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自閉症の人のコミュニケーション困難は自閉症でない人にも原因

time 2021/07/26

この記事を読むのに必要な時間は約 11 分です。

自閉症の人のコミュニケーション困難は自閉症でない人にも原因

「二重共感問題」と呼ばれるアイデアの支持者は、自閉症の人とそうでないの人の間のコミュニケーションがうまくいかないのは、双方の理解の難しさによって引き起こされる、双方の問題であると考えます。

この「二重の問題」は、相互作用が失敗する理由として自閉症の人たちの社会的欠点を指摘する自閉症の長年の理論に挑戦するものです。
自閉症の人たちが「足りない」のではなく単に異なるコミュニケーションの方法を持っているという仮定において、神経多様性の原則を反映します。

「それは自閉症により起きていることを、自閉症の当事者が説明する理由と一致する理論です」

そう、英国ケント大学の発達障害と知的障害の講師である自閉症の研究者ダミアン・ミルトンは言います。

理論に対する科学的支持は現在、構築されつつありますが、まだ確固たるものではありません。
また、すべての研究者がこの新しい方向性に同調しているわけではないと米ストーニーブルック大学の心理学、精神医学、小児科のマシュー・ラーナー准教授は言います。

「二重の共感の問題は、まだ歴史のない理論です」

理論の基礎は、2人の間のミスマッチが誤ったコミュニケーションにつながる可能性があるということです。

このミスマッチは、会話スタイルから人々の世界の見方まで、さまざまなレベルで発生する可能性があります。
ミスマッチが大きいほど、2人のやり取りが難しくなります。

自閉症の場合、自閉症の人が自閉症でない人を理解するのに苦労するだけでなく、自閉症でない人が自閉症の人を理解するのにも苦労するために、コミュニケーションギャップが発生すると考えられます。

問題の原因は相互にあるのです。
たとえば、他の人の表情を読むのが難しいと、自閉症の人とそうでない人の間の会話がうまくいかない可能性があります。

双方向の問題として、自閉症における社会問題のこの概念は数十年前に生まれました。
ジム・シンクレアなどの自閉症の活動家は、1990年代以降、自閉症の人のコミュニケーション方法は定型発達の人の方法とは異なると主張してきました。
ミルトンは、2012年の論文で「二重共感問題」という用語を最初に作り出しました。
このアイデアは自閉症でない人たち側の潜在的な誤解を含めることで、自閉症の人が心の理論(他人の意図や感情を推測する能力)に問題をかかえていることが原因という長年の考えに、再考を求めるものとなりました。

最近の研究では、社会的状況で自閉症の人がどのように行動するかに焦点を当てるのではなく、自閉症の人と対話するときに自閉症でない人がどのように行動するかも調べています。

結果は、自閉症でない人たちもコミュニケーションのギャップに寄与していることを示唆しています。
たとえば、ある研究では自閉症でない人は、アニメーションで描かれた自閉症の人の精神状態を解読するのに苦労していました。
他の研究では、自閉症でない人が自閉症の人の表情を正確に解釈するのに苦労していることを示しました。

自閉症でない人たちはまた、自閉症の人たちとの相互作用を避けたり、受け止めなかったり、悪く受け取る可能性もあります。
たとえば、自閉症でない人は、自閉症の人の第一印象を悪くもっている傾向があります。

「自閉症の人は自閉症でない人よりも親しみにくく、扱いにくい」

これまでの多くの研究結果から、自閉症の人は、顔の表情、発話パターン、視線など、いくつかの社会的領域で自閉症でない人とは異なることが示されています。
しかし、多くの研究では、自閉症の人が他の自閉症の人と交流するときには、その社会的およびコミュニケーションの問題が現れないことも示されています。
たとえば、メッセージが人から人へとささやきながら中継される「伝言ゲーム」では、8人の自閉症の人の列も、8人の自閉症でない人の列と同じように、メッセージは正確に伝わりました。
メッセージがすぐに正確でなくなるのは、自閉症の人とそうでない人が混在したときだけでした。

自閉症の人同士ではうまくコミュニケーションができているという他の研究結果は他にもあります。
自閉症の人は、自閉症でない人とのコミュニケーションよりも自閉症の人とのコミュニケーションのほうが快適だといいます。
自閉症の多くの青年は、自閉症でない仲間よりも自閉症の仲間と交流することを好みます。
そして、自閉症の人は自閉症の人と会話するときに、より大きな親密な感覚を構築し、自分自身についてより多くを共有することがよくあります。
この理由の一つは、自閉症の人は会話において典型的な社会的ルールに関心をもたないため、ルールに従わなくてもそれほど気にしないためだと考えられます。

二重共感の問題は、自閉症の人たちについて広く採用されているいくつかの考え、すなわち彼らの社会的困難が内在しているという考えと対立している、とミルトンは言います。
たとえば、精神障害の診断および統計マニュアルに概説されているように、自閉症の主な診断基準の一つは、「複数の状況にわたる社会的コミュニケーションおよび社会的相互作用の永続的な欠陥」です。
同様に、自閉症の社会的動機づけ理論は、自閉症の人々は社会的相互作用への意欲が低下していると考えています。

この新しい「二重共感問題」理論は必ずしもこれらのアイデアとは矛盾しないと、英国のケンブリッジ大学の発達精神病理学のサイモン・バロン・コーエン教授は言います。
この理論は、自閉症の人に焦点を合わせるのではなく、社会的相互作用の両側を調べることの重要性を強調するものだと。
たとえば、科学者たちは社会的スキルの評価のしかたを再考し、自閉症の人のコミュニケーションの限界ではなく、強みを評価するための自閉症研究の刷新を求めています。

米テキサス大学ダラス校の行動科学および脳科学のノア・サッソン准教授は、研究者たちはまた、脳スキャナーに横たわっている人やコンピューターの前に座っている人の孤立した行動を研究する代わりに、社会的相互作用のダイナミクスを調べる方法を見つけました。

「私はこれまでと同じく、表情の認識と視線追跡の研究を繰り返すことにうんざりしていました。
これでは新しいことはわかりませんでした」

さらに、予測コーディング(人々が外界の内部モデルを形成する方法)を研究する研究者は、人の予測の不一致がどのように相互作用を妨げる可能性があるかを調査しています。
たとえば、会話がどのように展開するかについての自閉症の人の期待が自閉症でない人の期待と異なる場合、彼らの相互作用は弱まる可能性があります。

それでも、誰もが「二重共感問題」理論を確信しているわけではなく、認識しているわけでもない、とラーナー准教授は言います。理論の中核にあるいくつかの質問は未解決のままだと。
たとえば、自閉症の人が自閉症でない人と交流するときよりも、自閉症の人がお互いに交流するときの方が、なぜコミュニケーションがスムーズになるのかはまだ解明されていません。
そして、理論の既存の証拠の多くは、事例報告と小規模な研究に基づいたものでしかありません。

しかし、二重の共感の問題は、いくつかの自閉症の評価と治療が不十分である理由を説明するのに役立つかもしれないとサッソン准教授は言います。
たとえば、これまでの社会的能力の標準的な尺度は、自閉症の人たちが実際の社会的相互作用でどのようにうまくいくかを予測できていません。
そして、自閉症の人たちに規範的な社会的スキルを教えるように設計された治療法は、友情を築くなど、現実の状況をナビゲートするのを助けるのにも効果的ではない、と研究は示唆しています。

「多くの場合、自閉症の人を変化させることに重点が置かれています」

とミルトンは言います。

自閉症の人たちを取り巻く社会的状況を評価し、彼らのユニークなコミュニケーションスタイルを促進する方法を見つけることのほうが、より有用なアプローチかもしれません。
同様に、二重の共感の問題は、自閉症でない人たちが自閉症の人たちと適切に相互作用するのを助けるトレーニングプログラムの重要性も示します。

この理論は、自閉症の人たちの精神的健康問題の原因を示唆している、という研究も発表されました。
日常的に誤解されていると、孤独感や孤立感につながる可能性があります。
そして、自分が自分であることを抑制することによって社会的規範に従おうとする試みは、疲れ果てさせる可能性があると多くの専門家は指摘しています。

(出典:米SPECTRUM)(画像:Pixabay

自閉症の人だけに原因があるという考えは、私も支持できません。

世界には特定の人たちだけがいるのではありません。多様な人たちがいます。

そして、コミュニケーションは相手があってのものです。

特定の人たちだけに、コミュニケーションがうまくいかない原因を押し付け、変えようとするのはあまりに身勝手なことだと思います。

そんなふうにされたら、楽しく生きていくことができますか。

うちの子はお話できません。何を考えているのか、何を言いたいのか、親でもよくわかりません。

けれど、私ももっと成長して理解できるようになりたいといつも思っています。

誰だって、相手側になることがあるのです。みんな違って、みんな同じです。

自閉症の人のやりとりの困難は自閉症の人だけのせいではない

(チャーリー)


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