発達障害のニュースと障害者のハンドメイド

発達障害のある子は乱視や白内障など視覚にも問題が多い。研究

time 2025/08/01

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

発達障害のある子は乱視や白内障など視覚にも問題が多い。研究

この記事が含む Q&A

発達障害の子どもたちは乱視の割合が高く、重症化する傾向があるのですか?
はい、研究によると乱視の割合や度数が一般の子どもより高く、リスクも約1.8倍、重症化リスクは約3.1倍に上ります。
発達障害と目の疾患には因果関係があるのですか?
はい、遺伝子や脳構造の分析から、因果関係を示す証拠も得られています。
子どもたちの視覚ケアにはどのような対策が効果的ですか?
早期かつ定期的な視力・目の構造の検査と、多感覚刺激の視覚支援プログラムが有効と考えられています。

発達障害のある子どもたちの目の健康は、これまであまり注目されてきませんでした。しかし近年、視力や視覚の問題が、彼らの日常生活や学習、コミュニケーションに深く関わっていることがわかってきています。

今回、中国・天津にある南開大学付属天津眼科病院と天津眼科研究所に所属する研究チームは、13,889人の児童・生徒を対象とした3年間の大規模調査と、遺伝的データに基づく分析を組み合わせることで、発達障害と眼の病気のあいだにある「関連」と「因果関係」の両方を明らかにしようとしました。

対象となったのは、2021年から2023年にかけて天津市内の小中学校で行われた視力検査のデータです。
特別支援学校に通う子どもたちを含め、309人の発達障害のある児童・生徒が含まれていました。
彼らの視力の特徴を、一般の子どもたちと比較し、その差を統計的に分析しました。
また、それとは別に、大規模なゲノムデータ(遺伝情報)を用いた「メンデルランダム化解析」という手法によって、遺伝的な要因が眼の病気にどう関わるのかも調べました。

その結果、発達障害のある子どもたちは、一般の子どもに比べて明らかに「乱視」の割合が高く、しかもその度合い(重症度)も強い傾向があることがわかりました。

3年間を通じて、発達障害のある児童・生徒の乱視の割合はそれぞれ69.05%、74.58%、77.57%であり、いずれの年も一般児童の約66〜68%を上回っていました。
さらに、乱視の強さ(度数)も、平均で1.75Dと、一般児童の1.00〜1.25Dに比べて重くなっていました。

年齢や性別、近視・遠視といった他の要因を取り除いても、発達障害があること自体が乱視のリスクを高めるという結果は変わりませんでした。
統計的な解析では、発達障害があると、乱視になる可能性が約1.8倍、乱視が重くなる可能性が約3.1倍に高まることが示されました。
さらに、性別によっても差が見られ、とくに女の子においてそのリスクがより大きいことがわかりました。

このような「相関関係」があるだけでなく、次に研究チームが試みたのは、「因果関係」があるかどうかの検証でした。
ここでは、遺伝情報に基づいた「メンデルランダム化」という分析手法が使われました。
これは、あらかじめ自然に割り振られた遺伝子の違いを「実験のように」利用して、ある要因が別の結果に影響を及ぼしているのかを調べる方法です。

この解析の結果、発達障害に関連する遺伝的な特徴、たとえば「認知的・知覚的・感情的・行動的な違い」を持つ人は、乱視になるリスクが1.057倍高くなることが示されました。
中でも、自閉スペクトラム症(ASD)の遺伝的特徴は、乱視リスクを1.010倍高めるという結果になりました。

また、注意欠如・多動症(ADHD)の遺伝的特徴は、遠視のリスクをわずかに(1.008倍)高めることもわかりました。
このように、それぞれの発達障害のタイプによって、目の状態への影響の仕方も少しずつ異なることが見えてきました。

視力そのものだけでなく、目の構造に関するデータも分析されました。
たとえば、自閉スペクトラム症や学習障害があると、角膜の乱視軸の角度に違いがあることがわかりました。
これは、眼鏡の処方や治療の方法を決めるうえで重要な情報です。

発達障害があることで、乱視だけでなく、白内障、網膜の病気、緑内障といった重大な眼疾患のリスクも高まることが遺伝的に示されました。

たとえば、認知・知覚・感情・行動の違いに関わる遺伝的因子を持つ人は、白内障のリスクが1.012倍、網膜剥離のリスクが1.001倍、緑内障のリスクが1.003倍高まるという結果でした。
さらに、運動機能の発達障害があると、眼科手術を受ける確率がわずかに(1.002倍)上がることも明らかになりました。

そしてこの研究では、脳の構造と視覚障害とのあいだの関係にも注目しました。

大規模な脳画像(MRI)データを分析したところ、「視放線にあたる後レンズ状内包」や「尾状核とその周辺」に見られる脳信号の強さが、発達障害と視覚障害の両方に関連していることがわかりました。

具体的には、「TBSS L2 Retrolenticular part of internal capsule」と呼ばれる脳領域の信号が1単位強くなるごとに、発達障害や性格・行動障害のリスクが約1.29倍に高まり、同時に乱視や続発性緑内障のリスクも高まっていました。
また、「SWI T2 star」という別の脳画像指標における尾状核の信号が高い人は、認知・感情・行動の問題、乱視、麻痺性斜視、まぶたの異常といった視覚や眼の症状と関連があることも示されました。

研究チームは、こうした結果が「因果的なつながり」を支持するものであると考えています。
つまり、発達障害と視覚障害は、単に一緒に起こることが多いというだけでなく、共通の遺伝的・神経的な背景を持っている可能性があるのです。

一方で、現実には、こうした子どもたちの多くが、十分な眼科診察を受けていません。
今回の調査でも、発達障害のある子どもの約40%が一度も眼科検診を受けたことがなく、95%は必要な矯正(眼鏡など)を受けていないことが明らかになりました。

研究チームは、この結果を踏まえて、発達障害のある子どもたちに対しては、より早い段階で、かつ定期的に視力と目の構造をチェックする必要があると強調しています。
視覚障害があることで、さらに学習や社会参加のハードルが高くなってしまうからです。

たとえば、家庭でも取り組める視覚支援プログラムとして知られる「Developmental Journal for Visual Impairment(DJVI)」のように、視覚・聴覚・触覚を組み合わせた多感覚刺激を保護者が日常的に提供することで、子どもの発達を支援する方法があります。
これはイギリスの国立保健サービス(NHS)などによって開発されたもので、視覚に困難を抱える乳幼児に対して、家族が発達の段階に応じた関わりを記録しながら支援できるよう設計されています。
また、アメリカの研究では、生後6か月以内の介入で、約70%の子どもに視覚的な改善が見られたというデータもあります。

このような背景から、研究チームは、発達障害のある子どもたちに対して、「早期発見・早期介入」を軸とした視覚ケアの体制を構築すべきだと述べています。
単なる視力検査だけでなく、眼の構造、脳の状態、行動特性をふまえた多職種によるチーム支援が求められるという考えです。

さらに政策面でも、視覚検査を小児科の定期健診に組み込むこと、学校教育の中でも視覚の支援にもっと力を入れることが提案されています。
AIによる視線解析や遺伝データを用いたリスク予測など、新しい技術を活用した「クロス診断的な評価」も、今後の研究課題とされています。

今回の研究は、中国・天津市という地域に限定されたものであり、対象の人数にも限りがあります。
しかし、それでも乱視や緑内障、白内障、網膜剥離など、多くの視覚的問題と発達障害との関連が確認されたことは、非常に意義のある成果といえるでしょう。

発達障害のある子どもたちの視覚の問題は、見落とされがちでありながら、彼らの生活の質を大きく左右する重要なテーマです。

(出典:Journal of Autism and Developmental Disorders )(画像:たーとるうぃず)

うちの子も小さな頃に目も悪いのではないかと言われ、医師の指示に従ってすぐにメガネを作りました。

結局、本人が嫌がってすぐに使わなくなってしまいましたが。

そのときに言われたことは、

「よく見えないとますますまわりへの関心がなくなってしまう」

それはそうだろうと思います。なのですぐに作ったわけです。

視覚に問題をかかえている可能性が高いこと、知っておいてください。

初期の感覚差異が未来を変える。自閉症の「カスケード理論」

(チャーリー)


たーとるうぃず発達障害ニュースを支援する。

たーとるうぃずを「いいね!」をする。フォローする。

その他の最新の記事はこちらから
福祉作業所で障害のある方々がひとつひとつ、心をこめて作り上げた良質なハンドメイド・手作りの品物をご紹介します。発達障害の関連ニュースや発達障害の子どもの4コマ漫画も。
気に入ったものはそのままamazonで簡単にご購入頂けます。

商品を作られた障害のある方がたーとるうぃずやAmazonに商品が掲載されたことで喜ばれている、売れたことを聞いて涙を流されていたと施設の方からご連絡を頂きました。

ご購入された方からは本当に気に入っているとご連絡を頂きました。ニュースや4コマ漫画を見て元気が出たとご連絡を頂きました。たーとるうぃずがますます多くの方に喜ばれるしくみになることを願っています。


NPO法人Next-Creation様からコメント

「たーとるうぃず様で販売して頂いてからは全国各地より注文が入るようになりました。障がい者手帳カバーは販売累計1000個を超える人気商品となりました。製品が売れることでご利用者の工賃 UP にもつながっています。ご利用者のみんなもとても喜んでおります」

テキストのコピーはできません。