これまでの研究で、自閉症の人たちの自殺傾向が高いことは認識されてきました。
しかし、最近の研究では、自閉症の人たちの自殺リスクは、これまで考えられていたよりもさらに高い可能性があることが示唆されています。
英国の研究で、自閉症と診断された人と診断されていない人を含め、自殺で亡くなった人の記録を分析したところ、正式に診断されていない人も含め、１０．７パーセントが自閉症の特徴を示していたことが明らかになったのです。
また、これらの自殺者の家族にインタビューを行ったところ、４１パーセント以上の人が自閉症的な特徴を示していました。
これらの結果は、最も広く使われている自閉症診断ツールの一つである自閉症スペクトラム指数で測定したところ、自殺未遂者の５０パーセント以上が自閉症の診断基準を超えていたという過去の研究結果と類似します。
なぜ自閉症の人は自殺のリスクが高いのでしょうか？
現在のところ、次のような要因があると考えられています。
■ 精神衛生上の問題
自閉症の人は、不安やうつなどの精神的な問題を同時に抱える可能性が高く、特にそれが治療されていない場合、自殺のリスクが高くなる可能性があります。
■ 診断が遅い
多くの自閉症者が大人になるまで診断されないままであり、女性の方が遅い診断を受ける（あるいは全く診断されないままである）可能性がより高くなっています。
診断が遅れると、自殺念慮のリスクが高くなります。
■人生の不利な出来事
自閉症の人として人生を歩むことはしばしば困難です。
いじめられたり、経済的な問題を経験したり、社会的に排除されたり、職場や人間関係の問題に直面するリスクが高くなっています。
そのいずれもが自殺傾向の根底になる可能性があります。
■ カモフラージュ
自閉症の人は、しばしば自分の自閉症を「カモフラージュ」しようとし、他の人と調和するために自分の症状を隠す方法を見つけます。
カモフラージュは精神的な負担が大きく、精神疾患や自殺の割合が高くなると言われています。
■ 認知的柔軟性の欠如
認知的柔軟性とは、状況に応じてさまざまな方法で考え、変化する状況に適応する能力のことです。
自閉的な人は柔軟性に欠ける傾向があり、そのために自分が経験している精神的苦痛や人生の困難を終わらせる手段として自殺以外の選択肢を考えることが難しくなっている可能性があります。
■ 孤立
自閉症の人は社会性やコミュニケーションの問題に直面しており、それが孤立や支援の欠如につながり、自殺のリスクを高めています。
もしあなたが自閉症の人（またはその疑いがある人）なら、自分自身を助けることができる方法があります。
１．診断を受ける
悩んでいるのであれば、正確な診断を受けることで、自分の症状を理解し、適切な助けを求めることができます。
２．誰かに相談する
自殺願望を打ち明けることは不可能に思えるかもしれませんが、セラピスト、友人、教師、同僚、家族など、誰かに話すことは、自分の気持ちを共有し、自殺に代わる方法を見つける手助けを受けるための出発点となります。
言葉が出てこない場合は、書き留めておくことも考えてください。
３．セルフケア
人によっては、自殺念慮は多くの時間存在するものです。これらの考えを単なる考えとして認識する方法を見つけることは、役に立つことがあります。
また、自殺念慮が多かれ少なかれ高まる時期があるようです。
自殺願望が強まるような状況やきっかけ、あるいは自殺未遂の前にあった状況を特定することで、こうした状況にあらかじめ対処する方法を見つけることができます。
ストレスレベルを管理し、必要な休息をとり、脳に必要な栄養を与える方法を見つけることは、精神衛生全般の改善につながります。
あなたが自閉症の人の親、友人、同僚、家族、医療従事者であるなら、以下のことを考慮してください。
１．カモフラージュに注意する
家族や友人が自閉症と診断されても、彼らの課題はそれほど重大ではないと考える罠にはまるかもしれません。
そして、そのことが、より深刻な学習困難や支援の必要性がある人よりも彼らの自殺のリスクを低くすると信じてしまうかもしれません。
しかし、高機能自閉症の人ではその逆です。
高機能自閉症の人たちは、自殺念慮を抱きやすいのです。
自分の症状をカモフラージュして、自分のニーズに合わない世界で生産性を維持した結果、そうなりやすいのです。
２．自閉症の人の自殺傾向は自閉症でない人とは違っている
これまでの研究からわかったことは、自閉症の人の自殺傾向は、自閉症でない人とは異なっています。
ある研究では、アスペルガー症候群の人は、うつ病よりも自殺念慮を経験する人がはるかに多く、一般の人と比べて自閉症の人の自殺へのルートが異なることが示唆されています。
また、学習障害を持たない自閉症の女性が、自殺で死亡するリスクが最も高いことも分かっています。
これは、一般的に男性よりも自殺で亡くなるリスクの少ない女性とは対照的です。
また、自殺念慮の持続性や反復性が高まり、計画性のない衝動的な自殺を図る可能性が高くなることも、自閉症の人たちの異なる点です。
３．聴き方、伝え方を工夫する
自分の気持ちを表現することは、自閉症の人にとって信じられないほど難しいことです。
もし自閉症の人があなたに心を開いてくれたり、自殺の危険があるのではないかと心配になったりしたら、その人が言っていることに耳を傾けることが重要です。
あなたは、「大丈夫だよ」と安心させたり、彼らが語る問題に対してすぐに「解決策」を見出したいという誘惑に駆られるかもしれません。
しかし、自閉症の成人の場合、特に苦痛を感じているときは、処理時間が遅くなることがあることを覚えておくことが重要です。
彼らが自分自身を表現できるように、彼らにとって適切な方法で時間と空間を作る必要があります。
明確な質問をしてください。自殺について比喩で話したり、間接的な方法を見つけたりすることは避けてください。
最も重要なのは、冷静さを保ち、自分自身と愛する人を助ける方法を探すことです。
（出典：米Psychology Today）（画像：Pixabay）
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