくれるようになれば、療育にかぎらず、頼れる友だちにもなってくれるはずと期待していしまいます。
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(チャーリー)

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