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自閉症の人は脳の構造が違うわけではない。使い方が違うだけ。

time 2021/03/16

この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。

自閉症の人は脳の構造が違うわけではない。使い方が違うだけ。

米カリフォルニア大学デービス校MIND研究所の研究者らによる新しい研究によれば、発達障害である自閉症スペクトラム障害(ASD)の実行制御、人の思考や行動を制御する認知システムの違いは、障害と呼ぶべきものではなく、その方法が違うだけの可能性が示唆されました。

実行制御の問題は自閉症の人にによく見られるものです。
タスクを完了したり時間を管理したりすることの困難と関連します。

この研究では、自閉症の人がかかえるこうした困難が、困難な出来事が起きる前に実行され、維持される(プロアクティブな実行制御)と、出来事が起こったときに実行される(リアクティブな実行制御)のどちらの障害によるものなのかを明らかにしようとしました。

この研究は”Biological Psychiatry: Cognitive Neuroscience and Neuroimaging”に掲載されました。

研究チームは、研究に参加した12〜22歳の141名(自閉症の人64名、そうでない比較対象となる人77名)を対象に、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、脳のスキャンを行いました。
スキャン中、被験者は自分の行動を適応させる必要がある課題を行いました。

被験者には緑または赤のしるしが表示され、その後左右を示す白い矢印が表示されました。

被験者は緑色のしるしを見て、矢印の方向に一致するボタンを押すように指示されました。
その次に、赤色のしるしを見て、一致しないボタンを押すように指示されました。
その指示の順番は、実験全体でランダムに行われました。

この研究の筆頭著者であるアンドリュー・ゴードンはこう言います。

「私たちの脳は、矢印に反応したときに、反対の行動をとるよりも、一致する行動をとるほうが簡単に反応できるようにできているようです」

しるしを見せたとき、矢印を見せたとき、の両方で脳スキャンを行いました。

認知的に負荷の少ない試行(しるしと矢印が一致する試行)では
自閉症の人は、しるしを見る段階で制御プロセスに関連する脳のネットワークにおいて、自閉症でない人よりも有意に大きな脳活動を示しました。

しかし、認知的に負荷の多い試行(しるしと矢印が一致しない試行)では、脳活動は、自閉症の人と自閉症でない人の間に違いは見られませんでした。

この研究の上席執筆者である精神科・行動科学科のマージョリー・ソロモン教授はこう述べています。

「この結果は、困難な出来事が起きる前のプロアクティブな実行制御が損なわれているのではなく、自閉症の人はプロアクティブな実行制御を、自閉症でない人とは異なり、簡単な試練と困難な試練のどちらにも行うことを示唆しています」

また研究者チームは矢印を見たときの脳スキャンから、出来事が起こったときに実行される、リアクティブな実行制御に関わる脳領域間の結合性が、自閉症の人では、しるしと矢印が一致しない試行では特異的に増強されていることを発見しました。
自閉症でない人たちではそれは増強されていません。

ゴードンはこう言います。

「この結果は少し意外でした。

これまでの研究では、神経レベルでの作りの違いが行動の違いにつながっていると考えられていたからです。

しかし、私たちの研究で実際にわかったのは、自閉症の人はただ、そうでない人とは違ったふうに神経制御システムを利用していただけということです。

今回の研究結果は、他の多くの分野と同様に、自閉症の人はタスクを完了するために独自の戦略を用いることを示唆しています。

しかしなぜ自閉症の人は、簡単な課題のときでも、より多くの制御を行うのかという疑問が残ります。
それは、認知能力が低下していくことと関係があるのかもしれません」

(出典:米カリフォルニア大学デイビス校医学部)(画像:Pixabay

そうでない人にとっては難しくないこと(経験したことがあるようなこと)に対しても、自閉症の人は前もって脳ををすごく使っているということなんですね。

そして自閉症の人は、脳の構造に違いはなく、そうした使い方に違いがあった。

どうしてそんなふうに使うのかはまだわからない。

と理解しました。

かかえている困難についてそうでない人に理解され、そしてその困難克服に役立つ手立ての発見につながる、こうした研究はますます推進して頂きたいと願います。

自閉症のコミュニケーションの困難原因、失感情症と二重共感問題

(チャーリー)


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