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自閉症の困難に役立つ。「ダンス」の脳を同期させる効果の研究

time 2022/04/30

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自閉症の困難に役立つ。「ダンス」の脳を同期させる効果の研究

米バージニア工科大学農学生命科学部人間栄養・食品・運動学科のバッソ助教授は、ダンススタジオを経営するレイチェル・ルーとチームを組み、ダンスが自閉症スペクトラムの人にどのような影響を与えるかについての研究を行っています。

「自閉症スペクトラム障害は、他人の目を見ることができない、感情表現を読み取ることができない、他人と関わることができない、ミラーリングを利用できないなど、社会的スキルに現れます。
ダンスで訓練することは、この障害に見られる困難さに対応するものです」

バッソ助教授は、バージニア工科大学のトランスレーショナルバイオロジー、医学、健康学の元博士課程の学生であるメダ・サティアルとルグと共に、「Dance on the Brain:脳内・脳間同期の促進 」という論文で共同研究しています。
この論文では、「ダンスのシンクロニシティ仮説」と呼ぶ仮説を示しています。

「多くの人が、ダンスとは体を動かして気持ちよくなることだと考えていると思います。
ダンスフロアに出て、動き、流れに身を任せれば、それは素晴らしいことです。

しかし、ジュリアと私が研究しているダンスは、もう少し正式なもので、心と体のつながりを利用して、自己の内面を調査し、痛みや不快感、バランスの悪い部分について体が発するシグナルに耳を傾けるものと理解します。

振り付けをし、動きのパターンを見て、その瞬間に美的に面白いと思うものを見る目を鍛え、動きながらボディスキャンをし、他のダンサーを見て、その動きを反映させるものという考えです。
同期の瞬間を作り出そうとするものです」

この論文では、ダンスが様々な神経行動を支える脳領域の「神経同期性」を高めるという仮説を立てています。

もっと簡単に言うと、人がダンスをして他者と関わることで、2つの脳が同期するようになるということです。

ダンスが自分の脳内の同期と、2つの脳の同期を高めるという仮説です。

この研究に携わっているバージニア工科大学カリリオン校フラリン生物医学研究所のリード・モンタギューがハイパースキャンと呼ぶ手法で、2人の脳活動を同時に測定します。
従来は人が静止した状態で脳波を測定していましたが、新しいタイプのモバイルEEGキャップで、動きながら複数の人の脳活動を測定することができるものです。
2人の脳活動は、統計的な手法で相関を見ることができます。

「私たちは、2人の脳の状況を同時に記録することができます。
とくにこのようなダンスの練習を通して、お互いがどのように相互作用するかを記録できるのです。
私たちは、2人の人間が一緒に動き、自発的に動きのパターンを生成しているときの身体と脳の生理学を調べています」

そうパッソ助教授は言います。


バッソ助教授は米ミドルベリー大学で神経科学とダンスの学士号を取得し、その後米ラトガース大学で行動・神経科学の博士号を取得しています。
10年以上にわたって運動が脳機能や生理に及ぼす影響を研究してきました。

ダンスカリキュラムの開発にあたっては、米ノースカロライナ大学グリーンズボロ校でダンスの学士号を、米ウィスコンシン大学ミルウォーキー校でダンスの美術修士号を取得したルーグとともに、ダンス/運動療法士の資格を持つ人やダンスの専門家と共同して行ってきました。

「私たちは毎週異なるコンセプトでダンスを行っています。
楽しくて、短時間でできるものですが、明確なパラメーターとルールがあります。
グループ活動をして、クールダウンをする。
これが、4週間のセッションにおける各クラスの構成です。
クラスが終わるころには、グループのメンバーが動きや楽譜(ムーブメント・シークエンス)を共有できるようになっていて、自分たちで作って、お互いにそれを披露しあうことができるようになればいいと思っています」

そうルーグは言います。
ルーグは、米シアトルで幼稚園の先生をしていた時に、自閉症の子どもたちと関わっていました。
現在は自閉症の大人たちのニーズについてもっと学びたいと考えています。

「シアトルには、アン・グリーン・ギルバートという、とても有名で評価の高いダンス教育者がいます。
彼女は、人が五感から得た情報を整理し適切に対応するための脳内プロセス、感覚統合をダンスを通じて研究しています。
発達障害などの人たちを対象に、多くの統合カリキュラムを実施し、特定の動作パターンやエクササイズが五感を統合することに与える影響についてです。
ダンスで、そうした人たちはより落ち着き、より地に足をつけ、より集中し、脳と身体がより統合されていると感じることができます。
私はずっと彼女の研究に興味を持っていました」

自閉症の人たちは、社会的スキルに欠ける傾向があります。
彼らは視線を合わせることを避け、孤独を好み、多くの場合、孤立感を感じます。
他人の気持ちを理解するのに苦労することもよくあります。

バッソは、ダンスが脳の社会的要素を刺激することで、自閉症スペクトラムの人が自分の動きや行動を共有する人とつながりを感じ、自分の考えや感情を理解するのに役立つと考えています。

「もし、あなたと私が一緒に指を動かす練習をしたら、私たちの感覚運動野、脳の状態は互いに同調すると予想されます。
私たちは、ダンスの感覚、運動、社会的、感情的側面との関連性によって、ダンスの訓練がパートナーと一緒に脳の社会的要素の強化すると考える仮説をもっています。

体性感覚・運動レベルでつながり始めると、パートナーと互いに共感性に同調し始めるということが、行動学的に明らかになるはずです。
それは、心の理論 という考え方と、アイコンタクトやタッチを通じて身体的につながることです。
身体的なプロセスが、感情的なつながりへと変化するのです。
これは、発達の本当に早い段階で、親と子の間に生まれているプロセスと同じです」

バッソとルーグは現在、自閉症スペクトラム障害をもつ18歳以上の研究参加者を求めています。
最終的には、バージニア工科大学内に、心身の研究にさらに焦点を当てた芸術と科学のハブ、つまり科学的な試みであると同時にコミュニティのためのリソースとなりうる場所を作ることも目指しています。

「芸術を研究に取り入れる方法はたくさんあります。
私たちは、振付作品を作り、パフォーマー自身とパフォーマーと観客の間で何が起こっているのかも検証したいと思っています」

すでに、このプロジェクトの可能性と潜在的な結果に興奮しています。
バッソはこう言います。

「私たちは、特に社会的孤立が起きている新型コロナ感染拡大時にも、研究を行ってきました。
私たちの予備調査では、たった1回のダンスセッションでも、ポジティブな感情を高め、ネガティブな感情を減らし、社会的一体感や社会的つながりの感情を高めることができることが明らかになっています。
ダンスは誰にとっても、メリットをもたらすものです」

(出典・画像:米バージニア工科大学

私自身は経験もなく、まったく苦手ですがダンスはとてもいいはずです。

うちの子も、小さな頃から大きくなった今でも、気に入った音楽があればあわせてよく体を動かしています。

見ているこちらも楽しく、うれしくなります。

見せてくれるその笑顔だけで、ダンスの良さはわかります。

自閉症の私には難しいこともあったが、バレエが人生を豊かにした

(チャーリー)


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