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聴覚過敏の自閉症の子も作曲家に。音楽が楽しくなるデバイス

time 2023/03/11

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

聴覚過敏の自閉症の子も作曲家に。音楽が楽しくなるデバイス

鮮やかな色彩、光ファイバーカーテン、振動する触覚チェアなど、魅力的な空間に、人気の童謡が響き渡っています。
ここでは、自閉症の子どもたちが自ら作曲家となって、音楽を愛することを学んでいます。

ここは、米デラウェア大学のルート9ライブラリー&イノベーションセンターのセンサリールームです
気に入った音楽があれば、耳を澄ませ、微笑んだり、踊ったりします。
また、指先で音の組み合わせを考えながら、真剣に耳を傾ける子もいます。
ドラムの音を入れたり、高速のカウンターメロディを入れたりすることに喜びを感じる子もいれば、おなじみの曲を穏やかに演奏するのが好きな子もいます。

子どもたちは、米デラウェア大学芸術科学部音楽科のダニエル・スティーブンス教授(音楽理論)、工学部コンピュータ・情報科学科のマシュー・マウリエロ助教授とそれぞれの学生たちが開発した音楽デバイスを試聴しています。

この装置は、音楽演奏と心理学を専攻する2年生のエリス・ルッジェーロの夢でした。
エリスの弟は、2歳のときに自閉症と診断されています。

「私は9歳のときにバイオリンをはじめました。
人の前で演奏をするようになりましたが、弟には、じっと座って音楽を聴くことは難しいことがわかりました。
食事に行ったときも、レストランで音楽が大音量で流れていると、弟は強く不安になり、どうすることもできませんでした」

スティーブンス教授は、音楽理論の授業で地域社会の問題を解決することを生徒に課しました。

「あなたの音楽のスキルで、あなたの生活や仕事の世界をどのように変えたいですか、そう生徒たちに問いかけました」

生徒たちはすぐに活動を開始しました。
エリスは、自身の経験を生かして自閉症の人を支援しているオーティズム・デラウェアと組んで、自閉症の子どもたち向けのインタラクティブな音楽装置を作るというアイデアを発表し、最終的にはクラスで取り組むプロジェクトとなりました。
エリスはこう言います。

「長い間、取り組みたいと思っていた問題が、実現可能であることを知り、満足しました。
他の人たちも情熱を持って取り組んでいるのを見ると、みんなと一緒になって変化を起こせるのだと実感しました」

スティーブンス教授のクラスの音楽理論の学生たちは、子どものリスニングニーズや好みに合わせて変更が可能なモジュール音楽というものを、何時間もかけてさまざまにデザインしました。

「自閉症の人には、本当に求められるものがあります。
例えば、聴覚過敏の子どもは、音楽が速すぎたり、刺激が強すぎたり、刺激が足りなかったりするために、両親やクラスメートと歌を歌うような体験に参加できないことがあります。
自閉症の子どもは一人ひとり違うので、さまざまなニーズに対応できるような音楽を作曲する必要があります」

このような装置が前から存在していれば、弟を助けることができたかもしれないとエリスは言います。

「弟は音に敏感でした。
そのため、幼い頃から音楽に関わることには消極的でした。
自閉症の子どもたちにも、音楽を作りたいと思う選択肢を持ってほしいと私は思っています」

マウリエロ助教授は、技術の設計、構築、現場への配備を支援しました。
コンピュータサイエンスとエンジニアリング、デザイン、心理学を融合させたヒューマンコンピュータインタラクションに取り組んできた経験を生かし、社会の課題解決にコンピュータを利用することに情熱を傾けています。

「私は、ユーザーを理解し、共感する機会を楽しんでいます。
その結果、ユーザーのニーズを満たすテクノロジーを構築することができるのです」

現在のその音楽装置は、3Dプリントされた白い箱の中にあるコントローラーに一連のプリセットや楽器の絵が描かれた光るボタンがあり、無限の音の組み合わせが可能で、自閉症の子どもたちのリスニング体験を向上させることを目的としています。

子どもがボタンを押すたびに、音やメロディが少しずつ、あるいは劇的に変化します。
それぞれのやりとりを記録することで、スティーブンス教授とマウリエロ助教授は聴き手の好みに関するデータを集め、そのデータを作曲家にフィードバックして、より適した音楽を作るための新しい方法を模索しています。

「私たちは、データから浮かび上がる大きなパターンを見ることで、自閉症の子どもたちがどのように世界を聞き、どのように音楽と関わっているのかを理解したいと考えています。
音楽が自閉症の人にどのように貢献できるかを考えるのは、本当にやりがいのあることです」

サイモン・ブルーゲルも、このとくに興味を持っています。
コンピュータサイエンス専攻の2年生のサイモンは自閉症をかかえています。

「キーキー音やアラーム音は苦手です。
また、他の人が気づかないような微妙な音にも気づくことができます。
すごく好きな楽器もあります」

ブルーゲルは、この音楽装置のプロトタイプの設計とソフトウェアの作成を手伝いました。

「自分の作ったものが、地域社会や研究の進展に影響を及ぼしていることを実感できるのは、とてもうれしいことです」

マウリエロ助教授は、この学際的な研究に参加することで、コンピューティング技術が多様な人々に貢献できることを学生に理解してもらいたいと考えています。

「コンピューティングが社会が直面しているさまざまな問題に影響を与えることができることを証明する必要があります。
このプロジェクトは、コンピュータサイエンスとエンジニアリングの学生が、音楽の学生と協力して、世界に実際に影響を与えることができるものを作るという、素晴らしい機会を提供するものです」

音楽教育専攻の2年生、アビー・ヴォン・オーレンもこのプロジェクトに参加し、アイデアが実現されるのを喜んでいます。

「このアイデアが結実するのを見るのは、とても良い経験でした。
トラックや音のレベルを1つ変えるだけでも、誰かに影響を与えることができるのは興味深いことです。
自閉症の人が私と同じように音楽を楽しめるようになると思うと、とても充実した気持ちになります」

アイデアの発案者であるエリスはこう言います。

「あるお子さんの親御さんから、持ち運びできる、おもちゃの消防車のようなかたちにすれば、子どもたちはもっと楽しめるかもしれないという意見をもらいました。
かたちを変えたら、もっと喜ばれると」

また、もっと大きな子にはスマホアプリにしたほうが喜ばれると考えています。

このプロジェクトに取り組むことで、エリスは夢見た以上のものを手に入れました。
エリスはこれから、音楽療法でのキャリアを夢見ています。

「このプロジェクトで、音楽と心理学の研究面に興味を持ちました。
私は自閉症の人たちと一緒になって、音楽をもっと身近なものにしたいのです」

マウリエロ助教授とスティーブンス教授は、この音楽視聴装置をここルート9のセンサリールームに常設されることを望み、また音楽教室や特別支援教育の授業にも取り入れたいと考えています。

「音楽鑑賞は、子どもの社会性や情緒の形成、運動能力の発達、家族や他の子ども、地域社会との交流にとって、非常に重要です。
私たちは、魅力的な参加型の音楽体験をすべての自閉症の子どもたちが利用できるようにしたいと考えています」

(出典・画像:米デラウェア大学

音楽、テクノロジー、どちらも子どもたちには喜ばれるものです。

楽しみながら、成長していける楽しいデバイスの開発をますます期待しております。

発達障害の子が楽しく学べる。インタラクティブAR「箱庭」

(チャーリー)


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