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自閉症の人の強み「創造性」はADHDの影響の可能性。研究

time 2025/07/04

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自閉症の人の強み「創造性」はADHDの影響の可能性。研究

この記事が含む Q&A

自閉症の人はすべて創造性が高いですか?
科学的な研究では、自閉症の人の創造性は他者と差がなく、必ずしも高いわけではありません。
自閉症の創造性が高いと考えられる理由は何ですか?
過去の自己報告や日常の創造的行動が高い傾向にあり、ADHDの影響による可能性が指摘されています。
自閉症の支援を行う際に重視すべきことは何ですか?
個々の特性や併存している状態(例:ADHD)を丁寧に評価し、その人の具体的な強みを理解することが重要です。

自閉症と創造性については、これまで「自閉症の人は創造性が高い」という印象がしばしば語られてきました。
独自の視点やこだわりをもつ自閉症の人が、社会の中で新しい発想を生み出す力を持っているという期待もあります。
しかし、それは本当に自閉症そのものによるものなのでしょうか。

イギリスのバース大学の研究チームは、この疑問に科学的に答えるため、注意欠如・多動症(ADHD)の影響を含めて検証する大規模な研究を行いました。

研究には、自閉症の成人176人と、自閉症ではない成人176人の合計352人が参加しました。
年齢、性別、一般的な認知能力を揃えたうえで、自閉症と創造性の関係を調べるために設計された研究です。

これまで創造性の高さは自閉症の強みとして注目され、教育や雇用の現場で「自閉症の人の強みを活かす」取り組みの根拠の一つとされてきました。
しかし、実際には小規模な研究や、自閉症の診断を受けていない人を対象とした調査に基づく主張が多く、科学的根拠としては十分でないことが課題となっていました。

今回の研究では、レンガの使い道をできるだけ多く挙げてもらう「発散的思考課題」を用いて創造性を測定しました。

この課題では、発想の数(流暢さ)、発想の多様さ(柔軟性)、発想の独自性(独創性)の三つの観点から評価されます。
さらに、創造性に関連する自己報告の質問票を使い、過去の創造的達成度、日常の創造的行動、創造的な性格、創造的な自己効力感を調べました。
加えて、ADHDの診断と傾向についても詳細に測定し、分析に組み込みました。

結果として、発散的思考課題における創造性の測定では、自閉症の人と自閉症でない人の間に有意な差は見られませんでした。

つまり、自閉症だからといって発想の数や独創性が特別に高いわけではないことが示されました。

一方で、自己報告による過去の創造的な成果や日常の創造的行動については、自閉症の人の方が高い傾向を示しました。
これだけを見ると、自閉症の人は創造性が高いと言えるように思えます。
しかし、ここでADHDの影響を分析に加えたところ、この差はADHDの存在によるものであることが明らかになりました。

自閉症の人はADHDを併存していることが少なくなく、今回の研究でも自閉症の参加者のうち23%がADHDの診断を受けており、さらに32%がADHDの可能性を感じていると回答していました。

このADHDの有無が創造的な成果や行動の高さに影響を与えていたのです。

具体的には、ADHDがある場合、発想の柔軟さや行動の多様性が高まり、新しいアイデアを形にする動機づけが強くなる傾向があります。

研究チームは、これまで「自閉症の強み」とされてきた創造性が、実際にはADHDの特徴によるものである可能性が高いと結論づけています。

この結果は、支援や教育、雇用の現場で「自閉症の強みを活かす」方針を考える際に重要な示唆を与えます。

自閉症のすべての人が創造性の高さを持つわけではなく、ADHDを併存している一部の人にその特徴が見られる可能性があるということです。

したがって、支援を計画する際には、個々の特性や併存する状態をしっかり把握し、その人が持つ具体的な強みを見極めることが重要であるといえます。

さらに興味深いことに、今回の研究では創造的な成果や行動は高かったものの、自己評価による「創造的な自己効力感」には差が見られませんでした。
つまり、自閉症の人は実際には創造的な活動を多く行っているにもかかわらず、自分自身ではその力を十分に認識できていない可能性があります。

これは、自閉症の人が自己評価や自己効力感を持つことが難しいことが知られていることとも一致しています。
支援の現場では、自閉症の人が自分自身の強みや成果を客観的に理解し、自信を持てるような働きかけが必要であることが示唆されます。

この研究は、創造性に関するこれまでの研究の限界を克服し、実際に診断を受けた自閉症の人々を対象に大規模に調査した点で大きな意義があります。
また、ADHDとの関連を丁寧に分析したことで、創造性の高さが自閉症そのものの特性ではなく、ADHDとの関連で現れている可能性を明確に示しました。

これは、自閉症に関するさまざまな「強み」についても、今後ADHDなど他の状態との関連を丁寧に調べる必要があることを示しています。

今後、自閉症の支援や教育の現場で創造性を活かしたプログラムを考える場合には、ADHDの併存の有無を含めた個別の評価が不可欠となるでしょう。

強みを活かす支援は重要ですが、その強みが誰にでも当てはまるわけではなく、その人が実際に持つ特性を理解したうえで支援を設計することが、本人の幸福と社会参加の促進につながると考えられます。

この研究は、自閉症と創造性についてのこれまでの理解に大きな修正を加えるものです。

創造性は重要な強みであり、多くの人にとって魅力的な特徴ですが、それが自閉症の人すべてに当てはまるわけではないことを私たちに教えてくれます。

支援や教育、雇用の現場でその人の創造性を活かしたいと考えるときには、ADHDの特徴を持つかどうかを含めて丁寧に評価し、一人ひとりの持つ力を適切に見極めることが、これからの時代の支援に求められる姿勢なのかもしれません。

(出典:Journal of Psychopathology and Clinical Science)(画像:たーとるうぃず)

「強み」「特性」を正しく知る。

それを助ける研究です。

強みをを伸ばす、的外れではない支援をする、ますます、そうなることを期待しています。

「自閉症とは?」ゲームを通じて語られた当事者の真実。研究

(チャーリー)


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